作品タイトル不明
ハープシャー館の為の買い物!
王都でハープシャー館で使うリネン類や食器類を買う。カーテンとかはコーディネートして選んで貰うけど、このくらいは選んで良いそうだ。ベッドカバーはあちらが選ぶそうだけどさ。
買い物ってテンションが上がるけど、どのくらい買わないといけないのか分からないから、家政婦のミッチャム夫人についてきてもらう。
「館には何部屋あるのでしょう」
うっ、知らないよ! これチェックミスだね。
「ああ、では最低限のリネンを買いましょう」
リネンと一口で言うけど、目の荒いざらざらした手触りのから、滑らかで絹じゃないの? って感じのもある。
「このリネンが良いですわ」
二番目に上等なリネンをミッチャム夫人が選ぶ。
「なぜ、一番上等なのじゃないの?」
「それは、手触りは良いですが、洗濯するのが難しいですし、ハープシャーの女中が扱うのは無理だと思います。こちらなら、丈夫ですから」
成程ね! でも、王都の新居には一番上等なリネンを揃えたいな。
「新居に移るまでには、女中やメイドを鍛えます」
ははは、マリーもかなり口の利き方が上品になってきている。かなり扱かれているのだろうね。
食器類もバーンズ商会ではなく、高級食器の専門店に行った。あちらでは、使用人のと兵舎で使う食器類をミッチャム夫人に選んで貰う。
「目移りするけど、シンプルなのが好き」
これは、ミッチャム夫人と相談しながら選ぶ。
「お嬢様の館には、きっとお客様が多くなりそうです。あまりシンプルだと食卓が寂しく感じますわ」
ふぅ、パーシバルから餌付け禁止と言われているけど、ゲイツ様とラドリー様は手遅れの予感。
「これはグレンジャーで使っている食器ね」
白の皿の縁に銀で縁取ってあるシリーズだ。
「ええ、これも良いですわね。あまりごてごてしていると、エバの料理を引き立てません」
うん、ミッチャム夫人はセンスが良いね。ここで、最高級の細密画が描かれている食器とか勧められたら、これから買い物して貰うの躊躇しちゃうよ。
「私は、これが好きだわ!」
白オンリーだけど、木の葉の浮き彫りが、皿の縁をぐるりと囲んでいる。
「ええ、スープ入れも素敵ですし、若いお嬢様に相応しいですわ」
これを五十人分セットで買う。食卓で飲むお茶セットは、これとお揃いにしたけど、応接室で飲む場合は別なのが良いみたい。
「お茶会用は、もう少し華やかな方が好ましいですね」
それは分かるけど、アフタヌーンティースタンドにセットする事も考えたい。
「あのスタンドにセットするのは、食卓用の皿で良いのかしら?」
ミッチャム夫人もアフタヌーンティースタンドは、こちらで初めて見たので考えこんでいる。
「いえ、やはり応接室やサロンで飲む茶器に揃えた方が見栄えがしますわ」
茶器のセット! いっぱいありすぎる。目移りして、疲れてきたよ。
高級食器店の店員が気を利かせて、応接室でお茶を出してくれた。
「あまりゴテゴテしたのは嫌いだけど、少し装飾があるのにしたいわ」
こちらに何点か持ってきてもらう。メアリーは、最初から屋敷に持って来させたら良いのだって顔をしている。でも、色々な中から選びたいじゃん。
結局、ベビーブルーの縁取りに金で細かな花模様が付いている茶器セットにした。それから、今度は銀食器とカトラリー! これはミッチャム夫人に任せた。もう目が疲れちゃったんだ。
「パーシー様を誘うつもりだったけど、誘わなくて良かったわ」
でも、新居の買い物は一緒にしたいな。ただ、下見をしてからの方が良いかも。男の人は耐えられないかもね。
後は、バーンズ商会だ! パウエルさんに予約してあるから、スムーズに終わる筈。筈だったんだけどさぁ!
「撥水生地、それと湯たんぽ、糸通しは用意してあります」
それと、漁師に便利なゴム擬き長靴! ここまでは、簡単だったのに……浚渫工事に便利だなぁと胴付き長靴のデザインを見せたら、食いつかれた。
前世でテレビで見た、胸まである胴付き長靴だよ。肩から下げる感じの!
「これは、すぐに作らせます!」
目がキラリンと光った。他にも使えそうだよね。
「これを領地の店で売らせたいのですが……どうしようか悩んでいます」
今の店って本当にしょぼいんだ。
「ふふふ、地場商店を育てるのは根気がいりますよ」
そうなんだよね!
「いっそ、領主直営の店を開かれますか?」
それは、バーンズ公爵がされた遣り方なのかな?
「今、私の直営店を開いたら、他の店は潰れてしまいますわ。でも、今のままでは不満なのです。どうしたら良いのかしら?」
パウエルさんは、にこにこと笑う。
「色々と考えて、あれこれしてみれば宜しいのです。ペイシェンス様の領地なのですから」
これもロマノ大学で学びたい事なんだよね。
昼から、パーシバルと話し合う。
「確かに、グレンジャーもハープシャーも寂れていますが、一気に開発を進めても駄目だと思います。先ずは、今は外に働きに出るしかない若者が留まりたいと思えるようにしなくては」
つまりは、働く場所と住む場所を提供してから、商店のテコ入れをしようって考えだ。
「私は田舎の生活は知らないのですが、子どもは大きくなったらどうするのですか?」
「私も詳しくはありませんが、農家の男の子は子供のうちから手伝い、12歳ぐらいになったら独立します。職人になったり、兵士になったり、冒険者になるのかな?」
長男は、いずれは親の畑を受け継ぐけど、他の子は自分で食べていかないと駄目なんだね。
「あのう、家には居て良い感じなのかしら?」
パーシバルも詳しくは無さそう。伯爵家のお坊ちゃんだからね。
普段は、ワイヤットに質問するけど、王都育ちだからなぁ。ここは、田舎育ちのメアリーとミッチャム夫人に聞こう。
「いつまでも家にはいられませんよ」
メアリーは、自分も口減らしでケープコット伯爵家に奉公に出されたと言う。
「男の子も女の子も長男が結婚するまでは家にいれる場合もありますが、裕福じゃないと追い出されますね」
ミッチャム夫人は、バーンズ公爵領でも、そんな感じだと言う。ふぅ、厳しいな。
「ただ、バーンズ領では、バーンズ商会に就職できますから、他の領よりは恵まれています」
だよね! やはり、地場産業を作らなきゃ!
「ソースをハープシャーで作ろうと思うのですが、初めは主婦でも良いかしら?」
本当は、女の子の働き口にしたいんだけどね。
「少しだけなら良いですが、本格的にするなら、専任の働き手の方が良いですね」
「そうなると、その人達の住む場所も必要になるのですね」
「ペイシェンス、少しずつ進めよう」
パーシバルに笑われた。
「ええ、先ずは工房を作ってからにします」
やることは一杯だけど、領地に行く準備はできたよ。