軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

今日はお休み!

明日は陛下が来られるので、館は大掃除だ。いや、リリアナ伯母様の名誉の為に言うけど、いつも綺麗にしてあるよ。でも、やはり特別みたいだね。

カエサル達は扉の開閉システムや魔法灯について調べたいみたいで、私かアンジェラに開けて貰いたいと申し出たけど、ノースコート伯爵はアルフレッド国王陛下が来られるまでは、これ以上の調査は中止したいと言われたので却下だ。

「ナシウス、ヘンリー、サミュエル、ここ数日は地下通路の探索で勉強をする暇がありませんでしたね。今日は午前中はアンジェラも一緒に勉強しましょう!」

サミュエルが少しだけ不満そうな顔をしたが「一緒に勉強しましょう!」とナシウスに言われると笑顔で頷いた。そうだよ、ナシウスに置いていかれない様に頑張らないとね!

「ペイシェンス様、分数がわかる様になりましたわ。でも、計算はまだもう少し教えて頂きたいのです」

アンジェラとヘンリーを一緒に教えながら、私は世界史の年号を覚える。

私達は、子供部屋でお勉強会だけど、カエサル達は一部屋に籠って古文書を読み耽っているみたい。

「なぁ、午後からは海水浴に行かないか?」

サミュエルは、かなりナシウスに厳しく勉強させられたみたい。それに、夏休みなんだから、遊びたいよね。

「ええ、このところ遺跡の調査ばかりでしたもの。海水浴でリラックスするのは良いと思うわ。そうだ、あの人達も誘いましょう!」

ナシウスが微妙な顔をする。

「フィリップス様を古文書から引き離せるとは思えませんが……でも、偶には身体を動かす方が健康的ですよね! 私からも誘ってみます」

そうだよね。カエサル達も古文書を夜遅くまで読んでいるみたいだ。朝食にヨレヨレの状態で現れた錬金術クラブメンバーに、リリアナ伯母様の片眉が少し上がったもの。

「そうね、少しは身体を動かさないと、椅子に根が生えそうだわ」

こんな時は、リリアナ伯母様を味方に引き入れるに限る。

「カエサル様達は、夜遅くまで古文書を読み耽っておられるのですが、このままでは健康を害されるのではと心配ですわ」

リリアナ伯母様も朝食に現れたメンバーの様子を見て心配していたみたい。

「それはいけませんわ。お預かりしている御子息達の健康管理は私の責任ですもの」

そりゃ、バーンズ公爵家やプリースト侯爵家やミラー侯爵家の御子息だもんね。勿論、伯爵家の御子息達も心配だろうけど、格上の家への配慮は欠かせない。

「昼から私達は海水浴に行く予定ですの。少し外の空気を吸った方が良いですわ。地下通路の空気は埃とカビで汚染されていましたもの」

私が浄化する前は臭かったよ。

「そうですわね。エリオット様に話しておきますわ」

夫人から言うより、伯爵から言った方が良いと判断したみたい。それに、未だカエサル達は遺跡の調査を続けたいから、伯爵のご機嫌を取る方向で動くだろう。

昼食で、ノースコート伯爵から「少しは身体を動かさないといけませんな」と言われたカエサル達は、渋々、古文書から離れて海水浴に参加する事になった。

海で白鳥のフロートに乗ってぷかぷか浮かぶ。隣にはアンジェラがお花のフロートに乗って浮かんでいる。そして、何故か天馬のフロートにベンジャミンが乗ってぷかぷかしている。

「こんなに苦労するなら、古典をもっと勉強しておくべきだった」

空を見上げてやさぐれているよ。そう言えば、ベンジャミンは古典が苦手だったね。

「アンジェラは、明後日には帰るの?」

今回はサティスフォード子爵夫妻も陛下が来られるから残っている。

「ええ、こちらの方が楽しいのですが、やはり帰らないといけないみたいです」

アンジェラの弟達に会いたいな。

「そう言えば、サティスフォードにも招待されていたのだわ。遺跡の調査が長引いてしまって、行けるかどうかわからないけれど……行きたいわ!」

アンジェラが苦笑する。

「ペイシェンス様は扉の開閉を任されていますからね。私でも開ける事はできますが……サティスフォードのバザールを一緒に見学したいですし、できる人が見つかると良いのですが……」

そうなんだよね。ノースコート伯爵も私やアンジェラを扉の開閉係に縛り付けるのは良くないと考えて、王都ロマノで探してはいるみたいだけど、魔力がかなり必要だから難航している。

「明日は、アンジェラに外で待機して貰うと言われていたわ。私は、格納庫の天井を開けるから、中に入るの。アンジェラも一度ぐらいは中に入ってみたら?」

私は、自分が外で待っているだけの時に、中はどんな風なのだろうと想像していたから、厚意から誘ったのだ。

「いいえ、私は結構ですわ。勿論、ペイシェンス様が扉を開けて下さっているのは承知していますけど、万が一、扉が壊れて開かなくなったらと思うと怖くて……」

ベンジャミンが横で聞いていて爆笑する。

「ペイシェンス、それが普通の令嬢の反応だ。社交界デビューしたら、猫の皮の被り方をアンジェラに教えて貰え!」

酷いよね! その変人の巣窟の錬金術クラブに勧誘激しかったくせにさ。

「いいえ、ペイシェンス様はとても素晴らしい令嬢ですわ。お勉強もおできになるし、ハノンは天才級ですし、縫い物や染色、そして刺繍も見事ですもの」

アンジェラも錬金術クラブのメンバーに馴染んできて、ライオン丸にも言い返している。それにしても、アンジェラの私への評価が高くてくすぐったいよ。

「アンジェラは良い子だな」

ベンジャミンが人を褒めるのって珍しいよ。何だか、自分が褒められたみたいに嬉しい。

「ええ、アンジェラはとっても良い子なのよ!」

アンジェラは褒められて真っ赤になって、花のフロートから海に飛び込んでしまった。

「それに、ナシウスとヘンリーも、それぞれ方向性は違うが素晴らしい才能に恵まれている。グレンジャー家は学問の家系だとは聞いていたが、やはり幼い頃の教育は重要だと思った」

私は弟達を褒められると弱い。

「ええ、ナシウスもヘンリーも素晴らしい弟ですわ!」

ここまでは良い雰囲気だったんだよ。

「さっき、アンジェラが刺繍について話していたが、マギウスのマントの刺繍はどうなっているのだ?」

マギウスのマントの話をすると、カエサルが筏のフロートを手でかきながら近づいてきた。地獄耳なんじゃない? 男の子達がボディボードで騒いでいて、結構、うるさいのにさぁ。まぁ、私の耳には天使のはしゃぐ声に聞こえるけどね。

「そうだ! 遺跡の調査で、後回しになっていたが、マギウスのマントを忘れていないか!」

凄い圧を感じるよ!

「地下通路の外で待機していた時、世界史の年号を覚えるのに疲れたので、少し考えていましたの。タランチュラの糸を染めるのに魔力を使ってみようかなと」

カエサルは、染める事は重要視していない。

「白っぽい透明な糸ではいけないのか?」

分かっていないな。白なら良いんだよ。守護魔法陣が目立つけど、伯父様に聞いたら、目立つ色で家紋を刺繍している第一騎士団の騎士もいると言うからね。

「折角、マギウスのマントを作るなら、見栄えも素晴らしくしたいですわ。私は守護魔法陣を目立たせたくないので、赤に染めたいのです。でも、反対に目立たせたいなら黒とかも格好いいですよね」

隣で聞いていたベンジャミンも私に賛成する。

「そうだな! 金糸とかも豪華で良いぞ!」

それは……私的には駄目だけど、万が一、王家に献上するなら有りかもね?

「近衛隊は白いマントだし、王家は紫のマントだ。いちいち色を変えるのは面倒だから、黒にすれば良いのではないか?」

カエサルは、早く効率的にマギウスのマントを作る方法を考えているみたい。

「銀とかは?」

ベンジャミンは派手好みだね。でも、金糸は嫌だけど、銀糸ならギリギリ良いかも。

「銀糸は、金糸と同じ作り方の筈だわ。薄く伸ばした銀を糸に膠か何かでくっつけるのよ! ねぇ、赤いマントに銀糸の刺繍は駄目かしら?」

カエサルったら、興奮して立ち上がろうとするから筏のフロートから落ちた。海水がこちらにも飛んできたよ。

「ペイシェンス、それだ! タランチュラの糸も魔力を通すだろうが、銀は魔力を通し易い! タランチュラの糸に銀でコーティングすれば、魔力の通りが良くなり、守護魔法陣が強化できるぞ!」

そんな事を叫ぶから、ボディボードしていたアーサーやブライスやミハイルまでやってきたよ。

「マギウスのマントができそうなのか?」

アーサーって、冷静キャラだと思っていたけど、やはり錬金術クラブメンバーだよ。

「これから実験しましょう!」

ブライスも錬金術クラブにハマっているね。

「そんな物も作っているとは! マギウスのマントは子供の頃からの憧れなんです」

機械好きなミハイルまで! あれっ、知らなかったみたいだけど? あの時、アーサーとミハイルは来ていなかったのかな?

歴史愛の深いフィリップスは、マギウスのマントも勿論知っている。

「実現できたら、一度で良いから見せて下さい。お願いします」

欲しいと言わないのがフィリップスだよ。

「兎に角、今日はお休みですわ。皆様も海水浴を楽しんで下さいね」

わぁ、ベンジャミンが髪の毛を掻きむしっているよ。

「ご馳走を目の前にして、また手足を縛られるのか!」

ベンジャミンは、騒ぐ前に、古典の勉強をしなくてはね!

今日はお休みなの! 海でぷかぷかしながら、愛しい弟達がボディボードで遊ぶ声を聞きながら、夏の空をぼんやり眺めるんだ!