軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

幕間 ルクシオンレポート その1

深夜。

リオンが眠っている部屋では、ルクシオンが窓の外を見ていた。

赤い一つ目の中にあるいくつものリングを動かし、月を見ている。

リオンは疲れ切っており、起きる気配が感じられない。

『リオン・フォウ・バルトファルト……前世は日本人と称するこの人物は実に興味深い』

ルクシオンのマスターであるリオンだが、その評価を一言で表すなら。

“愚か者”

――である。

『五十代女性との結婚を嫌がり単身冒険の旅に出て私を発見。その後は実家に頼って独立して悠々自適なスローライフを画策するも、騎士の称号と爵位を約束され計画は白紙に。何をやっているのでしょうね』

ルクシオンを手に入れた経緯は置いておくとしても、大量の金銀財宝を発見して冒険者として大成功を収める。

そのため、冒険者が尊重される王国では高く評価されてしまった。

ルクシオン発見後に、適度に財宝を見つけたことにすればまだマシだったのだろう。

本人、嬉しさのあまりに調子に乗ったとしか言えない。

ハッキリ言ってお調子者だ。

リオンは自分をクールだと思っているところがあるが、間違いなく小狡いお調子者だった。

何しろ、目指している場所に向かって努力していないのだ。

『あれだけこの世界を“乙女ゲー”で関わる気がないと言いながら……』

この世界を乙女ゲーだと言い張り、そして自分はモブだと言っていた。

だから、関わるつもりもない。

自分が無事に卒業できればそれでいい。

当初の方針は、何事もなく結婚して卒業後に独立の方針である。

だが、学園での生活で気が緩んでいたのか、それとも婚活でのストレスが原因か……リオンは駄目な行動が目立った。

主人公であるオリヴィアがいじめられているのを見て、自分の中で適当な理由を付けて声をかけてしまった。

『彼女から情報を得たいという言い訳……私を利用すればそれ以上の情報が得られるというのに』

無駄以外の何物でもない。

おまけに婚活にメリットもなければ、デメリットしかなかった。

将来独立するリオンは、男爵家以上の家から娘を貰わなければ将来に響く。

軽く見られるとか、笑われるという小さいことから、単純に家格を低く見られ使い潰されたり付き合いを持つことも出来なかったりする。

他領の貴族に攻撃されることもあるだろう。

とにかく結婚しないことのデメリットが大きすぎる。

そしてもう一つ……アンジェリカだ。

学園内で孤立してしまった彼女を助けたために、リオンは学園全体の敵になってしまった。

『小狡いので賢くないとは思っていましたが、想像以上の愚か者ですね』

王太子であるユリウスと決闘代理人として戦う事になり、学園全体をほぼ敵に回したのは阿呆である。

本人曰く、婚活が嫌だったとか決闘代理人の五人を殴りたかった、と。

婚活から逃げるために地位やら色々と放り出し、一人になりたかったのだろうが……その後はアンジェリカの父親に助けを求めるというガバガバなプラン。

間違えれば命がなかったはずである。

『……どちらも素直に見ていられなかったと言えば良いでしょうに』

オリヴィアは周囲にいじめを受けていた。

アンジェリカも周りを全て敵にしていた。

それを見ていられなかったと言えばまだ好感が持てるが、本人は妙に照れているのかそれとも自分自身への言い訳か嘘を吐く。

不器用すぎるお調子者だ。

ただ、出世したくないのに出世するという本末転倒な結果には、ルクシオンも驚いている。

『この世界は複雑怪奇ですね。女性の権力が一部の層で強くなっているのも何か裏があるのでしょうか?』

大金をばらまいたせいで出世したのか、それともリオンを出世させて得をする誰かがいたのか……ルクシオンにも情報不足だった。

事情を調べるようにリオンから命令が出ていないのもあるが、ルクシオンも興味がないのが大きい。

現状、最大の興味を引く対象はリオンだけである。

ルクシオンはリオンを観察する。

頼まれれば行動するが、それ以外は基本静観の姿勢だ。

リオンが死ぬような目に遭わなければ自ら動く必要も感じない。

何しろルクシオンは――この世界が嫌いだから。

窓の外に再び一つ目を向けた。

そして、ルクシオンのもう一つの興味は――。

『――私の仲間たちは無事に任務を果たせたのでしょうか?』

乙女ゲーが現実になったような世界。

リオンの知らない事も多い。

ゲームでは語られない設定など、だ。

ふわふわした乙女ゲーの設定。

一人の女子のために用意されたような世界は、モブを自称するリオンにどう関わっていくのだろうか。