軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

調査開始!

ガリガリに細いヴォルフガングだけど、昼食はしっかり食べていたからホッとしたよ。それに、昼食なんかより調査したいと言っていたグースも完食していた。海の幸は美味しいものね!

サイモンも完食していたよ。何とはなく気になるから、チラ見しちゃう。でも、彼方は素知らぬ顔だから、こっちも話しかけたりしないけどね。それにナシウスやヘンリーを見ても無視だから、感じ悪いよ。年上なんだから配慮して欲しい。

まだ弟達は、サイモンが従兄弟だとは知らない。知らないままなら良いけど、いずれは分かる。何と説明したら良いのかな? 真実を伝えるしか無いのか? なんて事を考えていたので、話しかけられているのに気づくのがワンテンポ遅れたよ。

「それで、今日はペイシェンス嬢が格納庫の天井を開けてくれるのですか?」

グースはデザートよりも調査に気持ちが飛んでいるね。

「ええ」と簡単に答える。私を無視しているサイモンの前で口を開きたく無い気分なんだ。

「ペイシェンスより、アンジェラの方が体力があるから、反対にしたらどうだ?」

ベンジャミン、教授達の前でも言いたい放題だね。私もそうして欲しい。格納庫まで歩くの大変だからね。

「私は……」

でも、アンジェラは地下通路の中には怖いから入りたく無いみたい。はっきりとは拒否しないけど、全員が意図は理解したよ。こういうテクニック、上手い女子が前世にもいたね。真似しなきゃ!

「そうか、ならペイシェンスに頼むしかないか……背負い籠を用意して貰おうかな」

ベンジャミン、それは流石に酷いよ! 歩くの遅いけどさぁ。

「ペイシェンス様は身体が弱いのか?」

いきなりサイモンが口を開いたよ。

「いいえ」と否定しておく。

「いや、ペイシェンスはかなり体力が無い。だから、背負籠を提案したのだ」

ベンジャミン、余計な事を言わないで、サイモンの眉間に皺が寄っているじゃん。

「叔母上に似た体質なら、入口に待機していた方が良いのでは無いか?」

あっ、母親は身体が弱かったからね。もしかして心配してくれているの?

「うん? サイモン様はペイシェンスの親戚なのか?」

ノースコート伯爵もハッとしたようだ。伯母様も今気づいたみたい。

「ユリアンヌ様のご実家はケープコット伯爵家でしたわね」

ナシウスとヘンリーの目がまん丸だよ。父方の親戚とは何人も顔を合わせているけど、母方とは絶縁しているから誰も知らないからね。でも、二人はマナーを守って口は開かなかった。

「格納庫までぐらいなら平気ですわ」

これで話は終了だよ。サイモン以外は納得しているし。それにグースは、一刻でも早く調査を開始したいみたいなので、助手のサイモンもそれに従う。

大学の助手って事は、何歳ぐらいなのかな? ロマノ大学について何も知らないよ。四年で卒業なのかも分からないけど、助手ってことは20歳以上の可能性が高いね。って事は、母親が亡くなった頃は、サイモンは16、7歳ぐらい? ロマノ大学生だったのかな? でも、亡くなる二年前から絶縁中だったので会っていないかも?

ナシウスとヘンリーの、サイモンは親戚なの? という質問する目に答えてあげたいけど、調査隊に付いて行かないといけない。

「後で話しましょう」と素早く弟達に囁いて、アンジェラと一緒に馬車に乗る。

アンジェラが聞きたそうにしているけど、サイモンについては保留だね。一応は心配してくれたのかな? でも、よく分からないから決められない。

アンジェラ一人で入口で待つのは退屈だろうからと、母親のラシーヌも一緒だ。テントも張ってあるし、椅子やテーブルもお茶の用意もあるから、大丈夫そうだね。

「アンジェラ、開けてくれ」

今日はノースコート伯爵も調査隊に同行するよ。

「開け!」アンジェラが棒で凹みを押すと、ゴゴゴゴゴ……と岩が二つに割れて入口が開いた。

「おお! 凄いぞ!」

グースが吠えている。

「カザリア帝国が滅びて千年以上も経つのに、まだ開閉システムが生きているとは! 私達の足元にこんな遺跡があるのに発掘調査もしていないとは!」

ヴォルフガングは地面に膝をついて、凹みを調べようとしている。

「先に進むぞ。開閉システムの仕組みも調査したいが、先ずは地下通路にある格納庫を見たい! そして、空を飛ぶ魔導船の壁画も見なくてはいけないのだ」

慎重に一から調べたい歴史学者のヴォルフガングは、先走るグースに苛ついた顔をしたが、やはり空飛ぶ魔導船の誘惑には勝てなかった。

「そうだな。今日は、全体的に観察しよう」

調査隊が地下通路に降りるので、私も同行する。メアリーも付いて来るよ。ミアはアンジェラと外で待っているのだから、一緒に居れば良いのにね。

そう言えば、メアリーはケープコット伯爵家から母親に付いて、グレンジャー家に来たんだよね。サイモンについて何か知っているかな? 後で聞いてみよう!

「ペイシェンス嬢、お手をどうぞ」

今日は、正式な調査隊が来ているから、サミュエルと弟達は館だ。なので、ブライスが足元を魔導灯で照らしてくれ、フィリップスがエスコートしてくれる。

カエサル達は、先頭で案内しているよ。写しを作るのに協力したご褒美に、調査隊に参加させて貰えるから張り切っている。

「この灯は、魔石を動力源にしていないな。私達が知らないシステムで照らしているのだ!」

グースの大声が地下通路に響いている。かなり先まで行っているみたいだけど、私はこれで最高速度だよ。

「ペイシェンス、急がなくても良い。格納庫に着いたら、調べる事がいっぱいあるからな」

ブライスに言われて、少しスローペースに戻す。早足は疲れるからね。

「それにしても、あの二人の教授が喧嘩をされなければ良いのですが……」

ヴォルフガングに助手に任命されたフィリップスが入り口でのいざこざを心配している。どうもグースが主導権を取ろうとしているのが、あの一件でもあからさまだからだ。

「それより、生活魔法の使い手がいつ到着するのかが問題だ。毎日、ペイシェンスとアンジェラに開閉係をさせるわけにもいかない」

ブライス、それは私達が開閉係に縛りつけられるのを心配してくれているの? それとも、毎日調査したいけど、私達の都合に合わせないといけないのを心配しているの?

「ヴォルフガング教授は、古文書の研究もされるだろう。それと、ノースコートの遺跡も調査しなくてはいけないから、毎日地下通路ばかりではないだろう」

フィリップスの言葉に、ブライスは頷く。

「それは、グース教授も同じだが……あの写しを見たら、大騒ぎになりそうだ。ペイシェンスを囲い込もうとする争いが勃発するぞ」

二人の視線が私に向かう。

「なら、古文書だけを見せたら良いのでは? 写しは、ノースコート伯爵とカエサル様と陛下に頼まれて作った物ですもの」

二人が同時に叫ぶ。

「そんな訳いくか!」

ブライスもフィリップスも普段は大声を出したりしないのにね。

「大きな声を出して申し訳ありません。古文書の保存状態だけでも、ヴォルフガング教授はペイシェンス嬢を確保したいと考えられるでしょう。あの古文書はなるべく触らずに保存しておきたいです。写しが無いと、古文書を二人の教授が取り合って血を見そうで怖いです」

確かに、古文書を取り合う二人が目に浮かぶよ。グースの助手のサイモンも参戦するのかな? 私は錬金術クラブだから、本来はグースの方に近い立場なのだけど、サイモンがいるから微妙だね。近寄りたくないんだもん。

「ペイシェンス、本当に気をつけないといけない。ここはノースコート伯爵領だから、姪に変な真似はしないだろうけど、王都に帰ったら十分に注意しないとな」

それって、どちらの教授に気をつけなくちゃいけないの? なんて考えているのが分かったみたい。

「どちらもです!」

「どちらもだ!」

二人に注意されちゃったよ。

「この件もあるから、陛下はペイシェンスを 女準男爵(バロネテス) にされたのだろう。王家の保護下にあると示されたのだ」

準男爵って下級貴族だよね? それって教授が配慮してくれる地位なのかな?

「ペイシェンス嬢、陛下が自ら若い令嬢を 女準男爵(バロネテス) に叙されるのは珍しい事です。その意味を理解しない貴族はいない筈ですが、何事にも例外があります。だからご注意して下さいと言っているのです」

あっ、そんなに脅したらメアリーが屋敷の外に出してくれなくなるよ。真一文字の口になって頷いている。

格納庫に着いたら、調査隊を壁際に行かせて、天井を開けたよ。

「おお、素晴らしい! 空飛ぶ魔導船があったのだ!」

グースは飛び上がって大興奮しているが、ヴォルフガングはジッと喜びを噛み締めている。この二人を調査隊に選んだのって、失敗なんじゃ無いの? 性格が真反対に感じるよ。

「この先の地下通路を調査しよう!」

グースが主張したけど、ヴォルフガングが反対する。

「上の遺跡を調査するのが先です。執政官の館跡の方の入口は壊れていると書いてありましたよ」

グースが「ふふん」と鼻で笑った。

「ヴォルフガング教授の情報は古いですな。地下通路からも開けられるのです。その上、地上からは現れなかった階段が壁から出て来るのですよ!」

自分が知らない情報を何処で得たのかとヴォルフガングは怒りを拳にグッと握り込んだ。きっと錬金術クラブのメンバーから聞いたのだろう。前もって知っていた訳では無さそうだ。

「さぁ、先に進みましょう!」

やれやれ、カザリア帝国の遺跡まで歩かないといけないみたい。こうなったら、ウォーキングで体力強化だと思おう。

調査隊の不協和音は、初日から響き渡っている。早く、生活魔法の使い手が来ることを願うよ。