軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04 襲撃事件

余談だけれど、私の髪色は赤色だ。

「でも瞳の色も赤色なのよねぇ」

馬車に揺られて移動しながら、自分の長い髪を指で弄ぶ。

髪色が赤なのもアレなところなのよね。

ついでに、今までのことからして関係ないんだけど。

私の名前の頭とお尻の方を繋げると、ちょっと似ている感じになるのが嫌だ。

「はぁ……」

どうして今、私が馬車に揺られているのかというと。

学園入学前の残り時間を領地で穏やかに過ごすため、領地に向かっているのだ。

先日のヴィンセント殿下との顔合わせがどうやら噂として広まっているらしい。

どこから広まるんだか知らないけれど。

曰く、私が殿下の婚約者に内定しているとかなんとか。

そのせいでお茶会の招待状が、わさっと大量に届いたのだ。

勘弁してほしい。

私とヴィンセント殿下は婚約していない。保留といったところ。

まだ狙われている感じはあるけれど。

私としては、あんまり面倒くさいことには巻き込まれたくない。

他の公爵令嬢と比較して私が優れている点など、ほぼない。

その分、ギフトの比重が大きいのかもしれないが……。

「私、曇りの聖女だしぃ?」

殿下には他にも何かあると思われているだろうが、世間的な私は空をちょっとの間、曇らせることしかできないハズレギフト持ちだ。

……結局、ハズレギフト扱いされているのはどうかと思うけど。

ここで殿下の婚約者になろうものなら、それは攻撃できる弱点になりかねない。

あの殿下のことだから、そういう状況に追い込んで私にギフトを使わせようとするとか、ありそうで怖い。

「なら距離を置くしかないわよねぇ」

うんうん。この選択は間違いではあるまい。

私が一人、馬車の中で納得している時。

馬車は領地へ向かって走っており、あまり人通りのない、森に挟まれた街道を通っていた。

その時だ。

ガタガタガタッ!

「きゃっ!」

馬車が急に大きく揺れ始める。

元から揺れは、そこそこあったけれど、なんかこう車体全体が滑ったような。

「な、何?」

「お嬢様! 外に出てはいけません! 襲撃です!」

襲撃!?

聞き耳を立てると、確かに戦闘が始まっている怒号と武器がぶつかる音が聞こえる!

嘘でしょ、襲撃なんてされるの!?

今まで公爵邸でのんびり暮らしていたから平和ボケしていた!

ここは異世界で、日本レベルの治安はない!

「うわっ! これは! 油!?」

油? どういうこと?

ああ、怖い、怖い。どうしよう、どうしよう。

あ……待って、私。いや、でも。余計なことはしない方がいい?

でもでも、護衛だって生きている人間よ。黙っていていいの?

「……たぶん、よくない!」

私はできるかぎり悪行は働けない。

誰かを見殺しにするのも避けた方がいい。

それは私が善人だからじゃあない。

ただ、仏罰を避けたいがために──!

「トゥッ!」

勢いよく馬車の扉を開いて飛び出した。

「なっ! お嬢様!?」

周囲を確認する。どうやら私の護衛と馬車は取り囲まれているみたい。

それに地面。何やらドロリとした液体が撒かれている。

これは……油? まさか。

「はっ、間抜けが出てきやがった!」

賊らしき顔を隠した男がそう叫んだ。そして。

「やれ! 火を点けろ! 火を点けて撤退だ!」

「なっ、お下がりください、お嬢様!」

火矢らしきものが少し離れた場所から射られる。

その光景はまるでスローモーションのように見えた。

護衛たち、地面に撒かれた油、一際目立って油を被ったらしき護衛を。

「っぁああああ!」

咄嗟の判断で油塗れの護衛の一人の襟首を掴む。

「へぁ!?」

「てぇりゃああ!」

そして、前方にぶん投げた。

「うぁああああ!?」

突然の私の奇行に敵味方が言葉を失って足を止める。

私は護衛を投げるために前に出ていた。

そこに火矢が地面に落ちて。

ボゥァアアッ。

「きゃああああ!」

「お嬢様ッ!」

私は火に巻かれる。

「いやぁあ、熱い! 熱い! 熱……、熱……くない!」

「えっ」

いえ、熱は感じるんだけど! 火力のわりに、あんまり熱く感じない!?

あ、でもドレスは燃えている! これ、あれだわ、ギフト!

「撤退しろ! 目的は達成! 撤退!」

「くっ!」

「貴方たち、馬と一緒に逃げて! 油が服に着いた人は火に近付いたらダメ! 私は大丈夫だから!」

「ですが、お嬢様!」

「大丈夫なの! だから自分の安全優先!」

ドレスが燃えるのは困るけど、たぶん命の方は大丈夫!

じゃあ、地面をゴロゴロ転がって火を消す?

いえ、このままじゃ。

「お、お嬢様……逃げる場所が」

「くっ」

周囲もいつの間にか火に囲まれていた。

たぶん、最初の馬車が滑ったような感覚の時。

あれは地面に油が撒かれていたのよ。

連中は私たちをここに足止めした上で火を点けた。

このままじゃ、私だけ助かっても護衛や侍女たちは助からない!

「何かないの、何か……!」

あるはず。だって万能に近いのよ?

その手段くらい……、……普通にある!

でもアレの持ち主は……? いえ、悩んでいる場合じゃないわ!

「来なさい!」

私は右手を掲げる。

かつてギフトを使ってみせたように、ある物をイメージした。

それは、あっさりと私の手の中に現れる。

「──風よ! この場の炎をすべて打ち消しなさいッ!」

一閃。私の願いを込めた一振り。その瞬間。

ブァアアアアアアッ!

「きゃあああ!」

「うわぁああああ!?」

私たちの悲鳴とともに突風が吹き荒れる! それと同時にこの場に燃え盛っていた炎のすべてが風に持っていかれ、上空へと巻き上げられていく!

猛烈な風の発生によって私や護衛たち、馬車を燃やしていた火が一つ残らず消え去った!

「やったわ! 成功よ!」