軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生活魔法の使い手?

ちょっとブチ切れてしまったのは反省しなくちゃいけないけど、あれから二人の教授に付き纏われなくなった。

まぁ、ど素人の女の子の意見なんて、大学の教授にしたら馬鹿馬鹿しいと思ったのだろう。清々したよ!

「明日には生活魔法の使い手も着くと聞きました。週末の夏の離宮行きが終わったら、サティスフォードに帰らなくてはいけませんわ」

アンジェラと仲良くなったので、帰ってしまうのが寂しい。

「夏休み中にサティスフォードに遊びに行きますわ! アンジェラの弟達にも会いたいし、バザールも見学したいです」

「エイムズはやっと6歳になったばかりですし、ジェイミーとアランは赤ちゃんですよ。まだ一緒に遊べませんわ」

アンジェラは、弟達はまだ幼児と赤ちゃんなのにと変な顔をした。異世界のこの習慣だけは理解できないよ。可愛い盛りじゃん! あっ、でも子守がいるからあまり会えないのかもね。エイムズだけでも会いたいな!

「ペイシェンス様は、弟君達を可愛がっていらっしゃるのですね」

うん、貧乏なグレンジャー家には子守がいなかったからね。元ペイシェンスも弟達の面倒をみていたんだ。

「ええ、一緒に子供部屋で過ごしましたからね」

アンジェラも10歳になるまでは子供部屋で一緒に過ごしたと思うのだけど、違うのかな?

「私も子供部屋にいる時もありましたが、勉強する時は別の部屋でしたわ。だって弟達が騒ぐから勉強になりませんもの」

アンジェラが9歳の頃は、エイムズは5歳、下の二人は幼児と赤ちゃんだ。まぁ、勉強する時は別の部屋の方が落ち着くかもね。

「今は、私の勉強部屋がありますの。ペイシェンス様がいらっしゃったら、一緒に刺繍をしたり、ハノンを弾きましょう! それにお茶をしたいですわ」

アンジェラは女子力が高いんだよね。二人でお茶会をしたら、また恋バナになるよ。まぁ、マーガレット王女と違って、アンジェラの恋バナも聞けるし、役に立つテクニックも手に入るし、楽しいから良いんだけどね。

「楽しそうですわ!」

なんて話していたけど、王都から来た生活魔法の使い手は、私達の考えているような人では無かった。

「王都から馬車が着くぞ!」

午前中なので、子供部屋で勉強していたら、階下が騒がしい。

「どうやら、生活魔法使いが着いたようだな。出迎えなきゃいけないだろう」

サミュエルは、ノースコート伯爵家の嫡男としての自覚がついてきたね。

「どんな方でしょうか? ある程度の魔力が必要だと聞きましたから、貴族の令嬢かしら?」

アンジェラも興味があるみたい。

「貴族の令嬢なら、私達と同じだわ。もっと大人の方では無いかしら? そうだわ、こっそりと後ろから見ましょう」

前に調査隊が到着したのを子供部屋から見下ろしていたのをリリアナ伯母様に視線で咎められたので、今回は出迎える人々の後ろから見ることにする。

そう、私達も玄関に出迎えることにしたのだ。だって、ずっと生活魔法の使い手を待っていたからね。

馬車には魔法省の役人も同行していて、先に降りると、手を差し伸べて一人目が出てきた。

「こちらは、ルミナス・ハートリッジ様です」

かなり高齢なご婦人だけど、大丈夫なのかな? 金髪というより白髪が多いし、少しふくよかだ。この方が格納庫まで歩けるのかな? まして、カザリア帝国の遺跡まで往復するなんて、どう見ても無理だ。

もう一人は魔法使いのマントを頭からすっぽり被っている。夏なのに、変な人だね。グースでさえ、マントの頭巾は被っていない。

「貴方様は! 書類では、違う人なのですが!」

役人は、頭巾の隙間から顔が見えたのか驚いて真っ青になった。何か手違いがあったのかな?

「こちらは、どなたですか? 何故、貴方様がここにいらっしゃるのですか!」

グースが切れたよ。そしてヴォルフガングもね!

「ゲイツ様、私達は生活魔法の使い手を派遣して欲しいと申請したのです。王宮魔法師の貴方様が来られても困ります」

馬車から降りたゲイツは、マントの頭巾を指先で後ろに跳ね除けた。王宮魔法師とは思えない若い人だね。もっと長い白髭とかのお爺さんのイメージだったよ。プラチナブロンドの長髪と、青銀色の瞳。背もそこそこ高いし、しなやかな動き方を見ても、身体を鍛えていそう。

「私は生活魔法も使えるから、条件に合っているだろう。それに、こんな面白そうな事が起こっているのに、私だけ仲間外れにするつもりかい?」

わぁ、これは曲者だね。和やかな口調だけど、グースもヴォルフガングも掌で転がされているよ。

「しかし、扉の開閉の為に生活魔法使いが必要なのです。貴方様が長期間、王都を留守にされるのは……」

青銀色の目で睨まれて、グースは口を閉じた。うん、このゲイツ様は逆らわれる事に慣れていないみたい。私の苦手なタイプだ。逃げよう!

私は、アンジェラの手を取って、後ろへとそろそろと撤退を開始した。

ノースコート伯爵夫妻とサミュエルが出迎えの挨拶をしているけど、玄関に入ってからは、2階の子供部屋まで駆け上がっちゃったよ。

「ペイシェンス様、あの方は王宮魔法師なのですか? 若い方でしたわね。とてもハンサムなお方で驚きましたわ。それにもう一方のハートリッジ様は大丈夫なのでしょうか?」

まだガイアスの丘の入口に待機するならまだしも、格納庫やカザリア帝国の遺跡までは歩けるとは思えない。それにしても、アンジェラ、男の人の趣味が悪いんじゃないの? ハンサムというより性格が悪そうに見えたよ。

「きっと、もう一人、別の方が派遣されると思いますわ。あの役人が書類には別の名前が書いてあったと言っていましたもの。王宮魔法師のゲイツ様は、きっと遺跡の地下通路を見たくていらしたのよ」

アンジェラが呆れた風に呟く。

「まぁ、変わっていらっしゃるのですね」

うっ、その言葉は私の胸にも突き刺さるよ。

「その方が、ハートリッジ様より若かったら宜しいのですが。あの方に地下通路を行き来させるのは気の毒ですわ」

そうなんだよね。私も体力が無いから、疲れちゃったもの。

お昼は、ハートリッジ様とゲイツ様も勿論一緒だろうな。ハートリッジ様は良いんだよ。体力面は心配だけど、穏やかそうなご婦人だからね。でも、あのゲイツ様は苦手だ。ナシウスの灰色の目は可愛いと感じるのだけど、ゲイツ様の銀色に光る目は強すぎるんだよね。まるで全てを見透かしているみたい。

「今日は、ヘンリー様は子供部屋でお昼も食べるようにと伯爵夫人が言われました」

メアリーが告げに来た。調査隊が来てからも、ヘンリーは朝とお昼は一緒に食べていたんだよ。まぁ、陛下が来られた時は別だったけどね。これって王宮魔法師のゲイツ様が来たからだよね。他の生活魔法使いだったら、こんな措置は取らなくて良かったのだ。余計に嫌いになっちゃった。

「ヘンリーが一人では可哀想だわ。今日は気分も優れないから、私も子供部屋で食べます。メアリー、二人分運んできてね」

メアリーは、一瞬変な顔をしたけど、気分が優れないと言ったから、了解したよ。仮病のズル休みだと分かったかもね。

「ナシウスとアンジェラは食堂で食べていらっしゃい。私は連日の騒動で疲れ気味ですから、ここでヘンリーとゆっくりと頂きますわ」

ナシウスは言葉通りに受け取ったみたいだけど、アンジェラは私がゲイツ様を避けたのに気づいたみたい。勘の良い子だからね。

「ええ、伯母様にはそう伝えておきますわ」

リリアナ伯母様は、アンジェラの大叔母様になるのだけど、年寄りくさく聞こえるのを嫌がるので、伯母様と呼んでいる。これは前世と同じだね。私も叔母さんなんて、甥っ子や姪っ子に呼ばせなかったよ。

「お姉様、ご気分が悪いのですか?」

ヘンリーに心配させちゃったけど、今日は此処で食べたい気分なんだ。

「いいえ、少し疲れただけですよ。それに、ヘンリーと一緒に食べたかったの」

ヘンリーがにっこりと笑う。わぁ、マジ天使! 疲れも吹っ飛ぶよ!

メアリーが二人分の昼食を運んで来てくれた。

「ふふふ、お姉様と二人で食べるなんて初めてですね!」

そうかもしれないな。今日はヘンリーと一緒にゆっくりと昼食を楽しむよ。