軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

経済学と経営学の課題

魔法使いコースに2人の先生から勧誘されたけど、今の所は興味がある科目を受けるだけにする。履修要項にある攻撃魔法とかの科目は無理そうだもの。

2時間目は経済学だ。

「経済学と経営学の違いって何だろう?」

前世でもよく分かっているとは言えなかった。経済学には数学が必要だと進路説明の時に聞いて、経営を選んだのだ。今のところ学園の数学は簡単だったけど、少し不安になる。ミクロ経済とかマクロ経済とか一般教養の経済で聞いたけど、単位を取って忘れちゃったよ。インフレとデフレの仕組みとかも経済学だったよね?

経済学の先生は前に受けた経営学と同じカインズ先生だった。

「今年、経済学を教えるカインズだ。経済学は、社会全体における経済の仕組みについて経済理論をベースに学ぶ。『ヒト、モノ、カネ、情報、時間』といった限られた資源を社会全体が豊かになるように使うためにはどうすれば良いのか、というのが経済学の目的だ」

なるほどねと、全員が頷く。あっ、カインズ先生が笑っている。嫌な予感がするよ。

「この中には経営学を取った学生も多いだろう。さて、お楽しみはこれからだ」

教室が騒めく。何をさせられるのか不安なのだ。

「経営学では10ロームを元手にして事業を立ち上げて黒字経営をするのを課題にした。経済学でも実践を取り入れる。つまり事業を調べてそれをより良くする方法を考えて貰う」

あっ、これに似たのを前にやった事がある。実践経済学だ。でも、異世界の事業なんて知らないし、インターン制度なんかも無いよね。どうしよう。

「先生、事業なんて知りません」

ここでもフィリップスが質問する。

「フィリップス君、領地も立派な事業だよ」

かなりの学生が、成る程! と納得したみたいだ。でも、グレンジャー家は領地なんて持ってないんだよ。どうしよう。

「あっ、それと架空の事業を作り上げて、それを発展させてもいいぞ」

「それって経営学とダブってますよ」

「そんな面倒くさい事を誰がするんですか」

何人からか野次が飛ぶ。

「何を言う。経営学で事業を立ち上げ、黒字経営を目指す。そして経済学でより良くさせる方法を考えるのだ。一挙両得だろう」

面白そうだけど、異世界の事情を知らないから難しいよ。でも、何とかしよう。これを知らなければ金儲けできない。

「先生、経営学の事業立ち上げには人件費も含まれるのですか?」

あっ、私も知りたかったよ。

「当たり前だ。10ローム内で雇って、材料も購入しなければいけない。そして事業を立ち上げる場所代もいるぞ」

無茶じゃない? クラス全員からブーイングが起こる。

「カインズ先生、質問があります」

課題をするに当たって聞いておかなくてはいけない。

「おや、君は?」

「ペイシェンス・グレンジャーです。経営学も取っています」

「そうだ! 経営学と経済学の両方とも私の授業を取っている女学生だ。それでペイシェンス君、何を質問したいのかな?」

全員の視線が集まっているよ。でも質問しよう。

「事業を立ち上げるにあたって従業員を雇わず、私1人で始める時は人件費は無しで良いですか?」

カインズ先生は腕を組んで考える。

「そうだなぁ、そんなケースは考えていなかったな。自分1人で始めるなら人件費は要らないな」

良かった。

「では場所代には自宅はどうなるのでしょう。場所代はいりませんか?」

またカインズ先生は考え込んだ。

「自宅かぁ、それは必要ないかもしれないな」

もう一つ聞いておこう。

「家には温室があります。そこを管理しているのは私なのですが、それを使っても良いでしょうか?」

カインズ先生は困った顔をしている。

「温室は高級な施設だ。それをタダにしてはいけないと思う。が、その使用料を父上に払うと言っても受け取られ無いだろうな。縁故も経営には必要だから、ギリギリセーフだな。だが、温室の管理に必要な薪とかガラスの修理費は計上しなくてはいけないぞ」

これで良いだろうとカインズ先生はホッとした顔をしたけど、もう少し質問があるんだよ。

「先生、私は寮生なので平日の管理は下男にしてもらいます。その場合は、下男が温室で作業した時間だけの人件費で良いでしょうか?」

「勿論、作業時間の人件費は計上しなくてはいけないが、凄く具体的な案だな? もしかして実践しているのか?」

教室が騒めくけど、無視しよう。

「いえ、仮定の話です」

フィリップスが手を挙げた。

「温室の管理費は高価です。ガラスの修繕など10ローム内ではできないと思います」

「と言う意見が出たが、ペイシェンス君どうなんだ?」

「私は生活魔法でガラスの修繕をいつもしていますわ。つまり修繕費を掛けたことはありません」

フィリップスが疑いの目を向ける。

「生活魔法で修繕なんかできるものか、いくら架空の事業でも可笑しすぎる」

私はカチンときた。言葉を疑われたのと、生活魔法を馬鹿にした態度にだ。

「では、そこの黒板のヒビをなおせば、温室の修繕もできると認めますか?」

全員が黒板のヒビに注目する。

「ああ、修繕できたら、私は自分の不明を恥じ、謝罪しよう」

私は黒板の前まで歩いて「綺麗になれ!」と少しだけ強く唱える。

あっという間に古びていた黒板はピカピカの新品になった。勿論、ヒビなんか無い。

「凄い! 生活魔法ってこんな事もできるのか」

カインズ先生に驚かれた。フィリップスは口を開けて唖然としている。他の学生も驚いていたが「フィリップス、謝れよ」と野次が飛んだ。

「ペイシェンス嬢、私の不明のせいでお言葉を疑って申し訳ありません。二度とお言葉を疑ったり致しません」

凄く丁寧な謝罪だったよ。キース王子の謝罪とは違うね。

「ええ、謝罪を受け入れますわ。それに生活魔法を下に見る風潮が悪いのであって、フィリップス様が特別ではありませんもの」

カインズ先生は黙って聞いていたが、ハッとした顔をした。

「なぁ、ペイシェンス君。その魔法を使えば温室なんか無くても大儲けできるのでは無いか? 蚤の市で10ローム分の壊れた骨董品を買って、それを修繕して売るのだ!」

あっ、ワイヤットがやっているのと同じだな。

「カインズ先生、それだと買いに行く人件費が掛かりますわ。それに偽物の骨董品をつかまされたら、修繕しても買い叩かれてしまうのでは?」

ピシャンと額を叩いて「そうか! 良いアイディアだと思ったのだがな」とカインズ先生が悔しがるから、学生から野次が飛ぶ。

「経営学と経済学の先生なのに情け無いですよ!」

フン! と開き直ったカインズ先生が反撃する。

「君達は馬鹿だな。経済学者が金儲けできるなら、こんな教室で薄給で教えている訳が無い」

それで良いのか? まぁ、その通りなんだけどね。教室中は爆笑の嵐だ。

この日から文官コースのアゲンストな風を感じる事が無くなった。仲間と認められたみたいだ。