軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第039話 男子高校生の思惑 ★

謎の上級悪魔を山田さんが倒した翌々日、俺は昼休みに昼食のパンを食べると、中庭を歩いている。

すると、前方のベンチにキョウカが腰かけていた。

いつもは髪形をポニーテールにしているキョウカだが、今日は朝から下ろしていた。

「キョウカ」

声をかけると、キョウカが俺の方を向き、笑顔になる。

「やっほー、ユウセイ君。病院はどうだった?」

俺とキョウカは山田さんに勧められたので昨日、学校を休み、協会が懇意にしている病院に行ってきたのだ。

「何もないな。傷一つない。キョウカは?」

そう聞き返しながら隣に腰かけた。

「あはは。私もないね。昔、ミスって切っちゃった手の傷痕すら消えたよ」

「すごいな」

「うん……すごい」

2人で空を見上げる。

「親に言ったか?」

「何をー?」

「その顔をやめろ」

「顔?」

キョウカがわざとらしく、指を頬に当てる。

「その張りつかせている笑顔だよ」

「ひどいこと言うね、君」

笑顔だったキョウカが真顔になる。

こいつは暗示でこれになるんじゃない。

暗示であのクラスの人気者になっているんだ。

「本性はそっちだろ」

「君は勘違いをしているね。どっちが本性とかはないよ。どっちも私さ。笑顔を振りまくチャーミングな私も人斬りキョウカちゃんも私。人は皆、二面性を持っているものなんだよ。私はそれを暗示で切り替えているだけ。だって、こっちだとイジメとは言わないけど、嫌われるだろう?」

何気に人斬りキョウカちゃんというフレーズを気に入ってるな……

「あっそ。で? 親には言ったか?」

「どうでもいいんだね……言ったって山田さんのことかい?」

「ああ。もちろんだ。あの上級悪魔を倒した力、それに何より、回復魔法とやらだ。俺達は確実に肋骨が折れていた。なのにあっという間に治ったぞ。あんなものは知らない」

俺達はあの時、起きていた。

ただ、上級悪魔をあんなに簡単に倒してしまった光景があまりにも衝撃だったため、気絶していたフリをしていたのだ。

「すごい人……その一言で良いんじゃないか?」

「良くないからだろ」

「ふふっ、その様子だと君は親に言っていないようだね?」

「当たり前だ。言えるかこんなもん」

まず疑われるし、何より、そんな術者を放っておくわけがない。

確実に引き入れようとする。

だが、山田さんはどう考えてもそれを望んでいない。

「私も言ってないよ。言う気すらない。何故だかわかるかい?」

「お前を使って引き入れようとするからか?」

「正解。ウチには男兄弟しかいないし、一族にも年頃の女性がいなくてね。その役目は私がなるだろう」

まあ、家に引き込むのは結婚するのが一番だからな。

ウチもそれを選ぶだろう。

「お前はそれが嫌なわけだ。そういう風には見えなかったけどな」

明らかにロックオンしている言動だった。

「ふふっ、タダシさんのお孫さんだったんだねー。道理でって感じだよ。桐ヶ谷さんが取り込もうとしたわけだ」

キョウカが含みを持たせながら笑う。

「取り込む? どういう意味だ?」

「いや、これはいい。えーっと、私が嫌かどうかだったかな? 嫌だねー。私は私の人生を行くし、伴侶は自分で見つける。そこに親や一族の意志はいらない。わかるかい?」

「至極、普通のことを言っているな。誰だってそうだろ」

今時、親が決めた相手と結婚なんてバカげてる。

時代錯誤すぎるだろう。

「そう……普通のこと。だから私が自分の意思で山田さんをもらうんだよ。誰にも邪魔させない」

自分で選んだわけね。

「同じことじゃね?」

「結果はそうかもね……でも、過程が違う」

「ちなみに、聞くけど、あの人のどこがいいんだ? 20歳近くも離れてるぞ」

よく山田さんが言ってるけど、犯罪じゃないか?

「関係ないね。私は本能に従う。だから強い人が好きなんだ。ずっと何かある人だなと思っていたがようやくわかった。ふふっ、大魔導士らしいよ?」

「なーんか、そんなことを言ってたな。あれ? 誰が言ったんだっけ?」

なんか微妙に記憶がぼやけているんだよな。

「そうだね。わからないね。まあ、そこはどうでもいいよ。とにかく、ユウセイ君、悪いけど、このことは君のところの親御さんには言わないでくれるかい? 君のお姉さんや従妹ちゃんと争いたくないんでね」

そうなるんだろうか?

あ、でも、あいつら、金持ちが好きだからあり得るかも。

山田さん、結構、儲けてるし。

「それはいいけど、あまり変なことをするなよ。山田さんが捕まるところなんか見たくないぞ」

「大丈夫だよ。上手くやる。ちょっとガードが固い相手だけどね。でも、絶対に私がもらう。桐ヶ谷にも一ノ瀬にもやらない。そして、橘にもやらない。山田キョウカって良い名前だと思わないかい?」

婿に入れるのではなく、嫁に行く気か……

本当に橘と切り分ける気だ。

「いや、悪い。さすがに橘の方がかっこいい」

「まあ、私も自分で言ってて、平凡になったなと思ったよ」

キョウカが苦笑する。

「キョウカの思惑はわかったわ。俺には関係ない話だ」

「君は男子だからね。でも、協力はしてもらうよ?」

「なんで?」

めんどくさい。

「ひどいことを言う。仲間じゃないか」

「仲間なん?」

「私は放課後、山田さんと会う約束をしていてね」

動くの早いなー。

あ、だから髪を下ろしているのか。

「俺、バイト」

「知ってる。それでその時にひと月とは言わずにこれからも一緒にやってほしいと頼むつもりなんだ」

そうなのか……

「俺も今度、会った時に頼むつもりだったわ」

「そうかい? じゃあ、同じチームの仲間じゃないか」

あー…そうかも。

「山田さんが了承してくれるか?」

実はそこが不安だった。

あの人、一人でやりたがっているし。

「そこは私に任せるといいよ」

「何? 女のテクニック?」

「男子はそれしか頭にないの? 普通に真摯に頼むだけだよ。山田さんは優しくてジェントルマンだから困っている私の頼みを聞いてくれる」

それ、かなりお前の私情と希望が入ってないか?

「じゃあ、ついでに俺も頼むわ」

「いいよ。仲間だからねー」

キョウカはにやーっと笑う。

「そんな仲間のキョウカにアドバイスだ。その笑い方やめろ。薄気味悪いし、引く」

多分、山田さんも引いている。

「えー、ひどくない? 普通に笑ってるだけじゃん」

キョウカが人斬りキョウカちゃんからいつものキョウカに戻った。

「急に変わるな……」

「とにかく、お願いね。別に変なことは頼まないから」

「はいはい」

めんどくさいと思いながら首を横に振った。