軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第049話 奴隷も家畜も嫌だわ

ダリルさんの家の前にやってくると、扉をノックした。

『はい?』

「ダリルさん、ちょっといいですか」

『どうぞ』

俺は許可を得られたので扉を開けると、家に入る。

すると、ダリルさんがテーブルについて何かの紙を見ていた。

「こんにちは。今、大丈夫ですか?」

「ええ。私も相談したいことがあります。どうぞ」

俺達はダリルさんが勧めてきたのでテーブルの席につく。

「モニカから話を聞きましたし、リンゴ園も見てきました。順調のようですね?」

「はい。モニカもですが、皆、協力して頑張りましたので順調です」

ダリルさんが上機嫌に笑った。

「それでリンゴの収穫をコーディーさんに頼み、今後のことを話し合いたいと思いまして来ました」

「そうですな。まずはリンゴの卸先を決めないといけません。モニカが上手くやってくれたようでクロード様とのアポを取ってきてくれました。ただ、交渉自体はタツヤ殿にしてもらわないといけません」

まあ、そうだろうな。

挨拶はモニカに任せたが、本格的な交渉は俺がやらないといけない。

「モニカ、ついてきてくれる?」

「もちろんです。このモニカにお任せを」

実に頼りになる子だ。

「クロード様がいる町までどのくらいかかるの?」

「クロード様がいらっしゃる町はハリアーという町なのですが、ここから徒歩で半日はかかります。この村には馬車がないので歩きとなります」

半日か……

「道は安全?」

「この辺りは盗賊は出ませんが、魔物が出ます。とはいえ、私の結界があれば防げます。まあ、大魔導士様であるタツヤ様なら問題ないでしょう」

そういや魔物っていうのがいたな。

見たことないけど。

「問題ないなら大丈夫か……ルリもミリアムもいるし」

「お任せを」

「私が出るまでもないにゃ。魔物なんかこの前のフィルマン以下にゃ」

そういやあのフィルマンはネームドの上級悪魔か。

そう考えると、大丈夫な気がしてきた。

「ダリルさん、リンゴの収穫が済んだらすぐにでもクロード様に会いに行きます」

「それがよろしいかと……モニカ、頼んだぞ」

「この私にお任せを」

モニカ、あんなに自信がなかったのに今は自信しかないな。

「それでダリルさん、村の皆から陳情や意見を集めていると聞きましたが?」

「ええ。私の話はそれです。今後の村の方向性を決めないといけません」

「ダリルさん、タツヤ様はそこまで大きくする気はないそうです。本業のことがありますし」

モニカが説明してくれる。

「そうですか……まあ、そうでしょうね。村の皆の意見にもありますが、村を大きくするのに反対というほどではないですが、不安を感じる者もいます」

意外だ。

村の皆は発展することを喜ぶと思っていた。

「というと?」

「村が発展するということは人が増えるということです。我らはこれまで我らだけでやってきました。そこによそ者を受け入れることができるのか、トラブルが生まれないかという不安です」

この村には30人程度が住んでいるが、家族みたいなものって言ってたしなー。

「なるほど……そういう意見もありますか」

わからないでもない。

そういうのはどこにだってあるものだし。

俺が悩んでいると、モニカが手を上げる。

「それについては私も意見があります。人が増えれば肥料や農具のことが漏れる可能性が高くなります。農具はまだ何とかなるでしょうが、肥料はマズいです。そして、それを隠し通すのは不可能でしょう。あの成長具合は異常ですし」

モニカはこれを話し合うためにさっきコーディーさんに説明させたんだな。

本当に有能だわ。

「確かにそうですね。では、受け入れを拒否しますか?」

「受け入れる余裕がないということで当面はそれでいいでしょう。資金が集まれば口の堅い奴隷を買うという案もあります」

ど、奴隷……

異世界ワードだ。

「奴隷か……」

「お嫌でしょうか?」

「うーん、気が引けるなー……」

そういう世界で育ってないし。

「奴隷以下の社会の家畜だったのに気にするんだにゃ……」

あ、そうだった。

俺、奴隷以下だったわ。

わはは……

「モニカ、俺は奴隷のことを知らないんだが、どんな感じなの?」

「奴隷というのは人頭税や年貢を払えなかった者が労働のために強制的に働くものですね」

税金を払えなかったら奴隷になるのか。

怖っ!

「俺らも人頭税を払わなかったら奴隷になるの?」

「さすがに数年程度ではなりませんよ。よほどのことがあればです。でも、飢饉とかになればよほどのことになります。その時は子供を奴隷にしたり、自分で奴隷の道に進むこともあります。餓死よりはましですからね」

死ぬよりかはいいのか。

「ここみたいな開拓村事業に参加しようとは思わないのかな?」

国から援助があるし、餓えることはない。

「奴隷の待遇はそこまで悪くありませんからね。過剰な暴力は禁止ですし、無茶な重労働もさせられません。そして、開拓事業はその無茶な重労働なんですよ。つまり、開拓村事業よりも衣食住が保証された奴隷の方が待遇は良いのです」

ここ、奴隷以下だったのか……

仲間……

「マジか……」

「まあ、それも人の考え方次第です。奴隷は勝手に結婚できませんし、奴隷の首輪で色々と制限がかかるので自由がありませんからね」

なるほどねー。

籠の鳥より辛い自由か。

どっちがいいかは俺にはわからない。

「奴隷って、いくらぐらいするの?」

「人によりますね。高いのは男女共に若い者です。年を取っていても技能を持っている者も高いですね。私もそこまでは詳しくないですが、金貨数十枚くらいだった気がします。あと、毎年の人頭税なんかの税金を肩代わりする必要もあります。まあ、働かせればいいので元は取れると思いますけど」

高いな……

いや、人の命というか人生を買うって考えればめちゃくちゃ安いんだけど、金貨数十枚も払える金がない。

「その辺は後々かな」

「それで良いと思います」

モニカがうんうんと頷いた。