軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王立学園に入寮するよ

ワイヤットがどんな高値で修復した骨董品を売ったのか知らないが、エバが市場に働きに行かなくてよくなった。それに肉を普通に購入できるようになり、温室で野菜や豆の収穫ができ、食事事情は改善された。

とはいえ、質素なのはそのままだけど。スープには具もいっぱい入り、味も付いている。パンもやや柔らかくなり、厚みも増した。ハムの他に肉の焼いたのが出てくる日も増えた。それに野菜は自前なので蒸したり、ソテーしたのが付け合わせに出る。

「これなら飢えることは無さそう」

安心して寮に入れそうだ。まだ馬を飼うほどの余裕は無いので、週末のレンタルだけだ。でも、お姉ちゃん、週末には帰ってくるからね! 父親との別れはあっさりと済ませたが、弟達との別れは涙なしにはすまされなかった。

「お姉様、お元気で」ナシウス、そんなに遠くに行くわけじゃないのに……泣いちゃうよ。

「お姉様、本当に週末は帰って来てくれるの?」……ヘンリー、もちろんだよ。槍が降っても帰ってくるよ。

「二人とも元気に過ごすのよ」

涙を拭き拭き、馬車に乗る。勿論、メアリーも一緒だ。この侍女システム、凄く不便だ。学園から出て、ちょこっと下町とか行ってみたいんだけど、無理かなぁ? 何か内職以外にもお金を儲ける手段が見つかるかもしれないのに。

ガラガラと馬車は貴族街を走る。このお屋敷の何処かに私が着ている王立学園の制服をくれた親戚とかもあるのだろう。免職中のグレンジャー子爵家には誰も近づかない。これからの学園生活、凄く不安。大人しくしておこう。なんて考えているうちに、王宮が見えて来た。

「まぁ、大きいのね」ペイシェンス変換で良かった。『デッカい!』ではメアリーに驚かれちゃう。

父親はここに勤めていたわけだ。何をしくじって免職されたんだろう。今度、ワイヤットにまた壊れた骨董品の修復を頼まれた時、こそっと聞いてみよう。でも、手強そうだよね。

王宮は広すぎた。王立学園が手前にあったら、毎日歩いて通えたかもしれないけど、王宮越えがしんどそうだ。

「あちらが王立学園ですよ」

メアリーに言われて、第二の王宮かと驚く。まぁ、王宮よりは小さいんだけど、私の学校のイメージよりかなり大きい。迷いそうだけど、大丈夫かな?

門や前庭が広くないといけないのはすぐ分かった。そう、馬車が渋滞していたのだ。

「今日は入寮する生徒だけの筈でしょ? 荷物を降ろすのに手間取っているのかしら?」

そう、通いなら明日の入学式からで良かったのだ。弟達との1日を返して欲しい。貧乏って嫌だよね。

「地方の貴族で、ロマノに屋敷を構えて無い方は入寮されますから」

ふうん、つまり地方貴族でも裕福な生徒は寮にいないんだね。つまり、寮は貧乏な学生だけ? なら、少しは過ごしやすいかもなんて考えていたけど、馬車が進むにつれて、何だか騒ぎから不穏な感じを受ける。

「何だか皆凄い荷物を持ってきているのね」

馬車から降ろされる荷物が尋常じゃない。ベッドとかテーブルとか引っ越しだよ。私なんか衣装櫃一つと、学用品を入れた木箱一つだよ。コンパクトに纏めてみました! じゃなくて、他にないんだよ。貧乏って嫌! でも、学園内は制服着用だし、そんなに荷物がいるとは思えないんだけど?

「あれは……もしかして……」

メアリー、一人で納得しないでよぉ。馬車を見て「どうしましょう! どうしましょう!」と興奮している。

『えらく立派な馬車ばかりなんだけど、これなら通えるんじゃ無いの?』

貧乏貴族の寮生活に金持ちが乱入するなんて迷惑だ。それにこの渋滞は、多過ぎる荷物のせいじゃん。ぷんすか腹を立てていたが、メアリーに手をむんずと掴まれた。

「お嬢様、どうか行儀良くして下さいね。王子様や王女様が寮に入られるなんて、信じられませんわ。だから、名門の方々も入寮されるのですね」

ええっ、面倒くさい。なんで、そんなお偉い人が寮に入るの? まっ、でも取り巻きの貴族も入寮するみたいだから、私には関係ないよね。

ペイシェンスの記憶をググる。ええっと、ローレンス王国のアルフレッド王には、15歳のリチャード王子、12歳のマーガレット王女、10歳のキース王子、8歳のジェーン王女、6歳のマーカス王子がいるのが分かった。王妃のビクトリア様、頑張ったなぁ。どうやら側室はいなそうなので、ほぼ2年ごとに5人も産んでいるのだ。パチパチ! よっ、大家族のビッグマザー!

「何故、王子や王女が寮に? 前は違ったのでしょ?」

「ええ、寮に入られたとは聞いたことございません」

アルフレッド王の下々の生活を知るべきだとかの気まぐれなのか? それか、王子や王女が余りに贅沢で我儘なので罰を与えたのか? どちらにしろ、迷惑この上ない。

「寮に侍従や侍女を連れて行けるのかしら?」

家にはメアリーしかいないので初めっから無理だけど、寮に侍女とか連れて行けるとか規則に書いてなかった筈だ。

「さぁ、一般の学生と同じ様に考えて宜しいものかどうか?」

王族は特別待遇なのかも知れないけど、取り巻きの貴族はどうなのだろう。なんて、呑気な事を考えながら馬車が荷下ろしするのを待っていた。こんな時に文句を言っても、なにも良い事無いもんね。お偉い様には逆らわないよ。

でも、あまり遅くなると馬のレンタル代が余分に掛かっちゃう。