軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第085話 修羅場ではない!

ルリと買い物に行き、家に帰ると、出くわしてはいけない2人が顔を合わせていた。

いや、2人共、顔はお互いの方を向いているが、一切、目を合わせていない。

「え、えーっと……」

どうすればいいんだろうか?

俺はコタツの中に逃げようとしているミリアムを必死に掴んだまま、考える。

「どうしたんですか?」

悩んでいると、隣に座っているキョウカが聞いてくる。

「あ、あのさ、今日はどうしたの?」

「学校が終わって暇だったんで遊びに来たんですよー」

そ、そうなんだ。

「明日来るのかなって思ってたよ」

「明日も来ますよ。え? 来たらダメでした?」

ものすごい笑顔なのが逆に怖い。

「そんなことないよ。いつでも来てもいいから……」

「ありがとうございます。それで昨日はあれからどうでした?」

あー、それが気になったから来たんだろうな。

「昨日ねー……桐ヶ谷さん達を呼んだんだけど、長くなるから詳細は後日って言われた。どうやら教団のことを知っているのは本当みたいだね」

あれからどうなったのかも気になるな。

「なるほど……じゃあ、桐ヶ谷さん待ちですね。ところで、その袋は何です? 買い物に行ってたんですか?」

キョウカが横に置いた袋を指差しながら聞いてきた。

「あー、スマホ。ルリが欲しいって言うから買いに行ったんだよ」

「おー、それは良かったですね」

キョウカは嬉しそうに笑うと、立ち上がり、袋を手に取る。

「ルリちゃーん、お姉ちゃんと連絡先を交換しよー」

キョウカはスマホが入った袋を持って、キッチンに向かった。

「……モニカ、モニカ。状況を教えて」

キョウカがキッチンに行った隙に小声でモニカに聞く。

「タツヤ様に渡すものがありましたので来たのです。お留守のようでしたが、今日は仕事がなかったのでパソコンで調べ物をしながら待っていたんですよ」

「渡すもの?」

「はい。こちらです」

モニカはそう言って一枚の紙を机に置いた。

「何これ?」

「前に言っていた村長の任命状です。これでタツヤ様が正式にリンゴ村の村長に任じられたことになります」

なるほど。

それか……

「村長って何ですかー?」

キッチンの方からキョウカの声が聞こえてくる。

「明日、説明するからー。ユウセイ君をハブにしたらダメでしょ」

「そうですかー」

地獄耳だな、あの子……

「……それで待ってたらキョウカが来たの?」

俺はさらに声のトーンを下げた。

「ええ。普通に入ってきましたよ」

チャイムを鳴らさないでいいから近所の人にバレないように入ってって言ったからだな。

「その後は?」

「特に……コタツに入って、タツヤ様たちが帰ってくるのを待ってました」

「会話した?」

「特には……」

すごい空間だな……

「初対面なら話さない?」

「いえ。以前、ファミレスのトイレで会ってますし、話をしていますよ」

ひえっ……

あの時だ。

こら、ミリアム、コタツの中に逃げようとするな!

「そ、そうなんだ……どういう話をしたの?」

「普通の世間話ですよ」

普通って何だろ?

「せ、世間話って?」

そう聞くと、モニカがニコッと笑った。

笑うだけで何も言わない。

えー……

「ケンカは良くないよ?」

「別にケンカなんてしてませんよ。お互いに何を話せばいいのかわからないだけです。だって、何も聞いてませんし、どこまでしゃべっていいのかもわかりませんから」

あ、俺が言ってないからか。

モニカにも詳しく説明するべきだろう。

話すか……

そう思っていると、キョウカが戻ってきて、コタツに入る。

すると、スマホを見始めた。

「どうしたの?」

「はい」

キョウカがスマホを見せてくる。

ル リ :てすと

「交換したんだね」

かわいいわ。

「はい!」

キョウカは嬉しそうだ。

「えーっとね……キョウカ、この人はモニカさんっていう人」

「保険の営業の方ですか?」

前に言った言い訳を覚えているし……

「その辺りは明日話すけど、違うね」

「彼女さんですか? あれ? でも、恋人はいないって言ってませんでしたっけ?」

普通の反応なんだけど、何故か圧を感じる……

自分が嘘をついたせいだろうか?

「彼女でもないよ。俺みたいなのとは釣り合わないでしょ」

かたやアラフォーに片足を突っ込んでいるおっさん、かたや若くてスタイルも良く、優秀な美人…………言ってて悲しくなるな。

「私ごときがタツヤ様の恋人など恐れ多いです。そばに置いてもらえるだけで満足です」

モニカが恭しく頭を下げた。

「いや、どういう関係です?」

キョウカは首を傾げながら頭を下げているモニカを指差す。

「明日話すよ……モニカ、こちらが橘さん…………橘キョウカさん」

苗字で紹介したらキョウカが腰を少し浮かして詰めてきたのでフルネームで紹介した。

「存じております。仕事の同僚さんでしたっけ?」

前に俺の仕事のことや仲間のことは説明してある。

「そうだね」

「確かに優秀な魔法使いな気がしますね。その若さで悪魔退治に従事するのは大変でしょうに立派なことだと思います」

「そうですかー?」

キョウカが照れる。

「ミリアムさんの手前、言いにくいですが、悪魔は危険です。中には人の心をたぶらかす者もおり、対処を間違えると破滅しますので」

あっちの世界でも似たようなものなのか……

「一応、そういう悪魔退治を生業にしている家の子だし、俺達はミリアムを含めて、4人で行動しているから大丈夫だとは思うよ」

「そうですか……まあ、タツヤ様とミリアムさんがいれば問題ないでしょうね。しかし、そちらの方で力になれなくて申し訳ありません。私も魔法使いの端くれですが、いかんせん、力がなくて……」

モニカが落ち込んだ。

「いや、モニカにはすごく助けてもらっているよ。モニカがいないと何もできなかったし」

実際、村長になる申請も交渉もほぼモニカがやってくれた。

「ありがとうございます。これからも何なりとお申し付けください。このモニカ、身命を賭してお仕えします」

モニカが再び、恭しく頭を下げる。

「この人、臣下かなんかですか?」

キョウカが聞いてきた。

「うーん、そんな感じ」

「へー……王様にでもなったんです?」

いや、村長だってば。