作品タイトル不明
テスト勉強の合間に!
テスト前なので、日曜には王都に戻る。帰りは、疲れていたから、メアリーとカミュ先生とミッチャム夫人と一緒に馬車だった。
「木曜の夜にノースコートに着いて、金曜と土曜に慌ただしく領地の視察……日曜は王都……疲れたわ」
でも、やはり行って見ないと、手紙だけではわからない事も多い。
「グレンジャー館は、素敵でしたわ」
ミッチャム夫人は、北部のバーンズ公爵領で育ったので、明るいリゾート風に改築されたグレンジャー館が気に入ったみたい。
馬車の中で、ハープシャーとは違った感じの食器にしようと話し合う。
「ハープシャーよりも華やかな色合いが似合いそうです」
ううう、やはり一緒に買い物に行きたくなった。でも、テスト勉強が!
「今年で卒業したいし、秋学期は社交界デビューもあるから、春学期で殆どの科目の修了証書を貰いたいの」
カミュ先生は、家政コースなら簡単なのに、文官コースで卒業を目指すのは素晴らしいですと褒めてくれた。
「社交界って、よく知らないのですが、パーティとか多いのかしら?」
メアリーが、令嬢の常識がないのを嘆いて、深い溜息をつく。
「ペイシェンス様は、きっと色々な家から招待状が舞い込みそうですよ」
カミュ先生の言葉に、メアリーが満足そうに頷くけど、そんなにパーティばかり出ていられない。
「パーシバル様とご相談になって、断ってはいけない招待は受ける。行く価値がないパーティは、ロマノ大学の受験があるからと断れば宜しいのです」
カミュ先生は、男爵令嬢だったから、上級貴族の招待は少なかったけど、全て出たそうだ。下級貴族のパーティは、親しさや、家の関係で親が選んだと教えてもらう。
なるほどね! こんな時、婚約者がいると、相談に乗ってもらえるから便利だね。本来は、親が出席するパーティを選んだりするんだろうけど、父親にはその方面は期待できない。
「それと、グレンジャー家にも家政婦が必要なのです」
今回の件で、家政婦の必要性を実感したんだ。ミッチャム夫人は、私が結婚したら、新居に付いて来てもらう。
そして、その頃には、リラが領地のハープシャーの家政婦になってくれそうなんだ。
「ええ、良い家政婦見習いを見つけて、今から修業させたいですわ」
今いるお針子、下女の中からは無理みたい。頑張ってメイドか侍女見習いだそうだ。
「家政婦になるには、最低限、家計簿が付けられないといけません」
メアリーも頷いている。長年、グレンジャーに尽くしているメアリーに家政婦にならないかと提案したけど、計算が苦手だし、家計簿は付けられないと辞退されたんだ。
「エバは、家計簿が付けられるわ」
食料品の仕入れ値段を、長年にわたって書いている。レポートを書く時に参考にさせてもらったよ。
「ええ、でもエバは新居に連れて行かれるのでしょう。それに、あれほど優れた料理人を家政婦にできませんわ」
そうなんだよね! 料理助手のミミも、頑張ってレシピを書き写したり、仕入れ値段を帳簿に書いたりしているけど、計算はちょくちょく間違えて、エバに叱られている。
「やはり、ご親戚に頼まれた方が良いです」
頼みのリリアナ伯母様は、遺跡見学の客人が多くて、使用人を他に融通するどころでは無さそう。
「シャーロッテ伯母様の領地は、織物産業が盛んで、女の人の働き場所が多いみたいなの」
賢さの必要な家政婦になる人材は、織物工場に取られちゃっているかも。
「アマリア伯母様の所は、ルシウス様が結婚なさって、新妻のサマンサ様が領地で新しい使用人を育てておられるみたいなのよね」
実家からもしっかりした使用人を連れて来て、教育をさせているだなんて、羨ましいよ!
「それと領地の兵を指導する騎士も必要ですよ」
ああ、それも頼んでいるんだ。
「やることがいっぱいで……夏休みに一つずつ済ませなきゃ!」
ミッチャム夫人は、今回みたいに他所の家から使用人を借りなくて良い体制を整えたいと、拳を握っている。
王都の屋敷に戻ったら、 馬の王(メアラス) で先に着いていたパーシバルが、弟達と話していた。
「お待たせして、申し訳ありません」
パーシバルも寮に行くのに、来てもらって悪かったなぁと思うのだけど、笑って父親に挨拶して屋敷に帰っていく。
私も、メアリーにお風呂を入れてもらい、埃を落としてから、寮にナシウスと向かう。
「ナシウス、先に寮に行っていても良かったのですよ」
カミュ先生が私に同行していたから、ヘンリーの面倒を見てくれていたナシウスを労う。
「フィリップス様に夏休みの確認をしたのですが、やはりホテルは満室だったそうです。それに、ノースコート伯爵館にもお客様が多くて、滞在は難しそうだとガッカリされていました」
ナシウスは、まだグレンジャー館で合宿しても良いとは言っていないみたい。賢い子だけど、もう少し我儘を言っても良いんだよ!
「ナシウスから歴史研究クラブの合宿をグレンジャー館でしませんかと提案したら良いわ」
私から男子学生を誘うのは、ちょっとね! あっ、去年はノースコート伯爵館だったから、少し気楽だったんだ。やはり、保護者がちゃんといるのは良いな。
今年の夏休みは、父親が一緒だけど、やはりリリアナ伯母様みたいには頼りにならないんだよね。
そんな事を考えながら寮に着いた。メアリーに服の整理は任せて、マーガレット王女の部屋で勉強会だ!
「ペイシェンス! よく来てくれたわ」
やはり、マーガレット王女とリュミエラ王女は、家政数学で躓いている。
そうかな? と思ってどの支出が、どの項目になるのか一覧表を纏めておいて良かったよ。
「まぁ、教科書もこのように書いてくれていたら、わかりやすいのに!」
一緒に勉強しているリリーナも、この科目はお手上げ状態みたいなので、少しだけ教える。
私は、他の人が問題を自分で解いたのを確認して、間違った所を説明するけど、基本は自分のレポートに専念する。
「今回で、経済学と経営学が合格だったら、修了証書をもらえるのだもの! 頑張らなきゃ!」
テストは、多分大丈夫だと思うけど、レポートも重視する先生だから手を抜けない。
少し疲れたので、特別室のミニキッチンでお茶を淹れて、お土産のチョコレートと一緒に出す。
「本当にペイシェンスのチョコレートは、美味しいわね! お母様にお土産にしたいけど、今年は離宮に行くから……」
リュミエラ王女が、フリーズドライいちごをホワイトチョコレートでコーティングしたのを摘みながら、溜息をつく。
夏場は、チョコレートに厳しい季節なんだ。バーンズ商会の板チョコも溶けちゃうかもね。
バーンズ商会で板チョコは販売しているけど、相変わらずエバが高級チョコレートを作って納入もしている。
今の時期は、これから領地に帰る貴族達の需要が大きいみたい。
保冷剤とかあれば良いのだけど……ふふふ、スライム粉で作れそう! でも、今はテスト前だから作らないけどね。
「少し、考えておきますわ」とだけ伝えておく。
マーガレット王女が「ペイシェンス、無理をしないでね」と笑った。
月曜日、この日は授業をとっていないのだけど、明明とランチをするのが楽しみなんだ。明明って、前世の東洋風の風貌なのが懐かしいし、本当に可愛い子なんだよ。
それに、第二外国語のカルディナ帝国語の練習にもなるしね! 特に、明明からカルディナ帝国の話を聞くのが面白いんだ。いつか行けると良いなぁ!
やはり、ゲイツ様には腹が立つけど、竜を倒せるぐらい強くなったら、外国にも行けるかも? ああ、洗脳されているじゃん! 単純なのかな?
でも、やはりパーシバルが外国に派遣される時は、一緒に行きたいんだよ! 『ペイシェンスも諦めないで!』と言ってくれたんだもん。