作品タイトル不明
第252話 品とは? ★
「ふむ……ウェアウルフでは相手にならんか」
ウェアウルフを倒すと、バックヤードからオーラフが出てきた。
立った姿は腰が曲がった老人そのものだ。
だが、油断をしてはいけない。
こいつは上級悪魔だ。
「何がしたいんです?」
「威力偵察みたいなものじゃな」
偵察……
「何かわかりましたか?」
「素晴らしい魔法だと思う。威力は一級品じゃし、無詠唱で魔法も速い。これほどの魔法使いがいるとは想定外じゃった」
「どうも」
べた褒めじゃん。
「だが、最初の氷魔法はいらん。慎重というか臆病じゃな、おぬし」
バレましたー。
「戦いを好まないもので」
「戦士ではないのう……まあよいわ。他の3人はそれ以下の魔力だし、だいたいわかった。さて、帰るか……」
「すみませんが、見過ごせませんね」
「ほう……」
オーラフが目を細めると、魔力が上昇していく。
すごい魔力だ。
「退魔師ですし、悪魔を祓うのが仕事なんです」
「すごいの、おぬし……ケロッとしとる。他の3人はビビっておるのに」
そう言われて、後ろを見ると、八神さんは汗をかき、九条さんと天海さんは数歩下がっていた。
「あなた以上の悪魔を知っているんですよ」
こいつよりもミリアムやロザリーの方が上だ。
「ほう…………うーむ、なるほど」
オーラフは目を細めて、俺をじーっと見てくる。
「何か?」
「おぬし、人間のくせに儂より魔力が高いな。それはビビらんわのう……」
大魔導士なんでってちょっと言いたい。
「祓わせてもらいます」
そう言って、オーラフに手を向けた。
「戦いを好まないビビりのくせにやけに好戦的じゃな」
1000万……じゃない、こいつは敵だ。
キョウカじゃないが、俺の勘がそう言っている。
「静寂ってどういう意味です?」
「みーんな、いなくなるって意味じゃな」
オーラフが醜悪な笑みを浮かべる。
「エアカッター!」
「ふん!」
エアカッターが飛んでいったのだが、オーラフが消える。
いや、棚の上に転移した。
「怖いのう……やはりこの国は当分、撤退かの? では、さらばじゃ」
「――エアカッター!」
オーラフに向けて、再び、風魔法を放ったのだが、またもや姿が消える。
「……転移で逃げたな」
ミリアムが言うように今度は魔力も消えていた。
「すみません。逃げたみたいです」
「そのようですね。魔力も気配も感じません」
八神さんがメガネをクイッと上げる。
「どうします?」
「それは依頼主に聞いてみないと……桐ヶ谷さんに電話してみます」
八神さんはそう言って、スマホを取り出し、電話をしだした。
すると、下がっていた2人が近づいてくる。
「さっきのが上級悪魔です?」
「すんごい魔力だったよね?」
「そうだね……2人は大丈夫?」
まあ、ケガがないのはわかっている。
「ビビりましたわ」
「上級悪魔はちょっと無理」
俺、上級悪魔に縁があるんだよなー……
「それにしても山田様はものすごくお強いんですね」
「あれだけ強かったらキョウカも怖くないわけだ」
いえ? 怖い……いやいや、怖くないよ。
明るくて良い子だよ。
「山田さん、ちょっといいですか?」
八神さんがスマホをしまいながら声をかけてきた。
どうやら電話は終わったようだ。
「どうでした?」
「桐ヶ谷さんに事情を説明したんですが、先方と相談するから待機しておいてくれって言われました。ちょっと時間がかかりそうなので今日はホテルにでも泊まれとのことです」
泊まりかー……
まだ昼前なのにそんなに時間がかかるものかね?
「わかりました。ホテルを取って、待機してましょう」
家に帰ろ。
「そうしますか」
俺達はスーパーを出ると、スマホでホテルを取り、駅の方に戻った。
ちょっと早いが、予約したホテルにチェックインすると、ちょっと眠いので寝ると3人に伝える。
そして、転移で家に帰ることにし、家の玄関に飛んだ。
「あ、おかえりなさい。お茶を淹れますね」
リビングに戻ると、ルリがいつもの濃い番茶を淹れてくれる。
「ミリアム、どう思った?」
「オーラフか? 強い悪魔だとは思うが、お前の敵ではないにゃ」
まあ、ミリアムはそう思ったから手を出さなかったんだろう。
「そうじゃなくて、偵察とか色々言ってたでしょ」
「この国からは撤退ともな……」
それそれ。
「異世界のことかな? 外国のことかな?」
「さあにゃー? こればっかりはわからん。でも、撤退ならひとまずは安心じゃないか?」
「本当にそう思う?」
「思わないにゃ。その言葉をわざわざ言ったのが気になる」
そうなのだ。
何故、あれを口に出した。
しかも、ミリアムが言うようにわざわざだ。
「一回目のエアカッターの時に転移で逃げればいいのに一度、棚の上に飛んだよね?」
「うん。そして、撤退すると告げてから逃げた。ブラフにゃ」
だよねー……
「悪魔教団かな?」
「他にいないだろ」
桐ヶ谷さんと相談かなー?
◆◇◆
「――ええ……はい。素晴らしい退魔師でしたね。魔力もすごかったですし、見たことない魔法を使っていました」
私はミユが電話しているのをじーっと見ている。
「そうですね……確かに素敵な方だとは思いますけど……」
電話の内容が予想できるなー。
「いえ、わかりました。では、失礼します…………バーカ!」
ミユは電話を終えると、悪態をついて、ベッドにスマホを放り投げた。
「パパさんでしょ? 何て?」
「山田様を落とせ、ですって」
でしょうね。
「やるの?」
「キョウカさんに斬り殺される未来しか見えませんけど!? わたくしは死にたくありませんわ!」
「だよねー」
キョウカはそういう女だ。
「バカらしい……橘と関係が悪くなりますし、良いことなんてないじゃないですか」
「優秀な子供が生まれるじゃないかー」
「わたくしには関係ありません」
まあね。
「でも、山田さんってすごいじゃないか」
「それは認めます。でも、わたくしは友人の男を寝取るような下品な女ではありません」
ミユは扇子を広げ、口元を隠しながら目を吊り上げる。
「愛人2号は?」
金髪のどかーんさんが1号さん。
「もっと嫌ですわよ!」
「まあね。でも、パパさんに言われたんでしょ? どうするの?」
「知ったことではありませんわ。適当に答えて、濁します。やはりさっさと家を出た方が良さそうですね。ユウセイさんやキョウカさんを見習うべきでしょう」
ユウセイ君は家を出て、協会に就職する。
キョウカに至っては、すでに山田さんに嫁ぐために橘を抜けている。
「それが正解か」
「リコも考えた方が良いですわよ。どうせ似たようなことを言われます。なんだかんだ言ってあの人達は古いんです。いまだに女を結婚の道具と思っている節があります」
だろうね。
口では好きにしろと言うが、いざこういうことになると、協会に行けって言ってきた。
狙いは確実に山田さんだろう。
でも、いくらなんでも相手が悪すぎる。
秒で刀を抜くキョウカは無理だって……
「八神さんに指導してもらいながら1年後の独立を目指す感じ?」
「月に数百万ですわよ? 親が何を言おうと遊んで暮らせます。山田様、ユウセイさん、キョウカさん、桐ヶ谷さん……使えるものは何でも使いましょう。結婚が女の幸せというのは否定しませんが、それは自分で選んでこそですわ。そして何より、最上の幸福とはマネーです」
品のない女が扇子を仰ぎながら手でお金のジェスチャーを作る。
「山田さん、ユウセイ君、キョウカ、桐ヶ谷さんをどう使うのさ?」
「山田様は甘えられるのに弱いタイプです。ユウセイさんは普通に頼めばいい。キョウカさんは適当におだてつつ、旦那様を褒めればいい。桐ヶ谷さんは…………やっぱりあの人はスルーでいきましょう」
うん。
何を考えているかわからないもんね。
「了解。じゃあ、そういう感じでいこうか」
「リコ、早速、山田様にメッセージを送りますよ。【今日はありがとうございました。これから不安ですけど頑張ります】です。これで向こうは【何か困ったことがあったら連絡してね】って返すでしょう」
こいつ、本当に品がないし、腹黒いな……