軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ホカホカクッション

グレアムに衣裳櫃を玄関内まで運ばせていたので、それをバーンズ公爵家の従僕に運び込んで貰う。

「またいっぱい考えたのだなぁ!」

カエサルに笑われたよ。

「今回のは、発表する時期を公爵と考えたいと思っているのです」

一瞬で、バーンズ公爵とカエサルが真剣な顔になった。

「あっ、簡単なのもあります。このホカホカクッションは、冬の方がよく売れそうですわ」

先ずは簡単な物から話そう。

「ああ、これはスライムクッションと、簡易カイロの合体だな! 私は思いつかなかったよ」

カエサルが笑うし、夫人も笑う。

「寒い領地に帰る時に使いたいわ!」

「何個か、ジッパーと魔法陣とロケットとスイッチを作っていますわ。クッションを持って帰って、ミシンで縫ってお返しします」

これはすぐにできるからね。

「ふむ、これは売れそうだな! 加工もミシンが有れば短時間でできる」

後は、どちらを先にしようかな?

「この麦芽糖について説明いたします。スプーンと小皿を用意して下さい」

ベルを鳴らして、執事にスプーンと小皿を用意させる。

「まぁ、甘いですけど……砂糖とは違うのね」

バーンズ公爵夫人が、首を捻っている。

「わざわざペイシェンスが持ってきたのだ。砂糖ではないのは明らかだが、南方の植物だと同じではないのか?」

ふふふ、違うよ!

「これは麦芽糖ですわ。麦を発芽させて、お粥に撒いて、一晩保温すればできます」

公爵夫妻に驚かれた。カエサルは馬車の中で聞いていたから、驚きはしないけど、スプーンで味見して確かめている。

「本当に麦と米で甘味になるのだな。もっと、ぼんやりとした甘みだと思っていた」

公爵は、少し考えて口を開いた。

「これで甘味を庶民も楽しめるようになるな!」

そうなんだよね! チョコは高いから口にはできないもの。

「ええ、果物を煮詰めてジャムにもできます」

保存食のジャムだけど、庶民には砂糖が手に入らない。ドライフルーツぐらいなんだ。

「ふむ、バーンズ公爵領でも果物は多く採れるのだ。ある程度は王都に運ぶが、ジャムにすれば価値が上がるだろう」

すぐに自領のことを考えるんだね。見習わなきゃ!

「この作り方を教えて良いのか?」

確認された。

「ええ、パーシバル様とも話し合いました。これは、ローレンス王国全土で広めたい技術です」

庶民の為の甘味だからね。

「よく言った! これは陞爵に値するぞ!」

いや、もう十分です。

「作り方は、ここに書いてありますわ」

紙を手渡すと、バーンズ公爵が真剣に読む。

「本当に、そこらにある物で作れるのだな。これは、特許物だ!」

うっ、特許料は欲しいけど、高くして欲しくはない。

「ペイシェンス、そこは上手くして貰おう。大量に作る業者からは、貰ったら良いのさ」

カエサル、そうなのかな?

お茶を飲みながら、少し休憩する。

執事が新作のチョコレートを銀の皿に乗せて持ってきた。

「まぁ! 綺麗な色のチョコレートね! 赤のハートだなんて、素敵だわ」

やはり華やかなチョコレートはテンションが上がるね。

「これは、今までのチョコレートとは違うな」

カエサルは、一口食べて考えている。

「ええ、ホワイトチョコレートです。こちらのはドライいちごにホワイトチョコレートを掛けています」

味的には、こちらの方が好みなんだ。どうだろう?

「これは、美味しい! ハートの方は少し甘過ぎる気がした」

公爵は、そう感じたみたい。

「でも、この華やかさは素敵だわ!」

公爵夫人は、お茶会に出した時の華やかさ優先だね。

「前のフレッシュいちごのチョコも美味しかったが、これは日持ちするのが良いな」

やはり、カエサルもフリーズドライには気づかないね。料理関係は、不得意みたい。

「このホワイトチョコの材料は、カカオバターなのです。それを取った後のカカオマスでココアという飲み物もできます」

一応、ココアと作り方もメアリーが執事に渡していると思う。

「ココア? ホットチョコレートとは違うのですね? あれはコルドバ王国で不評だと聞きましたわ。でも、ペイシェンス様が作ったのなら美味しい筈よ」

執事に命じて、ココアが出るまでにリップクリームを公爵夫人にプレゼントする。

「まぁ、これは? 口紅ではないのね?」

身内の男性だけなので、公爵夫人はリップクリームを付ける。

「これは良い香りだわ。それに艶々になるし……もしかして、ホワイトチョコと同じ物なのかしら?」

砂糖や生クリームは使っていないけどね。

「ええ、保湿成分が多いので、唇をしっとりとさせます」

キラリと公爵夫人の目が輝く。

「それは、とても嬉しいわ! リップクリームだけではなく、顔に付けては駄目なのかしら?」

ええっと、良いとは思うけど、高くならないかな?

「それなら、色をつけてない状態のカカオバターの方が良いかと思います」

公爵が肩を竦めている。バーンズ公爵家なら平気だろう。

「この容器は、縫わない糊のだな。そうか、こうやって使えば良いのか」

そうなんだよね! 細さが違うけど、あれの応用だよ。

「これは、高価だから売れないかも?」

公爵夫人がにっこりと笑う。

「ふふふ……これは、私のお友達専用にしたいですわ」

美容関係は、怖いな!

「あのう、私の友達にもプレゼントしたいのですが……」

「それは、勿論よ! でも、これを広めたら、カカオが足りなくなるわ」

ええっと、顔に塗りたいと言われていたような? カエサルが目配せするから発言は控えておこう。

ココアは、公爵とカエサルには「甘いな」と不評だったが、公爵夫人と私は美味しいと思う。

「これは、お友達とゆっくりと味わいたいわ」

そう、それでこれも持ってきたんだよ!

「これはアフタヌーンティースタンドです。下にサンドイッチや一口で食べられるカナッペやキッシュ。二段目は、プチケーキ。一番上はチョコやクッキーなどの焼き菓子を置きます」

公爵夫人は手を叩いて喜ぶ。

「気のおけないお友達とのお茶会には良いわね!」

やはり、格式あるお茶会では駄目なのかな?

「明日、マーガレット王女が来られるから、お出ししたいと思ったのです。エリザベス様やアビゲイル様と新しいドレスのデザインを話し合いながら、お茶会をしようと思っていますが、駄目でしょうか?」

公爵夫人は、笑いながら説明する。

「マーガレット王女とはお友達なのだから、良いと思うわ。私が気のおけない友達とのお茶会に良いと言ったのは、早く帰って欲しい方には出さないという意味よ。お付き合いは大切だけど、長時間は話したくない方もいらっしゃるから」

ああ、それは大変そう! 公爵とカエサルも苦笑している。公爵家はお付き合いも多そうだ。