軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冬の魔物討伐

月曜の朝、まだ暗いうちにメアリーに起こされた。寒い! 湯たんぽを荷物に入れたから、昨夜は無しで寝たのだ。

「さぁ、早く顔を洗って、食事を取ってください」

湯たんぽはないけど、メアリーがお湯を運んで来てくれた。

顔を洗って、手早く乗馬服に着替える。髪の毛はメアリーが後ろに纏めて、編み込みにしてくれた。

この髪型なら、マントのフードを被ったり、退けたりしても乱れたりしないだろう。

いつもよりも早い時間の朝食なのに、父親とナシウスとヘンリーとカミュ先生も起きていた。

「お姉様、おはようございます」

可愛い弟達の為にも頑張ろう! ビッグボアの小さいのでも良いから魔法が当たると良いな。

「皆様、おはようございます」

素早く食べて、ゲイツ様の迎えを待つ。

「おはようございます!」

待つまでもなく、ゲイツ様がやってきた。

「ペイシェンス、気をつけるのだよ」

父親も心配そうだ。

「お姉様、ご無事でお帰り下さい」

ナシウス、大丈夫だからね!

「魔物を討伐されるのですね! お肉いっぱい持って帰って下さい」

ヘンリー、できるだけいっぱいのお肉を持って帰るからね。

私が弟達にキスして、別れの挨拶をしている間に、メアリーがジョージ達に指示して、衣裳櫃を馬車に乗せている。

ゲイツ様は、父親に挨拶して、馬車に乗る。

「お姉様、怪我などなさらないで下さい! お肉は良いから!」

ヘンリー、さっきは討伐するのに積極的な感じだったのに、ナシウスが心配しているから怖くなったのかも?

「ヘンリー、大丈夫ですよ!」

メアリーが行儀が悪いと睨んでいるけど、窓から身を乗り出して大声で応えておく。

馬車は、北に行くので普段は開いていない北門に向かう。貴族街から近くて良い。

そこにはもう何台もの馬車が集まっていた。それに荷馬車が何台も連なって出て行っている。

「さぁ、サリンジャーと一緒に出発しましょう!」

何か出発の式とかあるのかな? と思っていたが、何台か知り合いと集まって出発みたい。

「あのう? バラバラなのですね?」

私の質問にゲイツ様が笑う。

「弱い人達は、固まって出発しますよ。私やサリンジャーは単独行動しても大丈夫ですから」

それに、さっさと出発しないと北門前の広場が馬車でいっぱいになるのかもね?

「パーシバル様は一緒じゃないのね」

馬車も見当たらないよ。しょぼん!

「学生は固まって行動しますよ。弱い学生を護る必要もありますからね」

そうなんだね。知らなかったよ。

北門を出たら、一面の雪景色だった。

ロマノでも雪が降ったけど、もう溶けてしまっているのに、街道以外は雪が積もっている。

「雪の中の魔物討伐は辛いですよ。体温が奪われると、動きが鈍くなりますからね」

パーシバル、大丈夫かな? なんて心配している場合では無かった。

「ああ、もう魔物が出ています。まだ 黒の森(シュヴァルツヴァルト) には入っていないのに」

えっ、魔物? 何処?

「ペイシェンス様は、馬車に乗っていて下さい。キャンプの基地を作ったから、驚いて小物が外に飛び出したのでしょう。このままにしていたら、後から来る馬車が襲われるかもしれませんからね」

馬車を止めたゲイツ様が外に出ると、後ろからついて来ていたサリンジャーさんも降りる。

「先発隊が仕留め無かったのですかね? それとも 黒の森(シュヴァルツヴァルト) から溢れるほど多いのか?」

サリンジャーさんが、ぶつぶつ言いながらも、ゲイツ様と2人でアルミラージの群を瞬殺していく。

「あら、美味しそうなアルミラージですわね。よく村でも狩って食べていましたわ」

ふぅ、精神耐性はメアリーの方が高いかも? 私は白い雪の上に落ちた血の赤に少しビビっている。精神防衛をサッとあげるよ。

「アルミラージって、もっと小さいと思っていたわ」

魔法図鑑で見たアルミラージは、前世のうさぎに似ていたから、勝手に小さいと思い込んでいたのだ。

ほぼ、大きな猪ぐらいあるよ。

「このくらいでしょう。サリンジャー、名札を置いて下さい」

サリンジャーさんがマントのポケットから名札を取り出して、小山になったアルミラージの上に置いて去る。

「ゲイツ様? あのままで良いのですか?」

ゲイツ様は、クスリと笑って、解体部隊が拾って行くと慣れた様子だ。

「ああ、ペイシェンス様も名札が必要かもしれませんよ。名札には、チェックするところがあります」

ゲイツ様がマントのポケットから名札を取り出して見せてくれる。

名前を書く欄と欲しい部位とかにチェックができるようになっている。

「私は、肉と魔石以外は要りませんが、騎士は毛皮や牙も欲しがる人もいますね。何枚かあげますから、名前を書いておいたら良いですよ」

これも基地キャンプの冒険者ギルドの売店で売っているみたい。

まぁ、数枚貰ったから、これで足りるよね? 必要なかったりして?

朝早かったから、うとうとしていたみたい。

「ペイシェンス様、なかなか度胸がありますね。基地キャンプに着きましたよ。荷物を下ろしたら、討伐に出発します」

基地キャンプは、木の杭で囲まれたかなり広い場所だった。

「あちらが女子のテントですね。私は入れませんが、できれば奥の方が寒くないからお勧めです」

あっ、一つ聞いておきたかったのだ。

「あのう、メアリーの寝る場所は私の横で良いのでしょうか?」

ゲイツ様は、意味がわからないと肩を竦める。

「近くにいないと不便でしょう? 離れた場所に寝る意味はありませんよ」

良かった! テントの前には人数分のエアマットレスが置いてある。

「メアリー、2つ持って入って膨らませましょう。衣装櫃を持つの手伝うわ」

2人でヨチヨチ衣装櫃を奥まで持って行き、エアマットレスを膨らませる。はぁ、疲れたよ!

「ペイシェンス様! 討伐に行きますよ!」

えええ、ゲイツ様、早いよ!

「侍女に荷物を整理するのを任せて、少し小物から討伐しましょう」

メアリーは、ついて行きたがったけど、次々と到着してくる女学生と従者も、女学生はユージーヌ卿が引率して討伐に出かけて、従者は荷物を片付けているので、渋々残った。

「ペイシェンス様は乗馬は苦手だし、奥まで行くと大物が潜んでいますから、昼までは馬車で行ける所にしましょう」

今度は、ゲイツ様の馬車にサリンジャーさんも乗り込んだ。2人の従者は、テントで荷物整理だね。

「サリンジャー、名札は余分に持っているか?」

あっ、それは買うつもりだよ。

「ええ、去年は途中で無くなりましたから、今年はいっぱい持ってきています」

えっ、そんなに要らないと思うけど?

「ペイシェンス様は、羽毛とかも欲しいと言われていましたね。なら、私達とは別な名札の方がいいでしょう。私とゲイツ様は肉と魔石だけですから」

そうなの? それより枚数が多過ぎると思ったのだけど?

「ここら辺でいいだろう」

馬車を森の中で止めたけど、未だ街道が見える辺りだよね?

「ペイシェンス様、あの岩が見えますか?」

サリンジャーさんが手で示す方向に、大きな岩があった。

「あそこは、いつもビッグバードが巣を作るのです。毎年、取り放題ですよ」

えっ、かなり距離があるけど?

「ペイシェンス様、私がファイヤーボールを撃ち込んだら、ビッグバードが飛び立ちます。あいつらは南に飛ぶ習性があるから、こちらに向かいます。そこを魔法で撃ち落とすのです」

ビッグバードの模型で練習したけど、当たるかな?

ゲイツ様が大きなファイヤーボールを岩に撃ち込んでからは、必死だった。

ドバァとビッグバードの群れがこちらに向かって飛んで来るのだ。

「さぁ、ペイシェンス様、やってみましょう」

ひぇぇ、練習の的と飛んでいるビッグバードでは迫力が違うよ。

「ほら、お肉は美味しいですし、羽は羽毛布団になりますよ」

そうだよね! 焼き鳥食べたい!

「首に当たれ!」

ゲイツ様から貰った剣をビッグバードに向け、首を狙って連続攻撃だよ。

「おお、素晴らしい! 当たりましたよ!」

なんて、言っている間にドンドン近づいてくる。

「ゲイツ様とサリンジャー様は?」

2人は呑気そうに私を見ている。

「私達は羽毛は要りませんから、ペイシェンス様が逃したのを討伐しますよ。ほら、いっぱいいます」

えええ、何十羽もいるのだけど! ええい、やけだよ。

「首に当たれ! 首に当たれ! 首に当たれ!」

どんどん慣れて、スピードアップしていく。

それに外れたのは、2人が仕留めてくれるから、安心して魔法を放てる。

「ふう、午前中はこのくらいかな? サリンジャー、集めておいて下さいね」

はぁはぁ、疲れたよ!

「私も集めるの手伝いますわ」と言ったら笑われた。

「もう膝もガクガクでしょう。馬車で休憩しましょう」

でも、サリンジャーさん一人で? えええ、風の魔法で討伐したビッグバードを一箇所に集めている。

「ペイシェンス様が30羽、私が25羽、サリンジャーが18羽ですかね?」

えっ、そんなに? 焼き鳥、食べ放題だよ!

「もう少し命中させて欲しかったですね。まぁ、初めてだから仕方ありませんが、落ち着いて魔法を放てば、無駄な魔力を使わなくて済みますよ」

そうなんだけど、慌ててしまったのだ。

「慌てなくても、私とサリンジャーが打ち損じたのは仕留めると言ったのに。まぁ、初討伐としては上出来です」