軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第084話 女難とは何ぞや

「悪魔教団ですか……」

桐ヶ谷さんがつぶやく。

「ご存じで?」

「ええ。このことは少し長くなりそうですね……教団の説明は後日でもいいでしょうか?」

もう11時をとっくの前に回っているしな。

「そうですね。それでいいです。それで話を進めますが、ロザリーは悪魔教団に協力しているようでした」

「厄介ですね」

「ええ。それでこの教会なんですが、悪魔教団の拠点の一つのようです。ただ、私がフィルマンを討ったことで撤退したようですね。奥にこの教会の人間と思わしき遺体がありました。銃痕もありましたし、教団がやったのかと……」

そう言うと、桐ヶ谷さんが調査員の方々を見る。

すると、須藤君を始めとする調査員が奥の扉に向かっていった。

そして、調査員の1人が扉を開け、中を確認する。

「桐ヶ谷さん! 本当です!」

調査員がそう言うと、桐ヶ谷さんが首を横に振った。

「警察も呼ばないといけませんね……山田さん、そこの魔法陣は?」

「教団の置き土産らしいです。狼男が2匹とアマドとかいうネームドの悪魔が出てきましたよ」

「狼男……それにまたネームドですか……」

桐ヶ谷さんが目を閉じると、再び、首を横に振った。

「ええ。それとすみませんが、狼男もアマドとかいう悪魔も灰になって消えていきました」

「そうですか……すべて山田さんが?」

「いえ、ネームドは私が対応しましたが、狼男は一ノ瀬君と橘さんがそれぞれ倒しました」

ユウセイ君もキョウカも一瞬で倒していたし、そこまでの悪魔ではなかったと思う。

「なるほど……それが終わって、協会に連絡したわけですね?」

「そんな感じです」

だいたいの流れはこんなものだろう。

「わかりました。では、後のことは我々に任せてください。査定や褒賞金、それに悪魔教団という組織についての説明は後日ということでまた話をさせてください」

褒賞金や教団のことはともかく、査定?

もしかして、ランクアップだろうか?

「わかりました。私はいつでも大丈夫なので連絡してください」

「はい。では、今日は帰っていただいて結構ですよ。これから調査や警察との調整で面倒なことになりますから巻き込まれる前に帰った方が良いでしょう」

帰っていいの?

「いいんです? 手伝いや説明は?」

「もう十分ですよ。大手柄ですし、さすがにお疲れでしょう。ここから先は我々がやります……ここだけの話、多分、ランクアップしますよ。山田さんは上の評判も良いですし」

桐ヶ谷さんは小声で教えてくれる。

「マジっすか?」

「ええ。期待して良いと思います」

もし、8級にランクアップしたら固定給50万円が80万円になる。

これはすごいぞ!

「ぜひともよろしくお願いします」

「わかってます。では、また後日、連絡しますので」

「はい!」

俺はこの場を桐ヶ谷さん達に任せると、ルンルン気分で車に乗り込む。

そして、車を返すために協会に向かった。

車を協会の駐車場に止めると、こんな時間までいた受付の人に鍵を返し、タクシーを呼んでもらう。

すると、こんな時間なのにすぐにタクシーがやってきたので乗り込み、家に帰った。

家に帰ると、時刻はすでに12時になろうとしていた。

家には灯りがついているものの、ルリはもう寝ているかもしれないのでそーっと家に入る。

すると、リビングの扉が開き、ルリが顔を出した。

「ただいま」

「ただいまにゃ」

「おかえりなさい」

パジャマ姿のルリが小走りで近づいてきたので頭を撫でる。

「まだ起きてたの?」

「はい。さっきまでモニカさんもいましたよ」

ということはモニカはもう帰ったのか。

「そう」

靴を脱ぐと、リビングに行き、隣接する自室に入った。

そして、スーツを脱ぎ、ネクタイを緩める。

「タツヤさん、お風呂が沸いていますので入ってください」

ルリはそう言うと、俺からスーツを取り、ハンガーにかけていった。

「じゃあ、お願いね」

ルリにネクタイを渡すと、着替えを持って、風呂に向かう。

そして、ゆっくりと湯に浸かり、今日の疲れを取ると、リビングに戻った。

すると、リビングにはまだルリがおり、コタツに入っていた。

「まだ起きてたの?」

「ええ。ミリアムはそこですけど……」

ルリが部屋の隅の段ボールを指差す。

もう寝たんだろう。

「そっか。今日は疲れたよ」

そう言いながら俺もコタツに入った。

「何か飲まれます?」

「いや、今日はいいや」

もう眠い。

「そうですか……それにしても、今日はやけに遅かったですね。何かあったんです?」

「またネームドの悪魔だよ。多くない?」

「うーん、こっちの世界は悪魔が多いですねー」

ホントだよ。

想像以上に多い。

それでいて、退魔師の数は少ないんだからこんな好待遇になるわけだわ。

「あ、ルリ、何か欲しいものはある?」

「欲しいもの? どうかしたんですか?」

「もしかしたら給料が上がるかもしれないんだよ。ルリにも何か買ってあげる」

「給料が上がるのは良かったですね。でも、私は別に欲しいものはないです」

ないの?

あ、でも、この子、遠慮する子だからな。

ピザだって、本当は結構前から食べたかっただろうに言わなかった。

「遠慮しなくてもいいよ」

「えーっと、じゃあ、スマホが欲しいです」

スマホか。

そういえば、ちょっと前に買ってあげた方が良いかなって思ってたわ。

「それは必要だね。明日、買いに行こうか」

「いいんですか?」

「うん。それがあった方が連絡もしやすいしね」

「ありがとうございます」

ルリが嬉しそうに頬を緩める。

かわいい子だわ。

「じゃあ、今日はもう寝ようか」

「はい……あ、あの、一緒に寝てもいいですか?」

ルリは手をもじもじさせながら聞いてきた。

「うん。一緒に寝ようか」

「はいっ」

俺はルリを連れて自室に行くと、一緒にベッドに入る。

「おやすみ」

「あのー……タツヤさんってお姉ちゃんとモニカさんだとどっちが好きですか?」

何故、今聞く?

「どっちもかわいい子だと思うし、好ましいと思っているよ」

2人共、いい子だもん。

「そうですか……」

「ルリもかわいいし、好きだよ」

「あ、ありがとうございます……」

ルリは小声で礼を言うと、俺の腕を掴んできた。

何をしてほしいかわかったのでルリを抱きしめる。

「寝るよ」

「はい。おやすみなさい……私も好きです」

俺はルリの頭を撫でると、さすがに疲れたのでそのまますぐに意識を失った。

◆◇◆

翌日、起きた時にはルリがベッドにいなかったのでリビングに行くと、ルリが朝食の準備をしてくれていた。

「あ、おはようございます」

「おはようにゃ」

「うん、おはよう」

ルリとミリアムに挨拶を返すと、洗面所に行き、顔を洗う。

そして、リビングに戻ると、朝食が用意されており、ルリはいつものようにテレビでワイドショーを見ていた。

俺は席につくと、朝食を食べ始める。

「ルリ、ご飯を食べたらスマホを買いに行こうか」

「はい」

ルリがテレビから視線を切り、微笑んだ。

「ミリアムも行くか?」

ミリアムの姿は見えないが、コタツの中にいるのはわかっているので聞いてみる。

すると、ミリアムがコタツから顔を出した。

「今日は寒いから行かないにゃ。猫はコタツで丸くなるにゃ」

確かに今日は寒い。

もう秋も終わり、冬になるのかもしれない。

「ルリの冬服も買わないとね……」

今日は買い物の日だな。

どうせ、ユウセイ君がバイトだから仕事はないし、桐ヶ谷さんもさすがに昨日の今日で連絡をしてこないだろう。

俺はそう考え、朝食を食べ終えると、ルリと一緒に出掛ける。

まずは約束したとおりにスマホを買いに携帯ショップに行くと、ルリが選んだスマホを買った。

当たり前だが、名義は俺である。

スマホを買った後はルリと一緒に大型のショッピングモールに行き、服を買ったりと買い物をして過ごしていく。

昼にはレストランでご飯を食べ、ルリは嬉しそうだった。

そんなルリを見ていると俺も嬉しくなったし、ルリがいてくれて良かったと思えた。

そして、夕方になると、夕食の材料とミリアムへのお土産を買い、帰路につく。

「ただいまー」

「ただいま」

俺達は玄関に入り、靴を脱ぐ。

「ん?」

玄関には見覚えのある靴が置いてあった。

「あれ? お姉ちゃんですかね?」

確かにこの靴はキョウカだろう。

俺とルリが首を傾げていると、リビングの扉が少し、開き、ミリアムがやってきた。

「山田ぁ……」

ミリアムは自慢の尻尾を落とし、声をかけてくる。

「どうしたの? キョウカが来てるの?」

「すまないにゃ。でも、私は悪くないにゃ」

え? 何?

よくわからないのでルリと顔を見合わせると、リビングに向かい、扉を開けた。

すると、リビングには2人の少女がコタツに入っており、お茶を飲んでいる。

「………………」

「………………」

2人は無表情で静かにお茶を飲んでおり、まったく目を合わせていない。

「い、いらっしゃい……」

かろうじて、声をかけると、モニカが顔を上げ、キョウカが振り向いて、こちらを見てきた。

「あ、タツヤさん、お邪魔してます」

「おかえりなさいませ、タツヤ様」

2人共、笑顔で挨拶を返してくれる。

「おかえり……?」

キョウカはモニカの言葉を聞いて、モニカを見ると、モニカもキョウカを見る。

すると、2人はすぐに視線を落とし、再び、お茶を飲んだ。

「わ、私、夕食の準備が……」

ルリが買い物袋を持ったまま、キッチンに逃げ込む。

「私は散歩に行くにゃ」

俺は逃げようとするミリアムを抱えると、リビングに入る。

「タツヤさん、寒かったでしょう? どうぞ」

キョウカは自分の隣のコタツをめくってきた。

モニカはそんなキョウカをじーっと見ている。

「えっと、じゃあ……」

俺は腕の中で暴れるミリアムを抱えたまま、キョウカの隣に座ると、コタツに入った。

『あなたには女難の相が見えます』

何故か、愛を司る悪魔ロザリーの言葉が俺の頭の中に浮かんできた。