軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リヴァイアサン討伐1……ゲイツ視点

南の海とはいえ、寒風が厳しい。前方にはコルドバ王国の戦艦が数隻、波を切って航行している。

二月の中旬にローレンス王国を出港し、コルドバ王国の戦艦と合流。

そして、延々とリヴァイアサンを探しているのだ。

「ローレンス王国の戦艦は、少し型が古いみたいですね」

隣のサリンジャーに小声で愚痴る。本当に、こんな所まで遠征に来るなんて、引き受けた自分を罵りたい気分だ。

このまま三月になったら、ペイシェンス様は私抜きで領地に行くようになる。マッドクラブも手に入らなくなってしまうし、何か面白い事を見逃してしまうかもしれない。

「それは問題ですが、それよりもリヴァイアサンが見つかるのでしょうか?」

サリンジャーもうんざりしているようだな。コルドバ王国も、リヴァイアサンの生息地域ぐらい絞っておけ!

「この辺で目撃情報があると言うだけで、いつまでも留まっているとは思えません。書類が机の上に溜まっていると思うと、早く戻りたいです」

うっ、サリンジャー! 嫌な事を言うな! 書類仕事をしているよりは、海の上の方が良いかもしれないな。それに、冬だけどコルドバ王国の南の海は青く輝いている。

「うむ、少し探索を手伝おう!」

サリンジャーは、有能だが、頭が固い。ここにペイシェンス様が一緒にいたら楽しかったのだが……。

船旅は、もっと夏が相応しい。それに、食料をかなり個人的に持ち込んだが、満足できるような食事ができない。やはりペイシェンス様の料理人とは違うからな。

「ペイシェンス様が下さったチョコレートバーだけが、私の心の支えだ」

艦長が欲しそうな目をしているが、やらないぞ。ペイシェンス様のことだから、サリンジャーにも渡している筈なのだ。何とか手に入れたい。美味しさのあまり、食べすぎて残りが少ないのだ。

「リヴァイアサンが見つからないなら、帰国したい」

本当にうんざりしていたが、コルドバ王国の戦艦から小旗信号があり、また退屈な作戦会議だそうだ。

ボートでコルドバ王国の戦艦に行き、引退した筈のグラント元提督や他の軍人達との意味がない会議だ。

「サリンジャー、私の代わりに行って下さい」

元々、会議とか大嫌いだ。それに、サリンジャーが聞いておけば良いだろう。

「ゲイツ様!」

すぐに怒るのがサリンジャーの欠点だな。

「私は、いつまでもこんな所にいたくない。だから、会議なんかで無駄な時間は過ごさず、リヴァイアサンを探索しておく。そう、グラント元提督に言っておけ!」

リヴァイアサンの肉が美味しいと言うのが嘘だったら、本当に怒るぞ!

サリンジャーが文句を言いそうなので、見張り台に登る。マストの上の小さな見張り台には、当番の水兵がいたが、チャイチャイと退かす。

見渡す限りの大海原。微かに南の大陸が見える。

「本来なら、リヴァイアサンはもっと南方にいる筈なのだが、何故、北の大陸との間に移動したのか?」

それも寒い冬なのに? リヴァイアサンは亜竜だ。 木の蛇(ヴィゾーヴニル) の準竜よりは強いが、本当の水竜よりは弱い。

水竜は、冷たい氷に閉ざされるような北の海にいると書かれているが、この何百年かは目撃されていない。

「南の大陸の近くの島に竜でも移動したのか?」

リヴァイアサンの生息域が変わった理由など考えても分からない。

それに、私が依頼されたのは、リヴァイアサンの討伐なのだ。

「ここにペイシェンス様がいたら、見張り台に登ったら、何と言われるかな?」

あの子は面白い。他の令嬢とは違うし、何か惹きつけるものがある。

「ペイシェンス様なら、リヴァイアサンを探索しようと真面目に魔法を飛ばされるのだろうな」

凄く魔力の無駄に思えるが、彼女なら真面目に毎日探索しそうだ。

「このままでは、ブランデーケーキもなくなるし、チョコレートバーも残り少ないから、とっとと帰りたいですね」

ここらの海域でコルドバ王国の商船が襲われたのなら、移動したとしても近くに潜んでいるのかもしれない。

「海の中の探索だなんて、どうすれば良いものか? 前は岩の中の探索だったが……海にはいっぱい魔物も魚もいるからな」

異物を探すやり方では、上手くいかない気がする。それより、リヴァイアサンの巨大な魔力を探すか?

「ふうむ、水が邪魔だな!」

南の大陸は空気に竜の魔力が満ちていると聞くが、海にはリヴァイアサンの魔力は満ちてはいなさそうだ。

だが、サリンジャーが戻って来るまでに、何か結果を出しておかないと、説教タイムになりそうだ。

「彼奴は、説教をし出すと止まらないし、昔の事までグチグチ言い出すからね。だから、独身なんじゃないのか?」

巨大な魔力の塊を探索する。うん、別に風のキツイ物見台でなくても良いが、士官達の「会議に行かなくて良いのですか?」という視線が苛つくから、ここの方が快適かもな。

「ふうん、やはりそんなに上手くはいかないか?」

ペイシェンス様は、運が良い方だと思うが、私はゲイツ家に引き取られた所から運が悪い。あのままベネッセ侯爵家の次男として暮らしていたら、王宮魔法師などにならず、気儘に過ごせていたのかも?

うっ、父親のベネッセ侯爵の説教好きを思い出して、それは、それで大変だったかもとも思う。王妃様の兄だけあって、厳しいのだ。

「ああ、やっと見つけたが……何匹いるのだ? リヴァイアサンも繁殖期なのか?」

巨大な魔力の塊が三個、四個? 蠢いている。

「ふぅ、流石に四匹は一気に相手にしたくないな。海上だと、船を攻撃されたら困る」

やはり海戦は苦手だ。私なら、ここから微かに見える南の大陸まで風の魔法で飛べないことはないが、他の人は死ぬだろう。

陸上の魔物の討伐でも下手をすると、死人も出るし、怪我人も多い。だが、海戦で船をやられると何百人も一気に死ぬ。

「ふうむ、あの中の何匹が雌なのか?」

一匹だけなのか? 二匹なのか?

魔力の塊としかわからないので、雌雄など判別できない。

「先ずは、餌を与えてみるか? 二方向に餌を置いて、二匹ずつに分かれたら、良いのだが……ビッグホエールぐらい、グラント元提督なら討伐できるだろう?」

その前に、ビッグホエールを見つけなきゃいけないのだ。やれやれ手間が掛かる。やはり、ペイシェンス様を連れて来ていたら、良かったのかも?

だが、グラント元提督は女たらしだから、一緒に作戦を決行などしたら、狼に娘を差し出すようなものだ。

「まぁ、パーシバルに惚れているようだから、浮気とかしそうにはないが……」

そこら辺もペイシェンス様は良いんだが……私を選ばなかったのだから仕方ない。

物見台から甲板に降りて、士官に旗信号を送らせようか悩む。

「まぁ、今から彼方に行っても良いのか?」

まだ長々と会議をしているのだろう。

「ボートを用意しろ!」

彼方の旗艦まで飛んで行っても良いのだが、他国の軍人に能力を披露してやる必要もない。

「リヴァイアサンのいる位置がわかった」

コルドバ王国の士官達から歓声が上がったが、グラントとサリンジャーは私の次の言葉を待っている。

「悪い知らせは、四匹いるって事ですね!」

全員が絶望的な顔をする。おぃおぃ、コルドバ王国の海軍も大した事ないな。軍艦は素晴らしいのだが!

「ゲイツ様、何か作戦があるのでしょうか?」

あるに決まっている! ただ、コルドバ王国の海軍が当てになるのか? そこが問題だな。