作品タイトル不明
エピローグ
夜明け前のフィールブロンを、酔い潰れたスーちゃんを負ぶって歩いていた。
長い夜だった。私も〝学校〟の訓練以外で初めて朝まで起きたりなんかした。
二人の話はとっても長くて、断片的で、それを話すスーちゃんはとても楽しそうだった。ときどき、懐かしそうで悲しそうな目をしていたけれど。
「もうすぐ着くよ、スーちゃん」
大人の姿になったら、スーちゃんはとてもちっちゃくて、軽い。ともすれば賢者だって忘れてしまうくらいに。
そう見えないように振る舞ってくれていたのも、今ならちゃんとわかる。
私には知らないことがたくさんあった。弁えていないことも、たくさん。
何も知らずに一回だけ助けられて舞い上がったくらいでは入れない、複雑で強い、関係みたいなものがあるんだって。
「……ねぇ」
背中から、細い声が聞こえた。
「ごめんよ」
急に謝るなんてスーちゃんらしくない。酔い潰れた後に私を呼んで足代わりにするなんていつものことなのに。
大事な昔の話をしてくれたことも含めて、今日はやけに神妙だった。
「いつものことじゃ──」
「私が歪めて、ひっかきまわしてさ」
違う、と気づいた。
スーちゃんは今、私に話しかけているわけじゃない。
きっと同じことが前にもあったんだ。私の前の、酔い潰れたスーちゃんを運んでいた人にむかって、話している。
「もしも、さ」
耳は塞げない。だって負ぶっているから。
「最後に、全部終わったあとに、私と一緒に冒険してくれたらさ」
聞くべき人は私じゃないだろうから、聞かなかったことにしてあげようと思った。
「それ以上に嬉しいことなんて、ないんだ」
そう言ってスーちゃんは今度こそ、眠ってしまった。