軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

50 セラフィナとの交流

「マイン様、ようやくお話しできます!」

「ふふ、王宮へ行った時から少し時間が経ったわね、フィナさん」

G4たちを追い払って、もとい彼らが立ち去ったあと、彼女と二人で話す。

「あれから無事に帰れたのね」

「はい。王宮から護衛をつけていただけました。その」

「どうしたの?」

「実は私、あのあとアイゼンハルト領に協力できないか、お願いしてみたんです」

「まぁ!」

あの日、王宮にいた私たちのもとへ、アイゼンハルト領で魔獣が溢れたという急報が入った。

ジークヴァルトはそれを聞いて慌てて出ていき、私もそれを追うように王宮を出た。

姿を透明にして筋斗雲でジークヴァルトを追い越し、アイゼンハルト領に急行したのだ。

でも、私の行動は周囲に認識されていない。

私の姿をした身代わりに王宮から帰宅させたので、表向きの私は王宮からまっすぐ帰った扱いだ。

真実を知ってくれているのはヴィルヘルムだけになる。

といっても、ヴィルヘルムも全体像や流れは把握していないでしょうけど。

私たちが王宮を出たあと、フィナさんはそんな申し出をしたらしい。

流石、本物ヒロインちゃんである。

「じゃあ、あのあとで貴方はアイゼンハルト領へ?」

「いえ、申し出を受け入れてもらうのに時間がかかり、受け入れていただいてからは王宮で待機となりました。まだ状況が掴めないため、不用意に動かないように言われたからです」

「それは順当な判断ですわね」

「はい。もし、向かうなら準備を整えた王宮騎士団に同行という形になると。それでジュリアンさんと一緒に王宮で待っていました」

「ジュリアンさんと?」

「はい。ヴィンセント殿下は忙しそうにされていました。向かうなら殿下が率いる部隊になるかもしれない、と聞きました」

ジュリアン・ヴァレンシュタイン侯爵令息。

青髪で長髪の眼鏡キャラ。殿下の側近で頭脳派タイプ。

ギフトは『真理の探究』で今わかっている能力は鑑定系。

噂では使い魔を使役できるらしいけど私はそれをまだ見たことはない。

生徒会選挙の際、選挙管理委員で一緒に仕事をした仲だ。

あくまで私目線だけどG4の中では一番、彼女からの好感度が高そう?

推定乙女ゲームなら、好感度が重要なのは男性側であってヒロインちゃん側の好感度はまた別の話なんだけど。

あくまでプレイヤー目線はヒロインサイドだからね! 攻略されるのは男性サイドのはずだ。

まぁ、告白は男性からの可能性が高いから似たようなものか。

「でも結局、王宮騎士団はアイゼンハルト領に行かなかったんです」

「そうなの?」

「はい。アイゼンハルト領の騎士たちでどうにか事態を解決できたらしくて」

「でも、怪我人とかいたんじゃない? 貴方が行く意味はあると思うけど」

「私もそう思ったんですけど、例の水晶の件があるから私の護衛も必要になって、それだと逆に今行くのは現地の邪魔になるだろうって」

「難しいところねぇ」

災害派遣で良心を痛めてすぐに行動したくなるけど、きちんとした準備を整えて、手順を守らないと逆に被災地の邪魔になる感じ?

無用な支援物資問題と違って、聖女のギフトならば腐ることはなさそうだけど。

「あとは魔獣被害がアイゼンハルト領だけの問題なのかわからないから、王宮騎士団を不用意に動かせないとのことでした」

「それはそうね。他の地域でも被害が起きている可能性がある」

実際はアイゼンハルト領以外での被害は聞こえてこない。

今のところは、だが。

しかし、あの時点でそんなことがわかっているはずもない。

王宮の判断は正しいだろう。

「私も納得せざるをえませんでした。本当は駆けつけたかったですけど……。かえって迷惑になるなんて、そんなことは望みませんから」

「そうね、時には耐えることも大事なことよ」

私はそう言いつつもフィナさんから目を逸らした。

はい。ゴリゴリに真っ先に駆けつけたのが私です。

むしろフィナさんの方が冷静で、手順に乗っ取っていて、正しい判断な件。

いえ、こちらは私にしかわからない緊急事態だったから……。

「マイン様は流石です」

「はい?」

今の話の流れで、なぜ私が褒められる。

「実はジュリアンさんから聞きました。マロット公爵家からアイゼンハルト領に支援を決められたって。あの日、王宮で話を聞いたマイン様はすぐに家に帰られましたよね。それは公爵閣下に支援をするように持ちかけるためだったんですね!」

「そ、そう……かしら?」

「はい!」

なんか美談になっている!

あくまでフィナさん目線の話だけかもしれないけど!

ヴィルヘルムと話し、家に帰ったあと。

身代わりにしていた分身が消えたため、騒ぎがあったんだけど。

それは横に置いておいて、私はお父様にアイゼンハルト領への支援をお願いした。

理由の一つは、私がヴィルヘルムと交流があるから、とした。

そこを誤魔化す嘘をつくと、あとで困りそうだから。

もちろん個人的な交流だけを理由とせず、ヴィンセント殿下の側近であるジークヴァルトの家門に恩を売っておくのは悪い話ではないでしょう、と。

マロット公爵家のメリットについて話している。

こういうのは初動が大事ということで、わりと強引に支援を約束させた。

あの件で暗躍しているだろう何者かにとって、アイゼンハルト領が重要だったのかは不明だ。

でも被害が抑えられた上、すぐに支援が決まり、復興への道筋が整うことは予定外に違いない。

実際、どういう意図での騒ぎだったのか。

ヴィルヘルムの暗殺は違うかしら。それはちょっと不確実だものね。

「もし気になるのなら、改めてアイゼンハルト領に行くのもいいと思うわ」

「……はい! ありがとうございます!」

ヴィルヘルムを助けられたのはいいけど。

もし、フィナさんの活躍を奪っているとしたら、どこかで問題になるかもしれない。

彼女に聖女としての実績を積ませておくべきかも。こう、ほら?

孫悟空が元気〇を使う時に市民の協力が名声不足のせいで得られな……。

それは違う孫悟空だった。コホン。

でも、ヒロインの名声ポイントが低いままなのは、よくなさそう。

ジークヴァルトの活躍? そっちはどうでもいいわ。

「他には何か気になることはあった?」

「気になることですか?」

「ええ、貴方の立場から感じたことって私には新鮮なの。だから聞きたいわ」

「マイン様……」

そこで感動したウルウル上目遣いが自然と出るのがヒロインちゃんねぇ。

なお、その表情を見るヒーローはここにはいません。悪しからず。

「ええと。気になることかはわかりませんけど。陛下から聞いたこともあって、王宮の騎士さんや、教会の騎士さんが私の護衛を今後するかも、と」

「まだ決まっていないの?」

「はい。その。あんまり護衛がいすぎたら窮屈だなって。我儘だと思うんですけど! でも、そのことを打ち明けたら、ジュリアンさんがヴィンセント殿下に話を通してくれて。今、どうするか協議中だそうです」

「なるほど」

その流れで『だったら俺たちが護衛するぜ!』とか?

ありそう~……。

ジークヴァルトもようやく役に立つ時が来たかもしれないわね!

ヴィンセント殿下とベネディクトさんのギフトはよくわからない。

彼らのギフトも護衛に活かせるのかしら。

「日々気をつけて過ごしましょう、お互い。貴方だって子爵家の娘、立派な貴族令嬢なのだから」

「はい!」

でも、たぶん気をつけていても事件は起こるんだろうな。

ヒロインが歩けばイベントに当たるのだ。

「それとフィナさん、少しお願いがあるのだけど」

「なんでしょう?」

「貴方のギフト『聖女』の浄化や破魔の光、もう一度、私に浴びせてもらえないかしら?」

「構いませんよ」

「ありがとう、それなら……」

「では、さっそく!」

カッ! と即座に光が浴びせられる!

早い早い! ノータイム聖女ビーム! 即断・即行動すぎる!

私が頼んだことだけど!

「どうでしょうか。何かご病気でしたか?」

「……ええと」

私は頭に手を伸ばす。

……残念ながら、そこにある感触は消えていなかった。

流石にそう簡単にはいかないかぁ。

そもそも、どちらかというと聖物の方よね、緊箍児って。神の御業というか。

〝魔〟は孫悟空の方だ。

聖女の破魔の力では緊箍児を消すことができないらしい。はぁ……。

「……ありがとう。少しだけ悩みがなくなったわ」

「どういたしまして! そうだったら嬉しいです!」

聖女の力がダメなら教会でお祓いとかも無理そうねぇ。

ひとまず推定乙女ゲームのトラブル解決をがんばるしかないわね。

そして、やっぱりすぐに事件が起きることになる。

それはダンスの授業が始まる日のことだった。

「セラフィナさん」

「……はい? ええと」

その日、なんとなく気になった私は、いつもとは違い、ギフトをオンにしていた。

といっても火眼金睛のような目立つものじゃない。

孫悟空の地獄耳というか聴力と聞き分け能力をオンにして注意していたのだ。

それでそのやり取りを離れた場所から聞くことができた。

「こちらの香水、ぜひダンスの前に使ってくださいな」

「え、香水ですか?」

「ええ、貴方と仲のいいマロット公爵令嬢からのプレゼントなの」

「え、マイン様から!?」

フィナさんの声は嬉しそうだ。

「ヴィンセント殿下とも踊る予定なのでしょう? でしたら、この香水を振るのがいいそうよ。ああ、ダンスの直前に振るのがベストなのですって」

……また、ベタなことをしてくるわねぇ。

ちなみに私はそんな物は用意していない。

そんな真似を許すと思わないことね! ウキーッ!