軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第092話 設定?

一本道を歩き、執務室になっている建物までやってくると、扉をノックする。

『どうぞ』

中からモニカの声が聞こえたので扉を開け、建物に入ると、作業デスクの前で立っているモニカがいた。

モニカはそのまま姿勢よく頭を下げる。

「モニカ、仕事中だった?」

「ええ。色々と試算をしておりました」

「ありがとうね。それとちょっと村を見せようかと思って、同僚を連れてきたよ」

「はい。キョウカ様は存じておりますが、そちらの方でしょうか?」

モニカがユウセイ君を見る。

「うん。ユウセイ君だね。弟子という設定。ユウセイ君、この人が秘書のモニカ」

ユウセイ君にモニカを紹介する。

「どもっす」

「モニカと申します。ようこそいらっしゃいました」

2人はお互いに軽く会釈をしあう。

「モニカ、それと……えーっと?」

「妻のキョウカです」

言い淀んでいると、キョウカがはっきり宣言する。

「そのようにされたんですね。まあ、家に籠っているという設定よりかはよろしいかと思います」

まあねー。

「ちなみに、ルリが娘で大丈夫? キョウカが若すぎない?」

「実年齢より若く見えるのはよくあることですよ。タツヤ様も20代で十分に通じます」

そ、そうかな?

「そうですよ。タツヤさん、いっつもおじさん、おじさん言ってますけど、十分に若いです。私と歩いていても違和感はないですよ。普段はスーツと制服だから気になるだけです」

そうかなー?

君と20近く離れてるんだけど。

「よろしいかと思いますよ」

モニカが頷くと、キョウカが満面の笑みになった。

「まあ、いいか……それでちょっと村を見たいんだけど、大丈夫? そんなに見るところはないけどさ」

「リンゴ園くらいですかね? 大丈夫ですよ。ご案内しましょう」

「仕事は?」

「そんなに急ぎではありませんよ」

モニカがにっこりと笑う。

「だいぶ落ち着いてきた感じ?」

「そうですね。冬は余裕で越せそうです。もっとも、別の問題も発生しそうですが……」

「別の?」

「ええ。これについては後でお話ししましょう。せっかく奥様とお弟子様がいらっしゃったのですから村を案内します。どうぞ、こちらへ」

モニカがそう言って促してきたので建物を出た。

「おー! 村だ」

「村だねぇ」

ユウセイ君とキョウカが村を見渡す。

「ここは開拓村で木を切って畑や住むところを広げているんだよ」

「「へー……」」

高校生2人に説明しているとなんかの実習や研修をしているみたいな気分になるな。

俺達はその後も村を案内しながら歩いていくと、何人かの村人とすれ違い、挨拶をした。

すると、正面からコーディーさんが歩いてくる。

「おー、山田さん。久しぶりだな」

「どうも。調子はどうです?」

「だいぶ落ち着いてきたし、暖房の魔道具がいいわ。おかげでガキ共が外に出なくなったがな」

コーディーさんはそう言いながら笑った。

「それは仕方がないでしょうね」

「まあなー。それより、その2人は見ない顔だが、誰だ?」

コーディーさんが俺の腕にくっついているキョウカとキョロキョロと周囲を見渡しているユウセイ君を見る。

「えーっと、弟子のユウセイ君と……」

「妻のキョウカです。挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません」

俺が言い淀んでいると、キョウカが自己紹介をした。

「あー、なるほど。それで案内をしているわけか。というか、山田さん、結婚してたんだな。遊んでいる風来坊かと思った」

「ちゃんと地に足をつけてますよ。あ、今さらですが、娘のルリです」

確認のため、ルリを娘と紹介してみる。

「あー、娘だったのか……え? 山田さん、娘を自分の祖父に預けて遊んでたのか?」

そうか……

ルリは元々、この村に来たことがあるし、そうなっちゃうのか……

「遊びに来ていただけですよ。ちゃんと一緒に暮らしています」

「ふーん……なんか複雑なんだな……名前で呼んでいるし」

あ、それがあったわ。

ルリは俺のことを名前で呼んでいる。

「名前を大切にしている家訓なんですよ」

言ってて無理あるな……

「いや、まあ、好きにすればいいし、気にしないけどな。ところで、リンゴ園を見に行くのか? 今は収穫前だからちょうど良いと思うぞ」

もう収穫できるのか……

スーパー肥料は本当にすごいな。

「わかりました。ちょっと見てきます」

「おう」

俺達はコーディーさんと別れ、リンゴ園に向かう。

「うーん、設定が甘かったかなー?」

モニカに確認してみる。

「そこまで作り込まなくても大丈夫ですよ。コーディーさんも言っていましたが、人はそこまで他人の家庭に踏み込みませんし、気にしません」

まあねー。

俺もコーディーさんの家庭のことはあまり興味ないし、踏み込む気はまったくない。

「適当でいいか」

「そうですよー。タツヤさんは少し気にしすぎなところがあります。深く考えずにもうちょっと本能に従いましょう。私はそうしてます」

腕を組んで歩くキョウカがそう言いながらくっついてくる。

「本能に従ったら捕まるねー……キョウカ、帰ったら冷蔵庫にアイスがあるよ」

コタツで食べるアイスは最高。

「悪魔めー……」

俺達はそのまま歩き、リンゴ園に到着した。

「すげー。昔、リンゴ狩りに行った時を思い出すな。ここまで赤くなかったけど」

「すごいですねー」

2人はリンゴ園を見渡しながら感嘆する。

確かに赤い実が成っているリンゴの木々は綺麗だ。

「これがウチの名産だね。これで村を整えていく」

「山田さん、なんで村長になろうと思ったんだ? 協会で十分に稼げてるじゃん。それにこっちの世界で稼いでも向こうでは使えないんだろ?」

ユウセイ君が聞いてくる。

「都会の喧騒から離れて、ここでスローライフしたいって思ってさ。俺は10年以上会社勤めをしてたけど、疲れたんだよ。だから協会で適当に仕事をしつつ、爺さんの魔法の研究をしながらゆっくりしようかと思って。別荘じゃないけど、休日にこの村に来て、ゆっくりと過ごす感じ」

「へー……わからん」

「君はまだ若いし、学生じゃん。そりゃ都会の方が良い」

「うーん、まあ、ここが落ち着くのはわかるけどな。東京にこんな自然はないし」

コンクリートばっかりだからなー。

「私は好きですよ。空気もきれいだし、こういうところで生きるのも良いと思います」

「そう?」

「はい。一緒に協会で仕事をして、スローライフな人生を送りましょう」

あ、うん……

「そ、そうだね。そろそろ帰ろうか」

「はい。アイスを食べましょう」

やっぱり食べるんだ……

本当に本能に従ってる……