軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

えっ! それは……

キャリーに、早く来てと書いたパーシバル宛の手紙を持っていって貰った。

メアリーが帰って来るまで、家政婦のミッチャム夫人とワイヤットを応接室に呼んで、メアリーの結婚式について相談する。

「夏休みに領地に付いて行くのは大丈夫ですが、メアリーが納得するかは疑問ですわ」

ミッチャム夫人は、結婚式は賛成してくれたが、ケープコットへの新婚旅行は首を傾げる。

「メアリーは、お嬢様のお側を離れないと思います。新婚旅行など庶民はいたしません」

ええっ! ワイヤットも反対みたい。

「いずれ、お嬢様が奥様のご親戚を訪問する際に、メアリーを同行されれば良いのです」

ワイヤットは、ケープコット伯爵領に私が行く機会があると考えているみたいだけど、そんな暇は当分ないよ。

「王都の屋敷には行くでしょうけど、領地までは行かないと思うわ」

王都の東に領地を持っているモンテラシード伯爵領や織物が盛んなマックスウェル子爵領なら行くかも知らないけど、ソニア王国との国境近くまではねぇ?

「マーガレット王女様は、ソニア王国のパリス王子様との縁談があると噂になっております。側仕えのお嬢様も一緒に訪問される機会があるのではないでしょうか?」

ああ、ワイヤットは情報通だけど、私が陛下から国外に行くのを禁止されているのは知らないのだ。

「それは無いと思うわ」とだけ告げておく。

マーガレット王女は「今年の夏休みにソニア王国に行くかも?」と頬を染めておられたけど、どうやら夏の離宮にパリス王子とカレン王女を招待して、ソニア王国行きは延期になったみたい。

まだ、マーガレット王女が社交界デビュー前なのと、リュミエラ王女やカレン王女のように留学という手段が取れないからだと思う。

ソニア王国に行く時は、婚約が正式に決まってからじゃないかな?

ソニア王国にはついて行けないけど、途中のケープコットまでなら一緒に行っても良いのかな? でも、祖父と父親の関係は改善しそうにないから、新伯爵の伯父とだけ王都で会うだけで良いのかも?

私も何となく母親に凄腕の治療師を派遣してくれなかった件で、心にしこりが残っているんだ。寿命だったかもしれないけど、少しは楽になるとかあったかもしれない。

ペイシェンスも家が呼んだ治療師で結局は亡くなっているし……。

貴族って、心が冷たいんじゃないかな? 私に偽手紙を運んだルイーズ、もし騙されていたら、どんな目に遭っていたのかを思うと許せないけど、親のフェンディ伯爵の切捨て方には怯んだよ。

この世界では、親が子供を見捨てる勘当や廃嫡がある。自分の家の為にならない子は、捨てられるんだよね。

その考え方で、病弱な娘も、寄親のカッパーフィールド侯爵に逆らって免職になった男の嫁! と切捨てなのだろう。

うん、この世界の親子関係は私には理解できないよ。そういえば、メアリーも食いぶちを減らす為に働きに出されたと言っていたね。

「新婚旅行の件は、メアリーに聞いてみるわ。ワイヤット、裏庭に家族持ち用のコテージを建ててね」

ワイヤットは、少し苦笑して頷く。

「使用人に優しいのは、お嬢さまの美徳ではありますが、あまりに厚遇しすぎませんように」

私的には小さなキッチンとお風呂も付けたかったけど、それでは他の使用人と差が大きすぎると反対された。

「台所やお風呂は屋敷がありますから」

一応、トイレはつけても良いでしょうとワイヤットが渋々同意した。

まぁ、メアリーには結婚祝いに湧くポットをプレゼントするから、お茶ぐらいは飲めるよね。

前と違って使用人も増えたので、メアリー以外も結婚することもあるかもしれない。四部屋繋がりの長屋っぽいコテージを建てるとワイヤットが提案するので、任せる。

「ドレスはマリーが作っています」

こちらも白のウェディングドレスではないんだよ。

サマンサ様のは細かい刺繍が施された白のウェディングドレスだったけど、庶民は余所行きにできる新しいドレスでも贅沢なのだと、ミッチャム夫人に駄目だしされたんだ。

赤毛のメアリーが似合いそうな緑と茶色の格子模様のドレスだ。

「それとお嬢様、メアリーの結婚式に参列するとか駄目ですからね!」

えええ! それは無いよ!

「でも、メアリーは私の姉のようなものなのよ!」

ワイヤットとミッチャム夫人に、首を横に振られる。

「結婚式の主役はメアリーです。それなのに、ご主人であるお嬢様がいらっしゃると主役を譲ることになりますわ」

「うっ! それでは披露宴は?」

それも、二人に駄目だと拒否された。

「そもそも、使用人の結婚を認めるだけでも、お優しいご主人だと評価されるのです」

ワイヤットに厳しく指導された。でも、その日は豪華な食事を使用人部屋にも出してもらうよ! そのくらいは大丈夫みたい。

グッスン! 私の考えていた秘密の結婚式! 全然、違うよ。

「お嬢様、その結婚式はメアリーとグレアムの為なのでしょう」

うっ、ミッチャム夫人の言う通りなんだけど……悲しい。

「グレアムの服も作らなきゃ!」

花婿も、普段より少し良い服が普通だそうだ。

「せめて、花嫁のブーケは……」

本当は、ウェディングドレスにベールにブーケの花嫁姿を見たかったけど、あれこれ反対されたんだ。

恐る恐る二人にお伺いを立てると、それは良いと頷かれた。

温室だけでなく、庭にもバラが花盛りだからね。

ふふふ、ブーケとお揃いのブートニアを作ろう! 花婿のグレアムの胸に飾るんだ。メアリーの髪飾りも作ろう!

「お嬢様! 自重して下さい」

ワイヤットに注意されたけど、そのくらいは良いと思うよ。