軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冒険者ギルド

「ここが冒険者ギルドなのですね!」

下町のごみごみした町並みの中では、目立つ立派な建物だ。

何とはなく、ウエスタンの酒場みたいなスウィングドアを想像していたけど、普通の扉だった。王都ロマノの冬は寒いから、あれだと風がビュービュー入るよね。

あっ、何をしに来たのだ? という視線が突き刺さる。精神攻撃への防衛魔法をサッと張る。

やはり冒険者達は、少し荒くれ者のイメージだけど、ラノベみたいにいきなりいちゃもんをつけてくる人はいないね。

まぁ、ゲイツ様とパーシバルが一緒だからかも?

「ペイシェンス様、あちらが研修所みたいですよ」

私が物珍しさでキョロキョロしている間に、パーシバルは目的地を探したみたい。

「ふむ、冒険者ギルドは久しぶりだな。ギルド長はいるか? ゲイツが来たと伝えなさい!」

えええ、ゲイツ様はギルドにも顔が効くの?

「王宮魔法師のゲイツ様だぁ!」

中にいた冒険者達が、モーゼの十戒みたいに割れて通してくれた。

「去年は、魔物を300頭も討伐していたぞ!」

ああ、それは目立っただろうね!

「ゲイツ様、何故、ここに?」

ギルド長らしい白髪の男性が2階から降りて来た。

「ヨシュア! 久しぶりだな。少し、魔物の素材について知りたいと思ったのだ」

かなり怪しんでいるみたい。

「魔物の素材なら、魔法省に揃っているでしょう」

まぁ、その通りなのだけどさ!

「私が冒険者ギルドで調べたいと思ったのです。研修所で魔物の素材を教えたりしないのでしょうか?」

「ほう、小さいお嬢様が……それにゲイツ様が付き添われているのですか……」

ギルド長は、笑いを噛み殺す。

少し強面のギルド長だけど、意外と親切に研修所へ案内してくれた。ゲイツ様効果かも?

研修所ってギルド会員以外、本来はお金が必要みたい。

「今度、冬の討伐で使うマントの撥水加工は済んでいるのか? まだならバーンズ商会に急いだほうが良いぞ」

ギルド長は、撥水加工も知らなかったみたい。

アップタウンにあるバーンズ商会には、下町の人達はあまり行かないみたいだね。

「そうか、撥水加工したら、雨や雪に濡れなくて良いな! すぐに張り紙を書こう! 研修所は好きに使って下さい」

まぁ、ありがたく使わせて貰うよ。

研修所では、初心者に講習とかもするみたい。掲示板に色々なコースの講習予定が書いてある。

「残念だわ……一度、講習を受けてみたかった」

ゲイツ様が、フン! と鼻を鳴らした。

「私の方が上手く教えられますよ」

それは、その通りなのだ。でも、折角、転生して剣と魔法の世界に来たのだから、冒険者ギルドで初心者講習とか受けてみたかったの。

壁に棚が作ってあり、そこにファイルがズラリと並んでいる。

「さて、このファイルを全て調べるのは時間が掛かると思うが、分けてやろう!」

ゲイツ様も調べるの? 魔法省には、本当にあらゆる素材があるのに?

「魔法省には、ごく普通の情報しかない。ペイシェンス様が巨大毒蛙のネバネバを利用したりする前は、利用価値を見つけていなかったのだ。見逃しが無いか、調べてみようと思う」

ふうん、なら手分けしよう!

「私も手伝いますよ。魔法伝導の良い素材を探すのですね」

パーシバル、優しいね! ああ、メアリーがいないから、いちゃいちゃするチャンスなのに、仕方ない。

3人で魔物の素材を書いたファイルを講習会用の椅子に座って調べる。

「ああ、ファイルも作らなきゃ! 忘れていたわ」

昔ながらの硬い紙の表紙と、紐で綴じてあるファイルを捲りながら、夏休みにカザリア帝国のファイルを作ろうと思っていて忘れていたのを思い出す。

メモしておこう!

「なかなか、魔法伝導の良い物質は見つかりませんね」

ゲイツ様は、パラパラと捲っているけど、ちゃんと調べているのかな? 私は魔物に関してほぼ知らなくて、いちいち読んでいるから時間がかかる。

パーシバルは、丁寧にかつスピーディに魔法伝導の良い素材を探している。

「どうせなら、今度討伐に行く 黒の森(シュヴァルツヴァルト) にいる魔物を調べましょう」

魔物はエリア毎に纏めてあるみたい。冒険者が行く場所毎に事前に調べられるから、良いよね!

「ビッグボア、ふむふむ、お肉が美味しい。だよね! 毛皮も魔法防衛(小)、牙も材料として使われているのね」

ビッグボアの肉は手に入れたいけど、魔法を通す素材は無いみたい。

「ビッグバード、これもお肉が美味しいみたいね。カルディナ街で手に入れた醤油で焼き鳥にしたいわ。尾羽は矢に使われる。内側の羽は保温性に富んでいるから高級羽布団の材料! これは、是非、欲しいな」

ここら辺の魔物の魔石は(中)か(大)だけど、それは個体差があるみたい。

ビッグバードと一括りにされているけど、細かな種別にも分けてある。内容はほぼ一緒だ。

私は意識的に避けていたけど、魔法伝導の良い素材って、やはりネバネバ系かも? 昆虫とか爬虫類系は苦手なのだ。

「うっ、絵は見ないで文字だけ読みたいわ!」

苦手だぁ! それも大きさも半端なさそう! 討伐なんて無理かも……えええ、なんかこれ良さそうじゃない?

「パーシバル様、ゲイツ様、これはどうかしら?」

見たくもない悍しい絵だけど、2人を呼んで見せる。

「 黒の森(シュヴァルツヴァルト) に生息している魔物なんかに、魔法伝導の良い素材があるのですか?」

少し小馬鹿にしてゲイツ様が私の開いたページを見る。

「 巨大毒ナメクジ(リーマークス) ですか? ふむ、ふむ、えええ! あのネバネバで人の魔力を吸い取る……近づきたくないですね」

私も近づきたくないよ。その上、あのネバネバで性交していると書いてあるのを読むと、ゲーしちゃいそう。

「これは……冒険者に狩って来てもらいましょう。私は触るのは御免ですし、黒焦げにしたらネバネバの採取もできないでしょうからね」

酷い言い方だけど、パーシバルも同意している。

「あいつらは大嫌いです!」

あああ、パーシバルはきっと酷い目に遭ったのだね。

「泥の中に隠れていて、脚に巻き付くのです!」

これは、冒険者も嫌がるのじゃないかな? 討伐だけなら、黒焦げにするとかできそうだけど、粘液の採取だからね。

「少し上乗せすれば、大丈夫ですよ。ただ、あまり触りたくないですけど……」

チラリと私の顔を見る。

「言い出したのは私ですから、実験は私がします!」

女は度胸だよ!

パーシバルがパチパチと拍手してくれた。

冒険者ギルドに慣れているゲイツ様がリーマークスの粘液採取の依頼を出してくれた。

「冬の魔物討伐の後にして下さい」

金貨を払って、受付のお姉さんに頼んでいる。

ああ、冒険者ギルドの受付のお姉さんは美人揃いだ。これは、読んでいたラノベ通りだね。

それにしても、パーシバルに秋波を送る女性冒険者が多いのだけど! ぷんぷん!

まぁ、ゲイツ様にもハートが飛んで行っているよ! 凄腕の王宮魔法師だから、憧れるのかもね。

荒くれ者の冒険者に絡まれるイベントなど発生しないで、ギルドを後にした。

屋敷に戻って、モリーとマリーと話し合わなくては!

「ゲイツ様、今日はありがとうございました」とお礼を言ったけど、そろそろお茶の時間も過ぎている。

ペイシェンスのマナーが「お茶でも如何ですか?」と誘わせる。もう! パーシバルとのデートが台無しだよ。

「それはありがたいですね。喉も渇いているのです」

遠慮という文字はゲイツ様の辞書には無いみたい。

銀の鈴を鳴らして、ワイヤットを呼んで、お茶の用意をしてもらう。

「子爵様もお呼びしましょう」

ああ、昼食からずっと書斎に篭っているのだ。ワイヤットが心配するのも無理ないね。

「ええ、お父様にもお茶を飲んで貰いたいわ」

転生した頃は、紅茶も薄くて……涙が出てくるよ。

「お父様、毎朝、ナシウスとヘンリーがしている体操を一緒にしてみては如何でしょう」

紅茶とチョコチップクッキーで少し休憩した父親に、オルゴール体操を勧める。

「ナシウス達が何かしているとは知っていたが、体操だったのか?」

相変わらず、家庭内の事は無関心だね。

「子爵様、あの体操はよく考えてありますよ。それに朝の太陽から魔素を取り込むには最適な深呼吸もありますから、私からもお勧めします。肩凝りや腰痛にも効きます」

少し気持ちが動いたみたい。私よりゲイツ様の言葉の方が届くのかな?

「パーシバル様にもお勧めですわ」

パーシバルは、教えて欲しいと素直だよ。

「まぁ、朝は起きているのだから、ナシウスとヘンリーと一緒に体操しても良いかもしれないな」

するとは言わないけど、少し前進だね。

「チョコチップクッキーとコーヒー、お土産に下さるなんて、ありがとうございます」

そりゃ、あれほど食べていたら、気に入ったのわかるからね。

ゲイツ様を見送ったら、パーシバルもお見送りだ。

でも、ちょこっとだけ温室を案内する。という名目でいちゃいちゃタイムだよ。

「ああ、これは素敵な温室ですね! 薔薇が見事です」

いちごはまだ植えたばかりだからね。

「そう言えば、上級回復薬を我が家にも沢山届けて頂いたお礼がまだでした」

それは良いんだよ。

「この温室で上級薬草を育てたのは、ナシウスとヘンリーですの。私は、それを上級回復薬にしただけですわ」

パーシバルは、驚いたみたい。

「ナシウスは風、ヘンリーは身体強化だと思っていましたが?」

「2人とも簡単な生活魔法を使えますわ。パーシー様も使えると便利ですわよ。特に、討伐のキャンプとかでは、浄水を作るのと、清潔を保てると良いと思います」

パーシバルは、クスクス笑いながら、教えて下さいと耳元で囁く。

ちょこっと、いちゃいちゃして、パーシバルは家に帰る。寮に行かなきゃいけないからね。

「ペイシェンス、このマント急がなくても良いですからね」

いや、冬の魔物討伐までには仕上げるよ!

「いえ、もう糸もロケットも作ってありますから、刺繍するだけですわ」

パーシバルは「絶対に無理しないで下さい」と頬にキスをして帰っていった。

ふん、ここで無理しないで、何処で無理するのよ!