軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二人で頑張ろう!

昼食が終わったので、父親はいつも通り書斎にお籠もりする。弟達も、ゲイツ様と話し合うことがあるのだろうと察して、子供部屋に上がる。

そして、私とパーシバルとゲイツ様は、応接室で話し合うんだけど、気が重い。

私は、頑張る女の子を応援したいと思っている。それをゲイツ様に見透かされている気がする。

それに、パーシバルは、国家の危機や利益を真剣に考える事、そして騎士関係に甘いのを察知されているんだよね。

「パーシー様、頑張りましょう!」

手と手を繋いで、二人で気合を入れ直す。

近いけど、パーシバルにエスコートして貰って応接室に向かう。

ゲイツ様は勝手知ったる他人の家で、先にソファーに座って寛いでいる。

ああ、本当はこの時間、夕方に寮に行くナシウスと親睦を深めたり、家に一人でいる時間が多いヘンリーと遊んだりするのに! そう思うと腹が立つ。

「ペイシェンス様、手紙に書いた通り、ローレンス王国の危機を回避するには魔法合宿が必要なのです」

先制攻撃が始まった。パーシバルがにっこりと笑っていなす。

「確かに南の大陸で竜の活動が盛んになっているのは問題です。それに対応策を練らないといけないのも事実ですが、領地を拝命したばかりのペイシェンスの所で担う必要はないと思います」

パチパチパチ! 心の中で拍手する。やはり、パーシバルは頼りになるね! 私の言いたいことを全部言ってくれたよ。

「では、何処でしたら良いのでしょう? 勿論、王宮でも下級王宮魔法使いや上級王宮魔法使い達には、厳しい訓練をさせます」

うん、それの指導をゲイツ様がしたら良いんじゃないの?

「ペイシェンス様! この前の冬の魔物討伐を思い出して下さい。上級魔法使い達は、一頭や二頭の 雪狼(ニックスルプス) なら討伐できましたが、竜を倒せると思いますか?」

うっ! となったけど、言い返す。

「でも、それを訓練するのが王宮魔法師の仕事ではないでしょうか?」

パーシバルも横で頷いている。

「ふぅ、私は竜を討伐できる自信がありますが、一人で対応できるかどうかは不明です」

えっ、竜を倒す自信があるんだ! 少しホッとしたよ。パーシバルも目を見張っている。

「一頭だけ飛来するとは限りませんからね。私が対応できるまで、竜による被害は甚大な物になるでしょう」

私は、思わずパーシバルに抱きついた。パーシバルも肩を抱いてくれる。ホッとするよ。

「だから、ペイシェンス様も魔法をもっと修業する必要がありますし、それを護る騎士も今のままでは護るどころか、足手纏いになりますね」

えっ! パーシバルに足手纏いだなんて言ったの! バサっと髪の毛が逆立ちそう。

パーシバルは、私の肩を抱いている腕を外して、ゲイツ様に向き合う。

「手紙には、リンダやジェニーの修業をすると書いてありましたが、彼女達は竜の討伐とは関係ないのではありませんか?」

ゲイツ様が腹立たしいほど呆れた顔をする。

「そんな緊急事態になった時、王族の警護が覚束なかったら、困るとは考えないのですか? まして、女性王族の警護は、次代の王族の警護にも繋がるのですよ」

ああ、口ではゲイツ様には勝てない! こうなったら、駄目な理由を納得して貰おう。

「今年の夏休みは、領主としてやるべき事が山積みなのです。その上、ハープシャーでは味噌や醤油を仕込まなくてはいけないし、グレンジャーでも魚介類の干物や養殖ができないか調査しなくてはいけないのです。だから、魔法合宿も騎士合宿もお断りします」

一気に言い放った。でも、フッと鼻で笑われたよ。腹立つ!

「そんな瑣末な事より、大きな局面を見なくてはいけません。でも、領地管理をしたいと言い張るペイシェンス様の為に、そこで合宿をしようと提案しているのです」

うん? 最初はディスられているけど、まぁ、それはそうかもと思った。でも、途中からは誤魔化されている気がするよ。

「ゲイツ様の領地でされたら如何でしょう?」

パーシバルの言葉を笑う。

「もう、わかっていると思いますが、アルーシュ王子やルーシーやアイラは、ペイシェンス様のついでに鍛えるだけです。それに、リンダやジェニーは確かに王妃様や母上に頼まれましたが、貴方を鍛えるついでですよ」

むっかぁ! パーシバルに対してなんて事を! 私が怒って立ちあがろうとしたのを、パーシバルが制する。

「確かに、私はこのままではペイシェンスを護れません」

えっ、一緒にゲイツ様の夏合宿を阻止しようと約束したのに、パーシバル? それは無いよ!

「それと、屋敷の改築代にラドリーが夏をハープシャーかグレンジャーで過ごしたいと言っていました。彼は有能ですから、未だ整備途中の水路や領都の開発を手伝って貰うと良いですね。建築学科の学生も引き続き指導して欲しがるでしょう」

うっ、やられた! ラドリー氏には、改築代を支払ってはいるけど、ワイヤットが首を傾げるほど安価だったんだよね。ただより高いものはない。

きっと、エバの料理目当てだよ!

「本当にペイシェンス様の料理人は素晴らしいですからね。彼は、図々しくもペイシェンス様とお友達になって、助手を送り込みたいとの下心があるのですから、じゃんじゃんこき使ったら良いです。それに、ルーシーやアイラも勉強になるでしょう」

うっ、確かにラドリー様のセンスの良さは素晴らしいし、改築の手際も超一流なんだ。私も習いたいぐらいだよ。

「ペイシェンス、もう諦めましょう。私は、夏休みに修業しなくてはいけない気持ちになっています」

パーシバルは、今のままでは私を護れないと悩んでいたから、そこを突かれると弱い。

それに、私も本当に竜が飛来してきたら、弟達を護りたいと思うんだよね。お姉ちゃんなんだもん!

「二人で頑張りましょう!」

パーシバルと手を取り合う。でも、目の前にはお邪魔虫のゲイツ様がいるから、キスとかできないんだよ!

「ああ、でも……確認しなくてはいけませんが、ナシウスの歴史研究クラブの合宿も領地の館ですることになるかもしれません。それに、ゲイツ様、ラドリー様、ルーシー様、アイラ様、リンダ様、ジェニー様……それにサリエス卿、ユージーヌ卿、ああ、アルーシュ王子もだわ! 何人になるのかしら?」

ハープシャーの館、部屋は十分にあると思うけど、建築学科の学生も引き続き滞在するなら、大人数になりすぎる。

「私やユージーヌ卿は、陛下が夏の離宮におられる時は、いけません。それに、アルーシュ王子も招待されているから、夏休みの初めは無理ですね。でも、ペイシェンス様が女学生は引率して連れて行って下さった方が、世間体が良いでしょう」

つまり、夏休みの最初から、ルーシー、アイラ、リンダ、ジェニーが一緒に領地に行くって事だね。後、私の秘書としてクラリッサとカミュ先生も。

「確かに大人数だと、大変ですね。ハープシャーとグレンジャーの館に分かれて滞在した方が良いかもしれません」

ゲイツ様は、簡単に言うけど、二つの館を管理できるほどの使用人がいないんだ。

「それは、無理なのです。使用人が未だ少なくて……」

王都の屋敷の使用人もやっと人数が増えたところなんだ。まだまだ教育ができていないけどね。

「ふうむ、それは困りましたね。それでは、我が家の使用人をグレンジャー館に派遣しましょう。料理人も連れて行きますが、時々はエバに指導して欲しいです。もちろん、食料品はこちらで手配します」

パーシバルも、モラン伯爵領から使用人を何人か手伝いに来させてくれると言ってくれた。

「この夏休みに、領地で雇った下女や下男をモラン伯爵家や私の使用人に鍛えさせたら良いのですよ。我が家の執事は厳しいから、なかなか教育が行き届いていますからね」

その執事さん、ゲイツ様のマナー教育は不行き届きみたいだけどね。確かに、しっかりとした執事さんだったから、そこは安心できるよ。

「王都の屋敷の使用人も留守番以外は連れて行って、厳しく鍛えたら良いのです」

何だか、反対するつもりだったのに、あれよ、あれよ、という間に魔法合宿、騎士合宿、使用人合宿になっちゃった。

隅の椅子に座っているメアリーが呆れた顔で苦笑している。