軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

さらばノースコート! さぁ、サティスフォードへ!

出発の朝は早い。特に王都まで帰るカエサル達とフィリップスはね。サティスフォードは王都より近いから、ここまで早く起きる必要は無いけど、見送るよ。

「ノースコート伯爵夫妻にはお世話になりました」

カエサルが代表で挨拶するけど、他の皆も丁寧なお辞儀をしている。

「いえ、有意義な滞在になったようで良かったです」

「皆様、王都までお気をつけて」

リリアナ伯母様も良家の子息達とサミュエルが親しくなれたのは嬉しいみたい。とても上機嫌で見送る。

フィリップスは、ナシウスと特に親しくしていたから「王都に帰ってからも屋敷に訪ねてくれ!」と誘っている。

「フィリップス、ナシウスは錬金術にも興味があるみたいだぞ」

青田買いは禁止だと、ベンジャミンがちゃちゃを入れているけど、どうだろう? ナシウスも私が物を作っているのには興味を持って見たりしているけど、やはり歴史研究クラブの方が楽しそうだ。

「ペイシェンス、王都に帰ったら一度屋敷に来てくれないか? マギウスのマントを返さないといけないし、父上と話し合った方が良い」

私はサティスフォードに2日程滞在して王都に帰るので、港町の治安を心配したカエサルが屋敷で一旦保管する事になったのだ。まぁ、カエサルは古文書の写しも運ぶから、王都から護衛を数人呼び寄せているので安全だよね。

「ええ、お邪魔しますわ」なんて言っていたら、他のメンバーからも招待されたよ。

「サミュエル君も是非来てくれたまえ」なんて言われている。私なら面倒だと思うけど、サミュエルは「ありがとうございます」と答えている。うん、いつの間にかサミュエルはノースコート伯爵家の嫡男として、成長しているね。私も頑張らなきゃ! 王都に帰ったら、伯母様方から貴族の令嬢としての心得をレクチャーして貰う事になっているんだからね。

馬車を見送って、朝の体操をする。うん、習慣にして体力強化しなきゃ。それに、サティスフォードに出発するのは、もう少し後なんだ。

それは、ノースコート伯爵が調査隊のメンバーにあれこれと注意をしているからだよ。本当は、伯父様は館を留守にしたく無いみたい。だって、陛下に献上する古文書と自分が保管する写しが館にあるからね。でも、リリアナ伯母様だけをサティスフォードに行かせるのも不安みたい。

「宝石を私が選んでプレゼントしたい」なんて言っていたけど、まぁ、伯母様に任せるのが怖いとも思えるね。

だから、伯父様はサティスフォードに一泊してからノースコートに戻り、夏休みギリギリまで滞在する調査隊と共に王都に帰って、陛下に古文書を献上するみたい。王都の屋敷に写しを保管するのかな? 保管場所は知らされていないから想像だよ。

「まぁ、ヴォルフガング教授なら古文書を命に換えても守りそうだな」

サミュエルも言うようになったね。私も同感だ。

体操も済ませて、オルゴールも馬車に乗せたよ。サミュエルも体操で魔素を身体に取り入れるコツを掴んだので、オルゴールを注文している。問題は、他の音楽も流せるディスク型のオルゴールの作製だね。どうせなら、そちらの方が良いと思うんだ。

そんな事を考えながら、馬車に乗り込もうとしたら、サイモンが走ってやってきた。

「ペイシェンス様、ナシウス君、ヘンリー君、親から絶縁中だと言われている為とはいえ、無礼な態度で申し訳なかった。今度、会う時までには関係が改善されていたら……いや、私は従兄弟達と仲良くしたい!」

まぁ、そちらが親しくしたいなら、私は拒まないよ。それに、ナシウスとヘンリーの笑顔が見られたから、水に流そう。

馬車には弟達とサミュエルと乗る。メアリーは召使い達と同じ馬車だ。

「「サミュエル、招待してくれてありがとう!」」

私と弟達の感謝の言葉に、サミュエルが照れている。

「いや、とても賑やかな夏休みになったな」なんて、ツンデレなんだから。

皆で、わいわいと楽しかったノースコートの日々を話しているうちに、サティスフォードに着いた。

朝、ゆっくりと出て、昼前に着いたのだから、本当に近いね。ラシーヌがリリアナ伯母様と仲が良いのも理解できるよ。サミュエルの姉達は、かなり北部の領地に嫁いでいるみたい。でも、秋の社交界には来るのかな? 去年は出産とかで領地にいたみたいだけど、従姉妹にも会ってみたいな。

「わぁ、何だか不思議な香りがします!」

ヘンリーは身体強化だからか、鼻が利くね。遠いバザールからの香辛料の香りにいち早く気がついたみたい。クンクンと鼻を動かしている顔が可愛くて、サミュエルがいなかったら抱きしめてキスしているよ。

「あっ、風に香りが乗って流れてきました」

ナシウスが声を上げた時、私の鼻にも香辛料の香りが届いた。ああ、カレーが食べたい! 米がなくてもナンを作っても良いよね!

「お腹が空く香りだな!」

少しぽっちゃりだったサミュエルは、夏休みの海水浴ですっきり体型になったけど、食いしん坊なのは変わらないね。

「ええ、もうすぐお昼ですよね!」

ナシウスは、私より背も高くなり、成長期独特の食欲魔人だ。サミュエルと競争する様に食べている。まだ細身だけど、剣術稽古や海水浴で筋肉も少しついた。それにヘンリーもたくさん食べるようになったし、エバには頑張って料理してもらわないとね。

「多分、あれがサティスフォード子爵家の屋敷だ」

サミュエルもサティスフォードには来たことが無いみたい。ここでも領主の屋敷は小高い丘の上にあるんだね。馬車が進む方向に、ノースコート伯爵の館とは違って、小洒落た感じの屋敷が見えてきた。ノースコート伯爵の館は、防衛拠点っぽかったけど、こちらは港に寄った貴族をもてなす屋敷に見える。

ああ、でも屋敷の後ろには古い館が建っているみたい。そちらは防衛に強そうだけど、住み心地は良くないみたい。古い砦っぽいんだもの。

わぁ、また出迎えが凄い。親戚なんだから大袈裟にしなくて良いのにね。

「ようこそ、サティスフォードへ」

サティスフォード子爵夫妻が和やかに出迎えてくれた。勿論、アンジェラもいるけど、やはり弟達は子守が世話をしているみたい。残念! でも会う機会はあるよね!

「ペイシェンス様、ようこそ!」

大人達が挨拶をしあっている横で、アンジェラが私達を歓迎してくれる。

「アンジェラ、やっと来れたわ!」

二人で笑いながら、屋敷の中に入る。わぁ、とても明るくて綺麗。ノースコートも綺麗だったけど、あちらは元々が館っぽいし広過ぎる感じなんだけど、こちらは瀟洒って感じなんだよね。まぁ、前世の家事情からしたらとっても広い大邸宅だけど、暮らし易そうだ。

メアリーや侍女や従僕達が荷物を運んでいる間、サロンで少し休憩する。ラシーヌがヘンリーも一緒で良いと言ってくれたのは嬉しいけど、6歳のエイムズは子供部屋なんだね。まぁ、ヘンリーは秋の誕生日には8歳になるけど……滞在中に会えるかな?

一旦、部屋に案内して貰って旅の塵を落として着替える。

「お嬢様、夕食以外はヘンリー様はご一緒なのですね」

メアリーに確認されたよ。

「ええ、他のお客様がいらっしゃらない限り、そうして良いとラシーヌ様が言われたわ。でも、サティスフォードはお客様が急に来られる事も多いみたい。船が港に着いたら、貴族の方を接待するのが習慣化しているそうよ」

私的には迷惑だけど、それが貴族の付き合いなんだろうね。親戚とも付き合いがなかったグレンジャー家では、訪れる客も無いし、宿泊客なんて居ないよ。サイモンが家に来る日がいつかくると良いな。

昼食は和やかな雰囲気だった。ラシーヌは、アンジェラがほぼジェーン王女の側仕えに決定したので、凄く上機嫌だったよ。そして、サティスフォード子爵も、南大陸からの派手な布が完売して、ホクホクみたいだ。

「本当は無地の綿生地を送ってくる筈だったのに、何処で行き違いになったのか、あんな派手な生地を見た時は、大きな損失を覚悟していたのに、ペイシェンス様のアイデアで王都で売り切れました」

それは良かった! 庶民の女の人や女の子もお洒落したいよね。

「それと、例のネバネバもバーンズ商会が全て買い取ってくれたよ! 冒険者ギルドにも、少し上乗せした報酬をだしているから、こぞって狩ってくれている」

あっ、あれは未だ内緒だからね。でも、ノースコート伯爵もバーンズ商会に売っているようで、二人で幾らの報酬で冒険者ギルドに依頼しているかとか話しているよ。

私は、アンジェラと目で合図して、食事の後は部屋に案内して貰う予定だ。バザールにも行きたいけど、先ずは約束を果たそう。

「リリアナ叔母様? とてもお綺麗だわ。いえ、いつも美しいけど……何かお化粧品を変えられましたの?」

ドキンとした。ラシーヌに気づかれたかな?

「まぁ、ラシーヌはお世辞が上手ね。嬉しいわ」

リリアナ伯母様は上手く誤魔化したけど、ラシーヌは首を傾げている。女の人は鋭いね!

「サミュエル君やナシウス君やヘンリー君は、サティスフォードの港を案内しよう!」

アンジェラが父親に私と部屋でゆっくりと話したいと予め言っていたみたいだ。港の見学もしたいけど、私は帆船に乗るのは一度で十分だよ。縄梯子を登るのはスカートだと難しいからね。下を気にしながらだと、落ちそうになるんだもん!

リリアナ伯母様は伯父様とラシーヌと一緒に宝石商を呼び寄せて、お買い物みたい。これが怖くて、ノースコートから態々伯父様は付いてきたんだ。なるべくお財布に優しい宝石があると良いね。