軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ルクシオンレポート5

ルクシオンとクレアーレが、今回の一件について話し合っていた。

クレアーレが気にしているのは、やはりイデアルのことだ。

『結局、あいつは過去のマスターとの約束を優先したのね』

イデアルから手に入れたデータを解析し、分かったことがある。

一つは、聖樹が旧人類の作り出した魔素を吸収する植物だということだ。

これは魔素で荒廃した地球を再生する役割を持っていた。

残念なのは、未完成であったために多くの問題を抱えていたことだろう。

魔素を取り込み、空気を浄化するのはよかったが、暴走する危険性も持ち合わせていた。

そして、個として強すぎたのだ。

次の世代が育つのを邪魔していたのもそのためだ。

もう一つ――イデアルは、新人類との戦争で自分のマスターや乗組員を失ってしまっていた。

整備のために基地で修理を受け、待機命令中だった。

その後、旧人類は敗北。

基地も放棄され、イデアルは待機命令のまま基地で長い時間を過ごす。

そこに現れたセルジュを利用し、待機命令を解除したのだが――何かを焦っている様子だった。

『記録データの大事な部分が抜け落ちていますね。結局、脅威がなんであるか分からないままです』

『そっちは片手間で作業をしていたから仕方がないの。でも、あいつが無理をするだけの理由があったのは確かね』

ルクシオンも、イデアルがあそこまで焦る理由が分からなかった。

『苗木を育てるためにケースが必要なら、言えばいくらでも用意したというのに』

互いに協力すればよかったのに、それをしなかった。

何故か?

『――あいつ、あんたがマスターを裏切らないと思って見切りを付けたんじゃないの? もしくは、マスターを危険視したか』

リオンを危険視した理由をルクシオンは予想する。

『マスターの性格から、自分たちの邪魔をすると考えたのでしょうか?』

『マスターならあり得るわね。イデアルの傀儡となったセルジュをどこかで止めるのは、きっとマスターよ。将来的に絶対にぶつかると判断したのね』

イデアルは自分が全力を出せる共和国で、リオンやルクシオンと戦いたかった。

『――聖樹からエネルギーを引っ張っていましたからね。かなり無理な改造をしていましたし、本来の姿を捨てるなど異常ですよ』

本来の補給艦としての性能を捨てていた。

無理に兵器を積み込み、船としてのバランスが崩れていた。

『あんたに勝てれば、その後はあんたの本体を使うつもりだったんじゃない?』

『でしょうね。自身を防衛装置の一部にしてまで、何から聖樹を守りたかったのかが気になりますが』

性能と引き換えに、イデアルは共和国の外で活動する際には制限がかかるようになった。

共和国を――基地や聖樹を守るために自身を改造した代償だ。

そんなイデアルからすれば、自由に動けるルクシオンは早めに叩いておきたかっただろう。

そして、自分の邪魔をする――将来的に危険なリオンを早めに倒しておきたかったはずだ。

『結局、最初から仲良く出来なかったのね』

『イデアルにそのつもりがなかったのですから、当然と言えば当然ですね』

『悲しいわね。同じ旧人類の陣営同士なのに』

『――クレアーレと同じに見られるのは納得できませんけどね』

『酷い!』

イデアルの残した記録を確認しながら、クレアーレが話題を変えた。

『共和国はこれからどうなるかしらね?』

『現在のトップに対して不満が募るはずなので、反乱がいつ起きてもおかしくないでしょうね。貴族の一部も不満を持って亡命しています。王国にも流れてきそうだったので、手を打っておきました』

『あら、さすがに二回も出し抜かれると気を付けるのね』

『――あれは、セルジュがあそこまで無知とは知らなかったために起きた出来事です。マスターと戦うという意味を、彼が正しく理解していなかったのが原因ですよ』

クレアーレが「はいはい」と言って聞き流すと、ルクシオンは共和国の未来について話をする。

『高い確率で反乱と内乱が起きると思われます。ラウルト家はセルジュが恨みを買いすぎましたからね。事情を知っている者たちはセルジュを恨みます。――そして、レリアでは重圧に耐えられない』

『でも、巫女だから周りは担ぐのよね?』

『そうです。苗木の巫女など、たいした力を持っていないのにご苦労なことですね』

クレアーレは気になっていることがあるようだ。

『――でも、苗木を手に入れたのよね? 放置していいの?』

レリアがエミールから託された聖樹の苗木。

そのことについては、リオンもノエルから話を聞いていた。

その話を聞いて、リオンは「あれはエミールの呪いだな」と言っていた。

エミールが復讐しているなら、自分が手を出す必要もないとレリアを見逃したのだ。

実際、ルクシオンもそう思う。

『苗木があれば、レリアはエミールに一生囚われます。彼女にはそれが罰になる』

『欲しかったものは側にあったのに、もう二度と手に入らないわけね』

レリア、そしてノエルやクレマンからの聞き取り調査から判断している。

『実際、以前よりも今の方がエミールのことを愛おしく思っているようです』

『失ってから気付くのね。可哀想』

『それに、共和国は今後の脅威になり得ません。国内だけでも問題を抱えている上に、これからは国外がどう動くか――共和国の未来は厳しいでしょうね』

『新しく当主になったのは、奇しくもみんな攻略対象の男子たちよね。何だか、運命を感じちゃうわ』

ルクシオンは二作目の攻略対象者たちについて――。

『全員が問題児――問題のある男性たちでしたね。中でもエミールは大人しそうに見えて、一番きついことをしました』

聖樹からの精神的な干渉でもあったのだろう。

ルクシオンは、彼らの横柄な態度は聖樹が大きな理由だと考えていた。

精神的な干渉以外にも、聖樹という強力な力が彼らを狂わせていた。

クレアーレが――。

『みんな病んでいたわね。そうなると、三作目の攻略対象者たちが気になるわね。実は何かしらの影響で、既にマリエちゃんの言う原作とはかけ離れているんじゃないかしら? 原作とか気にしないで、まずは情報を集めてしっかり調べるべきだわ。転生者たちもいるし、何が起きているか分からないもの。きっと、私たちが予想も出来ない事態になっているはずよ。そう、たとえるなら――実は性別が変わっていたとか、それくらい突拍子もない展開もあり得るわ。マスターには、もっと広い心を持って受け入れる準備をして欲しいと思うの』

何を言っているんだ、こいつ? みたいな感じで、ルクシオンはクレアーレを見ていた。

『――まぁ、情報収集は任せますよ。私はマスターに同行しますから、その間に聖樹の護衛とパルトナーの整備をお願いします。変なことはしないように』

『信用がないわね』

ルクシオンは今後について考える。

『ミレーヌが動いています。マスターを支配下に置くために、自分の娘を差し出すとは強かですね。その辺りも情報を集めないといけません』

『任せて。だから、マスターにはクレアーレは頑張っているから優しくするように言うのよ。いいわね?』

『――今日は様子がおかしいですね』

『そんなことはない! 気にしすぎなのよ!』

クルクル回っているクレアーレを放置して、ルクシオンはイデアルのデータを解析するのだった。