軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

異世界的建築学!

ハープシャー館に着いたら、もう作業が始まっていた。

「館は1ヶ月は使えません。だから、簡単な改修で暮らせる兵舎と葡萄畑の管理人の家を先ずは建てます」

それは聞いてはいたけど、使用人やライトマン教授の助手は兵舎に泊まるのかな? ああ、やはりライトマン教授は、ノースコートかモラン伯爵館にその間は泊まりたいみたい。

「あっ、それなら私もモラン伯爵館に泊まりたいですね。ノースコート伯爵館には貴族のお客が多くて」

ラドリー様もうんざりしたのかも。

「ええ、それは構いません。執事にそう伝えておきます」

ふぅ、私の領地もグレンジャー家もこんな風に人手がちゃんとある様になりたいな。

まだまだ人手不足なんだよ。

「今日は、葡萄畑の管理人の家の改修工事です」

ここって、トイレも外だし、お風呂は桶で入る感じなんだよね。不便で不潔なのは駄目。

「どうやってお風呂やトイレを作るのかしら?」

前世の 改築(リフォーム) 番組をよく見ていたから、楽しみにしていた。あれって、ほぼ壊して作り直していたようだったけど?

「私も実は知らないから楽しみなのです」

パーシバルも改築現場なんか知らないみたい。

「お風呂は一階で良いのだね。トイレは二階にも欲しいと描いてあるな」

ハープシャー館の設計図は、ラドリー様が自分で描いたみたいだけど、兵舎、葡萄畑の管理人、管理人の家は、ライトマン教授の監修の元で助手達が描いた物みたい。

「ふむ、なるほどな。だが、夏場は新作のシャワーがあった方が良いし、二階にも風呂があった方が便利になるだろう」

今は新婚家庭だし、子どももいない。でも、いずれは子どもも増えるし、そうなったら使用人も必要になると不備を指摘する。

「いえ、そんな贅沢な事は……」

ケリーが慌てているけど、ゲイツ様も頷く。

「また改築するより、初めからちゃんとしておいた方が良いのですよ」

それは私も同感だ。

それにモンテス氏の家も凄く簡素な設計で、ラドリー様が訂正しまくったみたい。

「私は独身ですし、食事は兵舎の食堂で食べますから」

ふぅ、それは駄目だよ! しっかりと働いて貰うのだから、ちゃんとしなきゃ。

「私にお任せ下さい」

任せよう! ハープシャー館の前には石材、木材、そしてバスタブに金属の管などが積み上げられている。

「ペイシェンス様、よく見学しておくのですよ」

ゲイツ様に言われたけど、他のライトマン教授や助手達やグリーン氏も真剣に見ている。

「二階にお風呂を作りましょう!」

えっ、これって転移じゃないの?

ババババ……と家の中に管が伸びていく。

「これは土魔法と金属魔法です」

バスタブは助手達が運び上げたけど、私は魔法の不思議さに改めて驚いていた。

「ゲイツ様、今建っている家の中に管を通すのって、転移ではないのですか?」

私には違いがわからない。

「ペイシェンス様、本当に魔法使いコースをとって基礎から勉強しなおしましょう。では、この火はどこから来て、ここにあるのですか?」

パチッと指先に火を灯す。

「ええっと……魔法学の教科書にはエステナ神のご加護で、火の魔法が使えるとしか……考えていませんでしたわ!」

王立学園の魔法学の教科書はエステナ教会の教え通りで、それでは説明不可能だとは聞いていたのに、深く考えていなかった。

「ラドリー様は、ローレンス王国の中では随一の建築家です。センスや微妙な魔法の使い方は、私より上かもしれません。ペイシェンス様もよく見学して学ぶように!」

あれよ、あれよ、と言う間に、二階にお風呂とトイレが設置され、一階にもトイレとお風呂ができた。

「この台所も古いですね。新しい魔道具を設置しましょう」

これは、料理上手なケリーも喜んだ。

「外観は、ハープシャー館と揃えた方が良いでしょう」

設計図に描かれていた白い外壁と青灰色のスレート。今のはここら辺によくある灰色の石だけど、どうするのかな?

「助手達とグリーン氏、石灰は混ぜてありますね」

これって、やはり転移じゃないの?

「一瞬で真っ白になりましたね!」

パーシバルも驚いている。

「このくらい誰でもできますよ」

ゲイツ様が負けん気を出したみたい。

「いえ、誰にでもはできません」

ライトマン教授が首を横に振っている。

「そうだ! ペイシェンス様にもできると思います。兵舎の壁を塗ってみませんか?」

無茶振りだね。遠慮しておく。

「いえ、見学させて貰うだけで十分ですわ」

屋根も傷んでいたのを全部外して、青灰色のスレートがあっという間に葺き替えられた。

「教会の屋根も補修して欲しいですわ……」

コソッとパーシバルに愚痴る。小声で話していたのに、ライトマン教授は聞きつけて、助手達にさせようと言ってくれたけど、いつまで滞在する事になるんだろうね。

午前中にほぼ葡萄畑の管理人の家は改修されたし、兵舎もお風呂とシャワーとトイレと台所も改修された。

「これって普通ですの?」

前世だったら半月仕事だと思う。助手達やライトマン教授やグリーン氏も手伝っているけど、ラドリー様は凄い。

「普通ではないでしょう」

パーシバルも驚いている。そうだよね! ゲイツ様は、何故かラドリー様にライバル心を刺激させられたのか、兵舎の外装だけでなくシャワーを取り付けるのも手伝っている。

「何だか、一気に綺麗になりましたね」

ぽそっとメアリーが呟いているけど、私も呆れちゃったよ。

お昼を挟んで、管理人の家もほぼ完成しちゃったし。

「こんな立派な家を管理できません!」

管理人らしからぬ言葉に私とパーシバルは苦笑する。

「ゲイツ様がいる間に大規模な工事は終えておいた方が良いですね」

ラドリー様は、ゲイツ様の事をよく理解しているみたい。

「何故、私が手伝わないといけないのですか!」

なんて騒いでいるけど、結局、手伝いそう。

「ペイシェンス様も手伝って下さい!」

私にも飛び火したけど、綺麗にするぐらいは手伝うよ。だって自分の家だからね。

「何だか、自分の常識がぐらついてきました」

パーシバル! それは、ラドリー様とゲイツ様だけだよね? 疑惑の目を向けたら、にっこりと微笑まれた。それって否定? 肯定? どっちなのかな?

私は異世界的建築学は少し怖い。だって自分が住む館に下水や上水の管を通すとか、水漏れしたら嫌だもん。やはり専門家にして欲しい。

外装を綺麗にするとか、屋根のスレートを取り去るとかなら手伝っても良いけどさ。

外壁を白く塗るのは、覚えておきたい。いずれは汚れちゃいそうだから。あっ、でもその時は「綺麗になれ!」で大丈夫なのかな?

「やはりペイシェンス様が一番非常識だと思いますよ」

やだぁ! また思考が漏れたのかな? 精神防衛をあげなきゃ。

流石にハープシャー館の改修工事は時間が掛かりそうなので、今日はここまでになった。