軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第242話 もう二度とは戻れない夜~

目の前に王妃様がいる。

しかし、前に見たような上品な笑みではなく、下品な笑みだ。

「王妃様? いや、ロザリーか?」

「タツヤさん、王妃様とのお茶会のことを思い出せるかい?」

お茶会……あれ?

何を話したっけ?

あ、これは……

「認識阻害か」

「御名答。殲滅の悪魔でも私の認識阻害は破れません。私は上級悪魔、色欲のロザリー。またの名をヴィオレットです」

やっぱり色欲の悪魔だった……

いや、そんなことよりも……

「ロザリーが王妃?」

「そうですよ。あ、素敵な贈り物をありがとうございます」

ロザリーが服の中からネックレスを取り出した。

それは俺が誕生日の贈り物で渡したネックレスだった。

「タツヤさん、本物だよ」

「そうみたいだね」

ここにいるのは少なくとも、俺達が会って話をした王妃様だ。

「良いネックレスですね。私のことを考えたセンスのあるものです」

モニカが一生懸命選んだからな。

「俺が辺境伯になることを知っていたのもマリエル様を知っていたのもそのせいか」

「ええ。陛下から聞きました。それとマリエルは良い女です。だから山田さんとの不倫を勧めたわけですね。背徳の愛は素晴らしいですよ。この前、ネットでNTR物を読みましたが、脳が震えました」

たちわりー……

「仲良いんじゃないの?」

「それはそれ。これはこれ……」

めっちゃたちわりー……

「ロザリー……なんで悪魔の君が王妃様なわけ?」

「そうですねー……それを話さないといけませんね。まあ、たいしたことではありませんよ。ヴィオレットという貴族令嬢がいたんです」

ん?

「いたとは?」

「とある有力貴族ですね。その娘は大変美しいうえに頭も良かったのです。そして、家柄も完璧でした」

すごいね。

「それが?」

「そんなに良い女なのも考え物で両親はこの子を王妃にと考えたわけです」

あの世界ならそれもわからないでもない。

「よくわかんないんだけど?」

「まあ、聞きなさい。王妃に勧められた彼女は王族主催のパーティーに参加させられました。そして、王様に見初められたわけです」

まあ、そんなスペックなら……

「ほうほう」

「ですが、彼女は嫌がりました」

「続けて、続けて」

気になってきた。

「実はなんと彼女には想い人がいたのです!」

「おー……なんか王道」

「タツヤさん……」

ごめん、気になる。

「そうです。超王道です。しかも、その男はその子の幼なじみである庭師です。当然、庶民です」

盛り上がってきた!

「それでそれで?」

「彼女は願いました。どうかその庭師の男と結ばれたいです、と……」

あ、もしかして……

「それを聞いちゃったの?」

「聞いちゃいました。おー、これは愛だ! 素晴らしい愛だ! と思い、その令嬢にあまーい言葉をかけたわけです」

悪魔だな。

「どんな?」

「その愛を証明してみろ。そうすればお前の願いを叶えてやると言いましたね。それで男の方を呼んで、目の前でセッ……おーっと! 未成年がいました! 危ない、危ない!」

こいつ、何してんだよ……

「ごめん、その辺はいいや。それでどうしたの?」

「私は令嬢の願いを叶えました。まあ、方法は簡単で入れ替わったわけですね。今頃、あの2人は別の国で幸せに生きていることでしょう。なんと子供が10人ですよ? 愛ですねー」

はいはい、愛だね……って10人!?

すげー!

「え? それでロザリーが王妃様?」

「そういうことですね。今も入れ替わったままです」

何年だよ……

「これからも?」

「もちろんです。まあ、陛下が死んだ数日後に死んだということで消えますよ」

「よくそんなことをするな」

「たかが数十年です。それに陛下も愛してくださいますから」

悪魔は長寿がゆえに俺達が長いと思える時間もすぐなわけだ。

「あのさ、陛下は知ってるの? 君がヴィオレットじゃなくて、悪魔ロザリーなのは」

「ええ、知ってます。知っていて、私を王妃にしているわけですね。まあ、それは仕方がないでしょう。私にハマった男は抜け出せません」

王妃様からいつものドスケベ……じゃない、ロザリーに変わる。

「悪魔教団も何も、まず自分の奥さんが悪魔かい……」

何してんだ、あの人……

「まあまあ。私は人に害をなす悪魔ではないのです。むしろ、子孫繁栄を願う優しい悪魔なのですよ。だからこそ、愛を司る悪魔なのです」

物は言いようだな。

ただのエロだろ。

自分が親しくしているマリエル様に不倫をさせようとしているくせに。

「あのー、王妃様? ここにいていいのか?」

キョウカがロザリーに聞く。

そういえば、王妃様が城を空けてもいいものだろうか?

「ええ。問題ありません。私は肉体を分けることができるんです。現在、あちらの世界で分身体がマリエルとクラリスとお茶会中です。いやー、2人共、綺麗なネイルをしてますねー」

これはマジだ……

「そんなこともできるんだね」

「当然ですよ。それをすると乱……おーっと! 未成年がいました! 危ない、危ない!」

こいつ、マジで何してんだよ……

「ロザリー、悪魔教団のことは?」

俺がロザリーに聞きたかったことはこれだ。

「んー? あまり知らないですね。興味がまったくないですから」

「こっちの世界にもいるし、あっちの世界にもいるんだよ? こっちの世界では喚ばれ、あっちの世界では君の国のことでしょ」

「知りませんって。私は愛のことにしか興味がありませんから。でも、あなた達には感謝していますよ。ゴミみたいな残虐と強欲を始末したのは大変すばらしいです」

ディオンとバルトルトか。

「バルトルトも悪魔教団?」

「あれは違うでしょうね。バルトルトは強欲の名の通り、すべてを欲しがる盗賊です」

やはり違うのか。

「ロザリー、これだけは教えてくれ。こっちの世界で討伐された悪魔教団はあっちの世界の悪魔教団だよね?」

「討伐? ふふっ、まあ、そうですね。本体はあちらの世界です」

「ロザリーは関わってない?」

「そんなことをするより、エロゲーをした方が100倍も楽しいです。まあ、退魔師モノをやってたらオリエに嫌な顔をされましたがね」

そりゃそうだろ。

あの人、退魔忍さんだし。

「わかった」

「聞きたいことは以上ですかね? 愛のアドバイスはいります?」

「いらない」

「聞いておいた方が良い気がしますけどねー……」

くっ……!

「聞くだけね」

「では……ポンコツ巨乳娘にスマホを買ってあげなさい。バカとロリがスマホを見ながら話をしている時の疎外感がやべーです」

…………はい。

「明日、携帯ショップに行きます」

「よろしい……ポンコツもバカもロリもちゃーんと愛してあげるのですよ? 何も愛とはセックスだけとは限りません。何でもないようなことが実は愛で幸せなのです……では、私はこの辺で失礼します。皆様方の愛が永遠でありますよう……ごきげんよう」

ロザリーは立ち上がってそう言うと、いつものように消えずにすたすたと歩いて帰っていった。