軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

側仕えとは……疲れるものだね

夕食の鐘に救われたなんて考えていたけど、ハァ間違いだった。

「あら夕食なのね。では、話は夕食の後にしましょう」

夕食後も話し相手にならなきゃいけないみたいだ。それに要求がどれ程になるのか怖いよ。放課後、クラブ活動も一緒なのが辛い。クラブ活動って毎日は無いよね?

3階からマーガレット王女の斜め後ろに付いて降りていく。これはメアリーがいつもこんな感じで付き添っているのを真似たのだ。

三歩下がって師の影を踏まずと言う格言があるけど、そこまで下がると話し相手にならない。

食堂に降りた途端「マーガレット、一緒に食べよう」と、リチャード王子に誘われたよ。初日からハードル高いな。

「お兄様、ありがとうございます。ちょうど良かったわ。こちらがお母様が選ばれた私の側仕えのペイシェンス・グレンジャーです」

あれっ? 何だかさっきと意味が違って聞こえる。

「そうか、母上がお選びになったのなら安心だ。ペイシェンス、マーガレットの側仕えをしっかり務めるように」

「ペイシェンス・グレンジャーでございます。宜しくお願い致します」と挨拶する。ビクトリア王妃様が選んだ側仕えを、リチャード王子は素直に受け入れるんだ。ここら辺のルールは私には分かり辛い。

リチャード王子、マーガレット王女の後ろにお盆を持って並ぶ。あっ、何だか目立っている。王族は視線を常に集めているから平気なのかもしれないけど、疲れるよ。

やっと席に着いたと思ったら「リチャード兄上、マーガレット姉上、わたしもご一緒します」と、キース王子まで合流したよ。

「なんでおまえが、ここに?」

マーガレット王女が「ペイシェンスは、お母様が選んだ私の側仕えなのですよ」と説明する。

「ちゃんとお世話するのだぞ」と偉そうなキース王子だけど、反対はしないんだね。まぁ、姉の側仕えに興味は無いのだろう。

王族と一緒の夕食は食べた気がしなかった。

夕食後、マーガレット王女の部屋でクラブ活動の曜日を聞いた。

「火曜と木曜なのよ。その日は、私の教室までいらっしゃい。あっ、そうだわ。少しハノンを弾いてちょうだい」

どの程度、ハノンを弾けるのかチェックしたいようだ。下手に弾いたら、拘束時間短縮になるのかなぁ? でも、ペイシェンスは真面目だからサボるなんてことしない。

「まぁ、本当に上手なのね。これなら音楽クラブでも恥はかかないわ」

夜なので一曲で済んだが、クラブのない月曜、水曜、金曜はバックミュージック係かも。トホホ

やっと「下がって良いわよ」と許可が出た。許可が出ないと下がれないんだなぁ。泣きそう。

ペイシェンスがマナー違反だと騒いでいるけど、ソファーにぐだぁと横になる。

「疲れたぁ」

飛び級した2年の教科書を読む気力は残ってない。お風呂に入って寝よ。

『カラ〜ン、カラ〜ン』

いつもは鐘が鳴る前に起きるのだけど、昨夜の精神的疲れで爆睡していたようだ。爆睡してもお上品に寝ているペイシェンスの習慣縛りに呆れる。

「もしかして、マーガレット王女をお迎えに行かなくちゃいけないのかも」

ペイシェンスは『当然です』と騒いでいるので、手早く洗面して着替える。これは鍛えてあるから早い。

3階へ急ぎ、特別1号室の豪華な扉をノックする。マーガレット王女の応答を待っていたが、返事がない。

「もしかして寝てらっしゃるとか無いわよね」

側仕えとして特別1号室の鍵を昨夜マーガレット王女から貰っている。まさか、この為なの? 朝食を一緒に食べるのは、側仕えとして要求された職務だ。恐る恐る鍵で扉を開ける。マーガレット王女はいない。まさか寝ている? いや、着替えているんだよ。

「おはようございます」と挨拶してみるが、無反応だ。

起きていて欲しいとの願いは裏切られた。寝室の扉をノックする。

「マーガレット様、おはようございます。ペイシェンスです」

かなり大き目の声で起こす。

「おはよう……」

どうやら起きて下さったようだ。やれやれ。鐘は聞こえなかったのかな? 朝食の鐘が鳴る前に、着替えて下されば良いのだけど……あれっ、静かだよね。まさか二度寝!

ノックしても静かだ。側仕えって起こすのも仕事なの? でも、起きて着替えて貰わないと、朝食を一緒には食べられない。

「マーガレット様、失礼します」

わぁ、寝てるよ。人が入っても寝てられるのは、王族は侍女や女官がいつも側にいるのに慣れているからかな? なんて呑気な事を考えている場合じゃない。朝食の鐘が鳴った。このままじゃ、私も食べ損なう。

「マーガレット様、起きて下さい!」

大声でマーガレット王女を起こす。

「おはようございます。もう朝食の鐘が鳴りました。急いでお支度して下さい」

のろのろとベッドから降りたマーガレット王女を急かす。

「ペイシェンス、髪をお願い」

洗面して、やっと制服を着てくれたマーガレット王女は豪華な化粧台の前に座ってぼんやりしている。どうやら低血圧みたい。

「昨夜の髪型で宜しいでしょうか?」

細密画が背に描かれているブラシで手早くとかして、ハーフアップにし、化粧台の上に置いてあった髪留めでとめる。

「さぁ、食堂に行きましょう」

鐘が鳴ってかなり時間が経っている。私はいつもはすぐに食堂へ行っていたので、まだ食べられるのか不安だ。

「そんなに急がなくても大丈夫よ」マーガレット王女は呑気だ。

どうにか間に合ったが、殆どの寮生は食べ終わっていた。明日からはもう少し早く部屋に行こうと反省した。起こす必要があるなら、昨夜のうちに言って欲しかったよ。

マーガレット王女は朝食をほとんど残した。私は手早く食べたよ。

「さぁ、授業に行かなくてはね」と、どこまでも優雅でマイペースなマーガレット王女だ。

朝から変な汗かいた。階段を上りながら、生活魔法で『綺麗になれ!』と唱えたら、気分もスッキリした。

「あら、ペイシェンス。便利な魔法を持っているじゃない。明日から宜しくね」

えっ、明日もやはり自分では起きないつもりなんですね。その上、身支度も手伝わすつもりなんだ。側仕えがこんなに疲れるとは! ビクトリア王妃を恨むよ!