軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王立学園とロマノ大学の魔法学?

ゲイツ様は、私と一緒に格納庫の上の動力源を視察したがったけど、私はあの坂道を馬で登るのは御免だったので、NO! と断ったよ。

ノースコート伯爵と調査隊とカエサル達が一緒に行ったから、大丈夫なんじゃない?

私はアンジェラとリリアナ伯母様とサロンでお茶だ。ハートリッジ様は馬車の旅で疲れたからと部屋で休んでいる。サミュエルと弟達も一緒について行ってしまったので、少し寂しいけど、身内の女だけでお茶するのも良いよね。

「ペイシェンス様、明日は夏の離宮へ行くのですけど、海水浴でしょうか?」

それは分からないけど、フロートやボディボードや水着やビーチサンダルは持って行く予定だ。

「さぁ、どうなるかは王妃様のお考え次第だと思いますわ」

それより、リリアナ伯母様に尋ねておきたいことがある。

「ゲイツ様はいつまで滞在されるのでしょう? 明日、私達は夏の離宮へ行きますが、明後日には王都に帰られるのでしょうか?」

言葉の端々に、早く帰って欲しいとの願望が籠ってしまう。

「まぁ、お客様にいつまで滞在するのかなんて聞くのは、マナー違反ですよ」

それは知っているけど、相手をするのは疲れるんだよ。

「サミュエル様から聞きましたが、ゲイツ様はペイシェンス様にプロポーズされたそうですね」

お喋りサミュエル! 先に帰ってアンジェラに話したんだね。離宮行きが終わったら、ビシバシ勉強させよう。あれっ、サミュエルとアンジェラっていつの間にそんなに仲良くなったのかな?

「まぁ、王宮魔法師のゲイツ様からプロポーズされたのですか! とても素晴らしいですわ。ペイシェンスは、モテモテですわね」

いや、あれはプロポーズというより、侮辱に近いよ。私みたいな変わった女は貰い手が無いだろうから貰ってあげようなんてね。

「いえ、ゲイツ様は悪い冗談を言われただけです。それにお断りしましたから」

デリケートな問題だからと、放置していたらいつの間にか婚約していたなんて、絶対に嫌だから、はっきりとさせておく。

「まぁ、勿体ない!」

ノースコート伯爵と同じリアクションだよ。流石、仲良し夫婦だ。

「伯母様、そんなにゲイツ様は高い地位に就かれているのですか?」

アンジェラは、リサーチに熱心だね。

「勿論ですわ。現在、王宮魔法師はゲイツ様だけですし、魔法省のトップですからね」

えええ、魔法省のトップがゲイツ様? 魔法省の役人達に同情するよ。あれっ? 行政の教科書にそんなことは書いてなかったよ。魔法省のトップは魔法大臣だったけど? そう、錬金術の魔道具の特許もここの管轄なんだよね。前世の高校程度の教科書だけど、ちゃんと勉強したから覚えているよ!

「ペイシェンス、魔法大臣は事務的な処理をしますけど、その上にゲイツ様がいらっしゃるのです。そして、ゲイツ様に命じる事ができるのは陛下だけですのよ」

そう言えば、ゲイツ様もそんな感じの事を話していたね。何故か陛下と私を同等に扱っていたような?

「だから、あんなに我儘なのですね!」

「まぁ、ペイシェンス! ゲイツ様に無礼な言葉は駄目ですわよ」

リリアナ伯母様にメッと叱られちゃったよ。

「でも、ゲイツ様ではなく、普通の生活魔法の使い手が派遣されていたら、ハートリッジ様の負担も少なくなりますわ」

優しそうなご婦人だけど、格納庫までは歩くのは無理そう。でも、カザリア帝国の遺跡側からも開けられるようになったし、普通の生活魔法の使い手がもう一人派遣されたら、調査も捗るよね。

今は調査隊もゲイツ様に振り回されている状態だ。まぁ、小部屋を開けたし、カザリア帝国の遺跡側からも扉が開くようにはなったんだけど……あれっ? かなり調査が進んでいるような? なら、来た意味もあるのかな?

もしかしたら、動力源の解明もしてくれるかもね! なんて呑気な事を考えながら、お茶を飲んでいたけど、あの迷惑男を舐めていたよ。

「伯爵夫人、使いの者が来ていますが……」

執事が申し訳なさそうにサロンへやってきた。

「まぁ、何かしら? 通して下さい」

そこにはノースコート伯爵家の護衛が大きな身体を小さくして立っていた。この人は、前に動力源を調査する時に私の馬の手綱を引いてくれた護衛だ。

「あのう、ゲイツ様が是非ペイシェンス様に来て欲しいと言われているのです」

手紙を書くことすらなく、私を呼びつけるつもりなんだね。

「それは……困りましたわね」

リリアナ伯母様も困惑しているよ。

「今日は地下通路をカザリア帝国の遺跡まで歩きましたから、もう疲れています。それに私は乗馬が苦手なので……」

アンジェラの真似をして最後までは言わないけど、嫌だと伝える。

「ペイシェンスは疲れたと言っています。そう、ゲイツ様にお伝え下さい」

これで話は終わりだろうと思ったけれど、護衛は言い難そうに、また話し出した。

「あのう、弟君達も来て欲しいと言っておられると伝えるようにと……」

護衛も令嬢に無理強いするのが嫌みたい。それに、滅茶苦茶腹が立ってきた。私の弟への愛を利用するなんて、許せない!

「そうですか? ナシウスとヘンリーが来て欲しいと望んでいるなら、行かなくてはいけませんね」

リリアナ伯母様とアンジェラが驚いている。髪の毛が逆立っているのかな? 手で押さえておこう。ライオン丸はベンジャミンだけで良いからね。

「ペイシェンス様、私が行きましょうか?」

アンジェラ、良い子だね。

「アンジェラの方が乗馬は上手いわ」

二人が引き留めているのって、ゲイツ様と喧嘩しそうだと心配してくれているのかな?

「アンジェラ、ありがとう。でも、あの動力源について私の意見を聞きたいから、ゲイツ様が呼んでおられるのでしょう」

ガイウスの丘までは馬車で行く。そこからは護衛に馬の手綱を持って貰って急な斜面を上る。

私の苛々が馬に伝わるのか、普段は大人しくて賢いのに、ブルンブルンと顔を縦に振るので手綱を持った護衛の人もやりにくそうだ。

「大人しくしなさい!」

馬を落ち着かせるよ。こんな斜面で落馬したくないからね。

なんとか動力源の場所まで着いた。皆の視線が突き刺さるけど、私は無視だよ。護衛の人に抱き下ろして貰ったら、先ずは弟達と話さなきゃ。

「ナシウス、ヘンリー? 私を呼んだのは何故かしら?」

ナシウスが灰色の目を伏せる。ヘンリーは、ぽかんとしている。どうやら二人が私を呼んだ訳では無さそうだ。

「ペイシェンス様、やっと来てくれましたね!」

ナシウスはゲイツが自分達を利用して私を呼び出したのを知っていたのだろう。それを止められなかったのを恥じている。

「ナシウス、貴方は悪くないわ。だから、大丈夫ですからね」

そっと抱き寄せて、頬にキスをする。でも、ゲイツ様は許せないよ。ナシウスにこんな顔をさせるなんてね!

「先程の使いは、私を弟達が呼んでいると言いましたけど、二人は呼んでいないみたいです。用が無いのなら帰りますわ」

私がここに来たのは、弟達が私を呼んでいると聞いたからだ。まぁ、それは半分以上嘘だと分かっていたけどね。

「いや、ペイシェンス様! 折角、来られたのだから動力源について一緒に考えましょう」

ゲイツ様が何か言っているけど、相手にしたくない。

「ナシウス、ヘンリー? 一緒に帰りますか?」

ゲイツ様を無視する私に全員からの圧を受けるけど、そんなの跳ね返すよ。

「いえ、お姉様、私達はサミュエルと一緒に帰ります。あのう、ゲイツ様が話しかけておられますけど、良いのでしょうか?」

ナシウスじゃなければ「わざと無視しているのよ!」って怒鳴っていたかも。でも、私は弟達の前では良いお姉様でいたい。これは元ペイシェンスから託された使命だと思っているんだ。

「ゲイツ様、弟達を使って私を呼び出されたのですね。二度となさらないで下さい」

ビシッと駄目な事は言わないと分からないタイプだ。

「そんなに怒られなくても良いではないですか。それに、ナシウス君もヘンリー君もこの動力源についてペイシェンス様と話したいと思っていた筈です」

反省の色もないゲイツ様に呆れるよ。

「ナシウス君の考えは、きっとペイシェンス様から聞いた事が元になっているのでしょう」

えっ、ナシウスの考え? ツンと無視していたけど、弟の考えは知りたい。

「ナシウス、何を考えついたの?」

ゲイツ様とは話したくないけど、ナシウスとは話すよ。

「お姉様が話されていた事をずっと考えていたのです。あの人工岩がどうやって太陽光からエネルギーを得て、それを線で送って、あの人工魔石に溜めているのか? 私達が魔法を使うのと同じではないかと思ったのです」

魔法を使うのと同じ? ナシウス、少し分かりにくいよ。でも、お姉ちゃん、全力で理解するからね。

この異世界では魔法が使える。私も生活魔法を毎日使っているけど、その魔法は何処からエネルギーを得ているのか? あの薄っぺらい魔法学の教科書では、全てエステナ神からの授かり物とされていたんだよね。

「ペイシェンス様、魔法は空気中に存在する魔素を身体に蓄えて、それを使って発動させているのですよ」

えっ、初耳なんだけど!

「魔法学では、そんな事は習いませんでしたわ」

ゲイツ様は肩を竦める。

「王立学園の魔法学は、エステナ教会のテキストですからね。魔法は全てエステナ神が授けてくれたという教本です。でも、エステナ教が発生する前から魔法使いは存在していたので理屈に合いません。ペイシェンス様、貴女は魔法学科で学ぶべきなのです」

あっ、カエサルがゲイツ様が動くとエステナ教会も動くから厄介だと言っていたのは、こんな考え方を大っぴらに言っているからなんだね。要注意人物指定だ!

「ナシウスは、ゲイツ様からこの話を聞いて、動力源について考えたのね。偉いわ!」

マジ天才だよ!

「ナシウスの考えでは、太陽光を魔素と考え、人工岩を身体、そして魔法の発動が動力になるのね! とても素晴らしい考え方だわ」

私がナシウスを抱きしめて褒めているのに、横で「私がナシウス君に教えたのを展開させたのです」とか煩い人がいるよ。

「では、この人工岩で太陽光から魔素を得ているのですか?」

あれっ、グースも魔素で魔法を使っていると知っているみたい。もしかして、王立学園は教会のテキストだけど、ロマノ大学は違うの?

「ペイシェンス、これは他所では話してはいけない。サミュエルもナシウスもヘンリーも気をつけなさい」

ノースコート伯爵が真面目な顔で注意した。

「ゲイツ様、グース教授、子供に聞かせる話ではありません。ロマノ大学で、そういう研究をしているのを教会から非難されているのですからね」

魔法と科学は違うけど、前世でも教会の教えと違う研究は迫害されたりしたよね。でも、私は本当の事が知りたいよ!