軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

朝のオルゴール体操!

陛下は調査隊の不協和音にすぐに気づかれたみたい。まぁ、報告書を読んだら分かるよね。

「ヴォルフガングの現状を維持したい気持ちも理解できるが、この動力源を研究して使える様になればローレンス王国にとって有益だ」

つまりグースやゲイツ様の案が採用されたのだ。

「だが、この開閉システムや灯りが壊れる様な発掘は絶対に禁止する!」

飛び上がって喜んでいたグースが苦虫を噛み潰した様な顔になる。

「では、ペイシェンス様にお手伝い願わないと困ります」

ちょっと、ゲイツ様がやれば良いじゃん! 私は残り少ない夏休みを弟達と満喫したいんだ。

「ゲイツ、お前は何をしに此処に来たのだ? 幼い女の子に頼るなんて王宮魔法師の名が廃れるぞ」

やったね! 私の言いたいことを言って下さったよ。あの坂道を馬で登るのは御免なんだよ。

「そりゃ、私にもできない事はないですが、ペイシェンス様の方が上手にできそうなのに……まぁ、仕方ないか。乗馬はお嫌いみたいだし」

えっ、また考えが漏れていたの? 困るよぉ!

「ペイシェンスが乗馬が苦手なのは、誰でも知っている」

私の微妙な顔を見て、ベンジャミンが笑った。それは、そうなんだけど、皆も笑わなくて良いじゃん。自動車を作りたくなったよ!

「また何か思い付いたのだな!」

カエサルに気づかれちゃった。そんなに顔に出ているのかしら?

「ええ……馬に代わる移動手段が有れば、乗馬が苦手でも大丈夫かなと思ったのです」

錬金術クラブのメンバーとグース達の目が怖いよ!

「ペイシェンス様、才能の無駄使いはやめて、王宮魔法師になりなさい。そんなに便利な発明ばかりしていては他国に攫われます。王宮魔法師の弟子に手を出そうなんて馬鹿はいませんから、安全です」

まだ諦めていないんだね!

「ゲイツ様、私はチマチマとした生活をより良いものにする物を発明するのが好きなのです。だから王宮魔法師にはなれませんわ」

きっぱりとお断りしておく。

「ペイシェンス、お前は安全に対する気持ちが薄い。それにウィリアムも考えていないだろう。それは注意しなくてはいけないぞ」

陛下に叱られてしまったし、他の人まで頷いている。

「ゲイツの弟子になるのが嫌なら、ならなくても良いが、防衛魔法は教えて貰いなさい。でないと心配だ」

防衛魔法かぁ、秋学期に履修しても良いかもと思っていたんだよね。リュミエラ王女が留学されると聞いて、そんな時間は取れないかもとやめたけど。

「王立学園で習うより、私の方が強力な防衛魔法を教えてあげられますよ。あっ、なんなら王立学園に教えに行っても良いです!」

いや、私は知らなかったけど、ゲイツ様って偉い人なんでしょ。そんな人が王立学園に個人教授に来たら目立つよ。

「いえ、結構ですわ」これは断りの言葉だよね!

「ああ、では王宮に来て下さい」

ゲイツ様って気持ちが薄らでも分かる筈なのに、何故、断っているのが通じないの?

「おお、それが良い!」

ええええ……陛下、私は断っているのに無視ですか?

「私は……」

「ペイシェンス、防衛魔法は必要だと思う。ゲイツ様に教えて貰えるなんて素晴らしいことだ」

私が断ろうとしているのを察した伯父様に口を閉じさせられたよ。

「ペイシェンス様の都合が良い時間に馬車を王立学園に向かわせます」

どうやら決定事項みたいだ。空いている時間なんてあるのかな? 無ければ行かなくても良いのかも?

「ペイシェンス、絶対に防衛魔法は必要だ」

陛下に念押しされちゃった。これは受けないと駄目みたい。

「スケジュールを調節してみます」

こちらが譲歩すると、ゲイツ様はグイグイ押してくる。

「家政コースをやめれば、時間なんか幾らでも取れるでしょう。文官コースもやめたら良いんですよ」

勝手な事を言わないでよ! あっ、陛下も困っている。本当は家政コースは必要ないのにマーガレット王女の側仕えだから履修しているのを知っているからね。でも、染色と織物は私の趣味なんだ。後はデーン語と裁縫だけなんだよね。それもデーン語は文官コースと共有だし……

「それはペイシェンスに任せよう!」

陛下は逃げたね! 少し前ならマーガレット王女の側仕えをやめられるなら喜んだと思うけど、今は少し違うんだ。友達なんて言うのは厚かましいけど、側仕えをやめたいとは思っていないんだよなぁ。

「私は自分の学びたい事を学びますわ!」

防衛魔法も学ばなくてはいけないのは分かったけど、王宮魔法師にはならないからね。

「良かったな、ゲイツ。お前にも初めての友達ができたみたいだ」

ええええ……友達では無いです。防衛魔法を教えて貰うだけですよ!

「ええ、陛下は友達とは言い難いので、ペイシェンス様が初めての友達ですね!」

ああ、全員が唖然としているよ。断りたいけど……あの年で初めての友達なんて……断れないじゃん! それに私も友達が少ないから、何となく孤独なの分かるんだよね。

「おお、そうだ! ノースコート伯爵、調査隊が揉めているみたいだから、監督官としてリチャードを派遣する。ゲイツはグース寄り過ぎるからな。宜しく頼んでおくぞ」

ノースコート伯爵夫妻は、次期国王のリチャード王子が来られると聞いて、喜んでいるけど、あの王子も曲者なんだよね。要注意だ!

今回の視察では晩餐をともにすることなく、陛下はさっさと離宮に戻られた。王妃様のご機嫌を損ねてはいけないからね。

「ペイシェンス様、明日の朝からは体操ですね!」

大きな猫に懐かれた気分だよ。私はショタコンだから、自分より大きな人に懐かれても嬉しくない。

「そうだ! 朝の体操の後にナシウス君とヘンリー君に魔法を教えてあげましょう!」

うっ、私の弱味をグイグイ突いてくるね。そんな事を言われたら、拒否できないよ。

「ゲイツ様、ありがとうございます!」

ヘンリーはもう少し呼吸方法や魔素の取り込み方や使い方を教えて欲しいみたいで喜んでいる。

「お姉様、良いのですか?」

ナシウスは、私を気にしているけど、それでは駄目だよ。自分でチャンスを掴み取らなきゃ!

「ナシウスの思う通りにすれば良いのです。私が迷惑なら、自分の口でゲイツ様に言いますから」

少し考えて、ナシウスは「お願いします!」と頭を下げた。うん、男の子はそのくらい積極的で良いんだよ。

「ペイシェンス……」

ああ、サミュエルだけ仲間はずれは拙いよね。

「サミュエルも朝の体操に参加すれば良いわ。その後はゲイツ様に魔法の練習を見てもらいなさい。ゲイツ様、お願いしておきますね!」

かなり圧を掛けたよ。サミュエルだけ除け者にはさせないからね!

「おお、ペイシェンス様の威圧はなかなかのものですね。もう少し迫力をつければ、誰でも跪かせられますよ。まぁ、二人も三人も一緒ですから、良いでしょう。それに友達の頼みですからね!」

友達認定が確定しちゃったけど、サミュエルがナシウスと拳をぶつけ合っているのを見たら、そんなのどうでも良くなったよ。ヘンリーも参加して、子犬がわちゃわちゃしているみたいで、とっても可愛いんだもん!

次の朝、何で皆いるの?

「おはようございます!」グースとかヴォルフガングまでいるよ。

「おっ、これが手回しオルゴールか!」

ベンジャミンや錬金術クラブのメンバーは手回しオルゴールが目当てなのかな?

「ええ、ミハイル様の設計図のお陰で出来上がりましたの。でも、これは同じ音楽しか流せないから、ディスク型や紙の音符型の方が売り出すなら良いかもしれませんね」

ミハイルの青い目が輝く。うん、一緒に作ろうね!

「それは色々な音楽が流れる装置って事なのか? ペイシェンス、それは画期的だぞ!」

ベンジャミン、画期的なのはレコードと蓄音機だよ。それも作れたら良いけど……全く知らないんだ。レコードは飾ってあるのを見たことあるだけなんだもん。ダウンロード世代なんだよ。オルゴールは、観光地でオルゴールの館に行って素敵だと思って、小さいのを買って貰ったから知っているけどね。

そんな事を考えているうちにゲイツ様もやってきた。

「メアリー、回してね!」

メアリーに取っ手を回してもらって、ラジオ体操ならぬオルゴール体操だ。

「深呼吸は、お腹の中に魔素を溜める感じに深く吸うのよ!」

いちいち解説付きだけど、ナシウスとヘンリーは簡単だから大体は覚えている。それに、音楽と連動するから覚えやすいよね!

「ふうん、よく考えられている体操ですね。肩の凝りや足腰の鍛錬になりそうです」

ゲイツ様も意外に真面目に体操をしていた。

「これで体操は終わりですわ!」

弟達とサミュエルは、ゲイツ様から魔法を教えて貰うけど、私は外野を朝食へと向かわせようとした。

「いや、呼吸方法を学びたいから見学しておく」

ベンジャミン達は、それが目的で早起きしたんだね! 他の人達もか!

「離れて見ているなら良いと思うわ。邪魔をしないでね! 呼吸方法は丹田に魔素を溜める様にするだけだから簡単よ」

ベンジャミンの目がキラリとする。

「その丹田とは何だ?」

えええ、弟達なら良いけど、ベンジャミンの臍の下を触るのは駄目だよね! 私はレディなんだから。

「またペイシェンス様に甘えようとしている! 貴女は何故そんなに無防備なのですか? 用がない人は食堂へ行きなさい!」

シッシッと追い払ってくれたのは良いけど、ネチネチ説教するより、弟達に魔法を教えてよ!

でも、流石にゲイツ様は王宮魔法師だけあって、教え方も上手い。サミュエルも魔素の取り込み方が分かったみたいだし、ヘンリーはかなり上達して、ゲイツ様の剣のスピードについていっている。

「ナシウス君は、風が得意だけど、若くて頭が柔軟なうちに生活魔法を訓練して身につけた方が良い。教会の魔法学が頭に入ると、カチコチに固まった考え方しかできなくなるからね」

えええ、では王立学園でエステナ教会のテキストを使っているのって拙くない?

「ええ、本当は使いたくないのですが、普通の人には有効なのです。あれで魔法が広まったのは事実ですからね」

そうか、エステナ教が広まったのも、魔法を一般の人々が使えるように教えたからだもんね。

「ペイシェンス様は、エステナ教に染まっていませんね。そして、ナシウス君もヘンリー君も……グレンジャー子爵はわかってエステナ教を遠ざけておられるのかな? まぁ、ロマノ大学の次期学長ならご存知でも不思議ではありませんね」

うん、やはり考えを読まれているよ。なのに、何故私の気持ちに反した事をするのか不思議だよ。

「さぁ、朝食にしましょう! 綺麗になれ!」

体操の後で魔法の練習もしたから、全員に生活魔法を掛けたよ。

「おお、これは素晴らしい! 気分爽快ですね」

約一名が騒いでいるけど、放置して食堂へ弟達と向かう。午前中は勉強だからね!