作品タイトル不明
ナシウスの誕生日パーティの準備
沢山の手紙を読み、それに返事を書く。親戚関係は、普通の便箋で大丈夫だけど、王妃様には、一番上等な便箋セットで、丁寧にお礼を書く。
「本当に、家政コースで書道を取らない女学生は、困るんじゃないかしら?」
元々、ペイシェンスの字は丁寧で綺麗だったけど、カリグラフィーを習って、流麗になったよ。
全部を飾り文字にしたら、読みにくいけど、頭文字を飾り文字にすると、とても素敵なんだ。
親戚関係、モラン伯爵夫人、それに明明の主人の美麗様、バーンズ公爵、それに夏休みに魔法合宿や騎士合宿する女学生四人の保護者!
それぞれに返事を書いて、メアリーとキャリーにチョコレートの箱と一緒に届けてもらう。
メアリーは、王宮や上級貴族。キャリーは、親戚と女学生の保護者宛だ。まだ、上級貴族の屋敷を訪問させるのは、駄目みたい。親戚は、失敗しても大目に見てもらえるからね。
ふぅ、少し時間が空いたから、チョコレートの保冷剤を作ろう!
「ナシウスを誘っても良いかも?」
少し悩む。錬金術をナシウスと一緒にするのは、楽しいのだけど、ついでに誕生日プレゼントも作りたいからだ。
「そうだわ、ナシウスの誕生日パーティなのだから、本人のお友達を呼んだ方が良いのかしら?」
前世では、幼児の頃以外は、友達を呼んで誕生日パーティを開いていた。まぁ、高校生になったら、友だちとファミレスで食べて、カラオケに行ったりしていたけどね。
「こんな時、貧乏なグレンジャー家では、普通の貴族がどうしているのか分からなくて困るわ」
他の裕福な貴族を知っているのは、ミッチャム夫人だ。部屋に呼んで、他所の貴族の誕生日パーティ事情を尋ねる。
「お子様の誕生日パーティなど、開く家は少ないですよ。せいぜい、その日はご馳走を用意する程度です」
えっ、カエサルも誕生日パーティもプレゼントも無しなの? 驚く私に、ミッチャム夫人が「必要な物は、全て与えられていますから」と笑う。
ふぅ、金持ちの貴族とは違うから、グレンジャー家は誕生日パーティでプレゼントを渡すよ!
「ナシウスが欲しがる物……ブロックはもういいと思う。それに、欲しい部品は、ナシウスは作れるもの。夏休みに使う物が良いかしら?」
今年は、カザリア帝国の遺跡調査だ。一週間程度だと言っていたけど、暑いよね。私は、夏休みにあんな所で過ごしたくないよ。海にフロートでぷかぷか浮かんでいたい。
「冷たくなる上着とか……」
前世の夏は、地獄だった。工事現場で働く人の上着、モーターで冷たい風が吹く機能があったよね。
私は、着たことがないんだ。少しモーター音がうるさい気がするし、普通のOLは着ないよね。でも、首に掛ける冷え冷えマフラーは使った事がある。
「うん! これが良いかも! 保冷剤とほぼ同じ材料でできるわ」
こちらの保冷剤は、スライム粉と水を混ぜたのを、スライム粉と珪砂で作ったプラスチック擬きに詰めたら出来上がりだ。
「後は、冷やす魔法陣を描けば出来上がりだわ。魔石は小さいので良いわよね! 毎日、交換しても大した費用は掛からないわ」
保冷剤は、剥き出しでも良いけど、首に巻く冷え冷えマフラーは、少し考えよう。
絹よりは、麻か綿の方が良いよね。細いマフラーを青色、緑色、紺色、黄色などで作って、そこに細長い保冷剤を入れてみよう。
青色で細長いマフラーを縫って、首に巻いてみる。少し冷んやりして、良い気持ち。でも、私よりナシウスの方が体格も良いし、遺跡の調査とかする時に俯いたりしたら、マフラーがほどけるかも。
「もっと長い方が、括れるから良いわね」
短い冷え冷えマフラーも捨てたりしないよ。庭や温室で仕事をする時に、使おう!
男子学生が首に巻いてもおかしくないような色とデザインを目指すけど、まぁ、冷え冷えマフラーだから、格好は良くないよね。
「ナシウスは、優しい子だから、自分だけ涼しいなんてと気にするかも」
六人の歴史研究クラブメンバー分と、洗い替え用をマリーとモリーを呼んで、ミシンで縫ってもらう。
「このネクタイっぽいのは、太くて格好悪いですわ」
相変わらずモリーは、思った事を素直に言いすぎる。これから貴族の令嬢の相手をして欲しいから、もっと気をつけなきゃね。
「ふふふ、これを首に巻いてみて」
見本の青い冷え冷えマフラーをモリーに渡すと「冷たいです!」と驚いていた。
「夏休み、ナシウスはカザリア帝国の遺跡を調査するの。歴史研究クラブの合宿だから、他の方のも用意しておこうと思ったの」
マリーもモリーから冷え冷えマフラーを渡して貰って、首に巻くと驚いていた。
「これは良いですね! 夏場は台所は暑いから、エバさんやミミにもあげたいです」
あっ、愛しい弟のことばかり考えていたよ。台所は、夏は暑いよね! うん、うっかりしていたね。
ナシウスの誕生日パーティは、ロマノ大学が夏休みになる明明後日だよ。昼にしないと、ヘンリーが参加できないからね。
「ナシウス、誰かお友だちを招待しても良いのよ」
遠慮しなくても良いと思うのだけど、ナシウスは首を横に振る。
「誕生日は、家族に祝って貰えば十分です。あっ、パーシバル様は呼びましょう!」
心遣いありがとう! 優しい弟で、お姉ちゃん、嬉しいよ。
「サミュエルぐらいなら、従兄弟だから良いんじゃない?」
「そうですね! サミュエルなら、ヘンリーも良く知っている相手だから、良いと思います」
なんて、優しいんだろう! 自分の誕生日パーティなのに、弟が知らない相手だと気を使うと考慮しているのだ。
「去年のヘンリーと私の誕生日は、大勢のお客様を呼んだから、ナシウスも友だちを呼んでも良いのよ」
ゲイツ様は、強引に押しかけたんだけどさ。
「私は、家族とパーシバル様とサミュエルで十分です」
お姉ちゃん、少し心配になるよ。ナシウス、友だちがいないんじゃない? 上級貴族は、殆どが屋敷から通っているし、寮には入っていない。
こんな時、母親が生きてくれていたら、細かい心遣いができるのかも。サミュエルだけでなく、母方の従兄弟の年の近い子を呼ぶとか……。
でも、メアリーに言わせると、母親は末っ子で、兄弟とは年が離れていたそうだ。サイモンもかなり年上だけど、長男じゃないみたいだもの。
夏休み中に、ナシウスがいない隙に、サミュエルに王立学園で楽しく過ごせているのか質問したい。でも、余計なお世話かもね。
少なくとも、錬金術クラブで、ナシウスはエドやクラリッサやイアン達とわいわい楽しそうに話していた。
やはり、やめておこう! ナシウスは良い子だし、読書クラブ、歴史研究クラブ、錬金術クラブで楽しく学園生活を過ごしている。過干渉はよくない。