作品タイトル不明
第253話 すごい信頼
「ん?」
家でゆっくりしていると、メッセージが届いた。
ミユミユ:今日はありがとうございました。すごく頼りになってかっこよかったです
リコリン:ちょっと不安になりましたが、私達も頑張りたいと思います
いきなり上級悪魔だもんなー。
山 田 :何か困ったことがあったら相談に乗るし、頑張ってね
ミユミユ:ありがとうございます
リコリン:キョウカの旦那、優しー
もうこの子達の中で俺はキョウカの旦那なんだろうか?
山 田 :旦那じゃないよー
ミユミユ:もうキスした?
リコリン:須藤さんにホテルで2人でいるところを見たって聞いたけど、本当?
須藤!
女子高生に何てことを言ってんだよ!
その後もきわどい質問が来たが、すべてスルーしながらもメッセージのやり取りをする。
そして、この日は八神さんや桐ヶ谷さんからの連絡もなかったのでそのまま家で過ごし、就寝した。
翌日、早起きし、待機していると、9時くらいに八神さんから連絡が来たのでホテルに転移し、1階のエントランスに降りる。
すると、ソファーに腰かける八神さんと思春期の女子高生2人がいた。
「あ、山田様。起きられましたか」
「寝るの早くない? 昨日、晩ご飯食べに行こうと思って、部屋に行ったんだけど、全然、起きてこなかったじゃん」
部屋にいなかったからね。
「ちょっと前日に徹夜しててね……それよりも八神さん、どうでした?」
八神さんの隣に座る。
「とりあえず、依頼は達成ということになりました。事情が事情なんで協会と九条、天海の両家から人を派遣し、スーパーを調べるそうですね」
「では、我々は帰ってもいいわけですね?」
「ええ。さっさと帰りましょう」
八神さんが立ち上がった。
「まあ、楽しい修学旅行でしたかね?」
「帰ろー、帰ろー」
女子高生2人も立ち上がったので受付に行き、チェックアウトする。
そして、駅に行き、新幹線で帰ることにした。
帰りの新幹線でも2人は騒がしかったが、退魔師関係の話がメインだったので問題なかった。
どうやらきわどい質問はメッセージだけなようだ。
そのまま新幹線車内で話をしながら過ごし、東京に戻ってくる。
「山田さん、2人は私が送っていく。上級悪魔と遭遇したが、今回は良い仕事で良かったよ」
1000万だもんなー。
「ええ、そうですね。2人もじゃあね。明日は学校に行きなよ」
「わかってます。またメッセージを送りますので」
「キョウカと仲良くねー」
2人が手を振ってくれると、解散となったので家に帰る。
この日も退魔師の仕事は休みなので家でゆっくりと過ごした。
翌日の木曜日は放課後に合流し、ユウセイ君に長野であったことを話した後に仕事をした。
そして、金曜になると、キョウカがご機嫌でウチにやってくる。
「いやー、学校も終わりましたよー。春休みです」
「良かったねー」
「はい! あ、でも、明日はマリエル様のところです」
キョウカのドレスを買いに行くのは明日ということになっているのだ。
お茶会もあるし、多分、一日中だろう。
「パーティーに参加することはないだろうけど、また着ているところを見せてよ」
「ダンスでもします?」
「それはしない」
無理、無理。
「じゃあ、ここでパーティーしまーす」
何のかな?
まあ、何でもいいか。
「ご機嫌だねー」
「2週間も休みですもん」
俺も長期休みの前はテンションマックスだったなー。
この日はご機嫌なキョウカのおかげで賑やかな夜を過ごした。
そして、翌日は朝からキョウカ、モニカ、ミリアムがマリエル様のところに行ったのでルリと2人だ。
とはいえ……
「ルリ、ちょっと出かけてきてもいい?」
テレビを見ているルリに聞く。
「ええ。どこかに行くんですか?」
「ちょっと桐ヶ谷さんに話を聞きに行こうかと思ってさ。遅くはならないから」
「わかりました」
ルリが頷いたのでスマホを取り出し、桐ヶ谷さんに電話をする。
すると、数コールで呼び出し音がやんだ。
『もしもし?』
「もしもし、山田ですけど、土曜なのにすみません」
『いえいえ、仕事です』
やっぱりか……
「ちょっとお話をしたいと思いまして」
『そうですねー……まあ、聞きたいことはだいたいわかります。例の喫茶店で話しますか』
「わかりました。これから伺います」
『では、お待ちしています』
電話を終えると、スーツに着替え、車で協会に向かう。
そして、駐車場に車を駐め、喫茶店にやってきた。
「やあ、山田さん」
喫茶店はいつものように客がおらず、奥で桐ヶ谷さんが待っていた。
「急に電話してすみません」
桐ヶ谷さんの対面に座りながら謝罪する。
「いえいえ、ちょうど一休みしたかったところですよ。それで話とは?」
「もちろん、先日の長野での依頼のことです」
「はいはい。ご苦労様でした。お金は今月中に振り込まれるそうですよ」
それはありがたい。
「どうも……それであの依頼なんですけど、目的は何ですかね?」
「九条さんと天海さんをあなたに近づけたかったんでしょ。ハニトラです」
まあ、そんな気はした。
「正直、あの2人からはそんな感じはしないんですが?」
「誰だって橘君にケンカを売るようなことはしたくないでしょ。あの子は対悪魔より対人の方が向いているレベルですし」
まあ……
「ノーコメントにさせてください」
「はいはい。まあ、あなたがしっかりしていればいいんですよ。私としてはあなたと橘君の組み合わせは色んな意味で良いと思ってます。ちょっと足を止めるところが見受けられるあなたと暴走機関車はバランスが良いです」
暴走機関車……
「ありがとうございますって言えばいいんですかね?」
「どちらでも……さて、山田さん、あなたが本当に聞きたいと思っているのはそれですか?」
「まさか。こんなことで桐ヶ谷さんを呼び出しませんよ」
これはついでに聞きたかったことだ。
「悪魔教団ですね?」
「はい。八神さんに聞いたと思いますけど、あのオーラフという上級悪魔は教団が喚び出した悪魔でしょう」
「それは間違いないかと思います」
あのスーパーが教団所有という時点で確実だ。
「オーラフはこの国の魔法使いがどの程度なのかを知りたいと言っていました。桐ヶ谷さんも名家の人達も悪魔教団はまだ終わっていないと確信している節があります。悪魔教団はこの国だけではないんですね?」
「はい。その通りです。これを山田さんにお渡しします」
桐ヶ谷さんが足元に置いてあるビジネスバッグからファイルを取り出し、テーブルに置いた。
「これは?」
「あなたと加賀美さんが見つけた教団員のリストのコピーです」
そう言われたのでファイルを手に取り、パラパラとめくっていく。
「多いですね……」
「それに載っているのは一部だと考えています。でも、外国の方の名前もあるんですよねー……」
「やはりですか……」
桐ヶ谷さんが言う通り、欧米人っぽい名前や中国人っぽい名前がチラホラあ……る……ん? んー?
「どうしました?」
「いえ……しかし、そうなると、やはり日本支部が潰れただけで悪魔教団は世界規模で現在も活動中なわけですか」
もちろん、異世界のことがあるから俺はそのことを知っていた。
「そうなります。実は海外にも私達と同じような悪魔を取り締まる機関があるのです。これまで一切、交流はなかったのですが、今回初めてコンタクトを取り、そのリストを見せました。そうしたらほとんどの国で悪魔教団という組織の名前が上がりましたよ」
「ほとんどですか……」
「はい。そして、これが厄介なんですよねー……海外のことは私達ではどうにもなりません。手出しできないんですよ」
それはまあ、そうだろう。
「どうするんです?」
「オーラフが日本からは撤退すると言っていたと八神さんから聞きました」
「ないでしょ」
「もちろんです。敵の言葉を鵜呑みにするほど、我々もバカじゃないですから」
だよね……
「では?」
「これまでと一緒です。悪魔は倒すし、教団は敵です。日本にいた教団は確実に潰しましたからあとは国外から入ってくる者達ですね。山田さんにそのリストをお渡しするのはもし、外国人と接触するようなことがあれば一応、リストと照らし合わせてくださいということです」
偽名を使われたら厳しいけどな。
「わかりました」
「それと山田さん、来年度から悪魔の褒賞金が変わります」
来年度ということは2週間後か。
「下がるんですか?」
「まさか……退魔師の方が減っていることと悪魔教団のことを考え、褒賞金を見直したんです。これにより大幅に上がりますのでこれまで以上に頑張ってください。特に上級悪魔はこれまでの倍にしますので何としてでも仕留めてください」
すげー!
「次は逃がしません!」
「お願いしますね」
「はい!」
話を終えたので協会まで戻り、桐ヶ谷さんと別れた。
そして、地下の駐車場に行き、車に乗り込む。
「ハァ……マジかよ……」
思わずため息が出て、ハンドルに頭を乗せた。
「どうしよ……」
知りたくなかった……
見るんじゃなかった……
「帰ったら相談かなー?」
桐ヶ谷さんからもらったファイルをめくり、先程、気になった教団員の名前を探していくと、すぐに見つけたのでじーっと見る。
「うーん……」
そこには確かに【ラウレンツ・ポートリエ】と書かれている。
いつぞやのパーティーで挨拶をしたクロード様の同期の伯爵様と同じ名前だ。
「偶然だよねー……」
でも、あの時、悪魔教団のテロが起きたんだよなー……
そして何より、ポートリエ伯爵のことをキョウカが好きになれそうにないって言ってたんだよなー……
キョウカが……
あの野生の勘に優れたキョウカが……