軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第259話 刀、良いなー

「……これ、食べるのかな?」

「……山羊汁っていうのは聞いたことあるけど、どうだろ」

高校生がヒソヒソと話している。

「食べませんよ。そういう食肉用ではありません。ウチは30人程度ですし、森が豊かなので食肉に困ってはいませんから」

モニカが苦笑いを浮かべながら説明した。

「良かった……」

「さすがにちょっとビビったよな。俺達が普段食べている肉もそうなんだろうけど、いざ見ると躊躇する」

それは俺もそう。

「人間は情けないにゃ」

猫さんはそう思うだろうね。

「一度、猪を捌くところでも見学なさいますか? 王都出身の私も最初はびっくりというか、ショックを受けましたが、慣れるものです」

慣れるかなー……

「俺はいいや」

「私も。可愛いのは無理」

キョウカでも無理なのか。

「獣があまり身近ではない国ですもんね。それでは牧場の方に行ってみましょうか」

俺達はモニカの案内で村の東の方に向かう。

すると、柵で囲まれた広い牧場に3匹の牛と2匹の馬が見えた。

さらには前にはなかった牧舎も見える。

「おー、牧場っぽい」

「テレビとかで見たことある感じだね」

それらと比べると、ちょっと狭いけど、ウチの村の規模を考えればこんなものだろう。

「おー、タツヤ様。それに皆様もお揃いで」

声がしたと思ったら牧舎の方にダリルさんがいた。

「こんにちは。牛が来たと聞きましたので皆で見に来ました」

「どうぞ、どうぞ。せっかくなので中で見てください。特に大人しい牛を選びましたし、馬も大人で優しい馬なので大丈夫です」

馬は蹴ってくるイメージがあったが、大丈夫なのか。

「じゃあ、ちょっと見てきますね」

「ええ。どうぞ」

ダリルさんが笑顔でそう言って牧舎の方に戻っていった。

俺達は柵の門を開けると、牧場の中に入る。

そして、ゆっくりと牛に近づいていく。

「山羊と一緒で草ばっかり食べてますね」

キョウカが言うように一心不乱に草を食べている。

「牛だしねー……モニカ、あれって乳牛なの?」

ホルスタインではなく、黒毛和牛にしか見えない。

「乳牛ですよ。すでにミルクも取ってます」

見た目和牛なのに取れるのか。

「ミルクがあるならチーズとかの加工品も作れそうだね」

「そうですね。いずれはそういうのも売り出せればと考えています」

まあ、優先順位は低いか。

「牛って間近に見るとでかいな」

ユウセイ君がぺちぺちと叩く。

「重そうだね。山羊もだけど、何気に初めて見た」

「俺も」

見ることなんてほぼないからな。

俺もないと思う。

「なんか社会科見学みたいになったね」

牧場見学。

「こういうのも良いなー」

「モニカさん、この子も食べませんよね?」

黒毛和牛だからそう思うのも無理はない。

まあ、黒毛異世界牛だけど。

「もちろんですよ。この子達はミルクを取るための牛です」

「へー……」

キョウカ?

どこ見てんの?

「タツヤさん、タツヤさん、馬が寄ってきましたよ」

ルリが教えてくれたので見てみると、ゆっくりと馬が近づいてきていた。

どんどん近づいてきているが、これまた思ってたよりも大きい。

「馬ってこんなにでかいんだな」

「ホントだね……ん?」

近づいてきた馬がキョウカを嗅ぎだした。

「臭いのか?」

「おい……殺すぞ」

人斬りキョウカちゃんだ。

「香水とか付けてるんじゃないかと」

「付けてないよ」

「じゃあ、親近感だな」

暴れ……

「ポニテ?」

「それ」

キョウカ、ごめんね。

「ふーん……モニカさん、この子は馬車用ですか?」

「そうですね。馬はこの子と……あっちで走っている子です。この子は体が大きく、強いので木材なんかを運搬する係です」

モニカが指差した先にはいつも入口の方にいた馬が元気に走っていた。

「楽しそうですね……近いなー」

馬は完全にキョウカを気に入ってるようだ。

「戦国武将だった前世を感じ取っているんじゃないか?」

「誰が織田信長か」

良いように言うね。

「モニカさん、これ、乗れるの?」

ユウセイ君がモニカに聞く。

「乗る……馬具がないので安定はしませんが、乗ることは可能ですよ。大人しい馬なので乗せてくれると思います」

「へー……戦国武将、乗ってみ?」

どちらかというと、幕末っぽいけどね。

「貴族夫人に乗れと? はしたない」

「あー、お前、スカートか」

俺、スカートというか、制服のキョウカに馬乗りされたけどね。

「ユウセイ君が乗ってみなよ」

ルリもモニカもスカートだから無理だし。

「山田さんは乗らねーの?」

「君の方が絵になるから」

「馬に乗れない辺境伯はマズいような気がするけどな」

戦争しないから大丈夫。

「お先にどうぞ」

「じゃあ、乗ってみるか……どうやって乗るんだ?」

ユウセイ君が馬に触れ、足を上げたが、当然、届かない。

「足をかける馬具がないもんね。押してあげる」

「なんかこえーな」

まあ、わからないでもない。

「ミリアム、ユウセイ君を浮かして乗せてあげなよ」

「はいはい。暴れるにゃよ」

ミリアムが尻尾を向けると、ユウセイ君の身体が浮く。

「うおっ! 何だこれ?」

「魔法らしいよ。俺はそれで何十メートルも浮かされた」

夢に出たね。

その後、落ちた。

「恐いなー……おっ、おっ? おー……」

2、3メートル浮いたユウセイ君はそのまま馬に跨った。

「どう?」

「思ったより高いな。しかし、本当に大人しいんだな。俺が乗っても全然、気にしてない」

馬はいまだにキョウカに鼻先をくっつけている。

「ユウセイ君、はい」

キョウカがユウセイ君に刀を渡した。

「おー、戦国武将!」

楽しそうで何より…………代わって、代わって。