軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第241話 は?

ケーキバイキングをやっているホテルに到着した俺達は車から降りると、ホテルに入る。

そして、ケーキバイキングをやっているレストランに行き、店員に案内された席についた。

今日はこの前来たホテルとは違うところに来ている。

けっして、調査員の人に目撃されたからではなく、この前と違う方が色々なケーキが楽しめていいと思ったからだ。

席について、周囲を見渡すと、やはり女性客が多く、男性はいてもカップルらしく、女性との組み合わせだ。

「さて、タツヤさん……あなたはもう新兵ではないね? 戦い方はわかっているはずだ」

ノリノリだなぁ……

「いや、俺はそこまで食べられないよ。今日は君の幸せそうな顔を見に来たの」

「そ、そ、そう……? へへっ」

人斬りキョウカちゃん、こういうのに弱いな……

「そうだよ。ほら、取っておいで」

「橘家が長女、キョウカが参る」

キョウカがかっこつけて、 戦場(ケーキコーナー) に向かっていったので俺も立ち上がると、ケーキを取りに行く。

とりあえず、皿に好きなチーズケーキを乗せると、どれにしようか悩む。

ふと、キョウカの方を見ると、すでにケーキが皿いっぱいに乗せてあった。

「早っ……」

思わず言葉が漏れるくらいの早さだ。

俺は適当なケーキを乗せ、席に戻ると、待っていたキョウカとケーキを食べ始める。

「勉強を頑張ったかいがありました……おいひい」

キョウカはケーキを頬張り、実に幸せそうな顔をしている。

その顔を見ていると、本当に自分も幸せな気分になれた。

「本当に美味しいね」

「はい! 人生はケーキです!」

うんうん。

ルリもチョコレートを食べながら似たようなことを言ってたよ。

俺達はその後もケーキを食べていく。

確かに美味しいが、やはり量は食べられそうにないなと思っていると、キョウカが立ち上がった。

トイレかなと思ったが、すでに皿が空だった。

「さて、戦いはまだ終わらない……山田辺境伯夫人、キョウカ、出陣しますわ」

「……いってらっしゃい」

偽令嬢キョウカさんは空の皿を持って、再び、ケーキコーナーに行ってしまった。

すげーなーと思いながら残っているケーキを食べていく。

絶対にポテチバイキングがあったらウケるのになーって思っていると、ふいに肩に手を置かれた。

「ん?」

キョウカかなと思って、振り向く。

「辺境伯夫人とデートですかー……ケーキのデザートに奥様を頂くんですか? おすすめのラブなホテルを聞きます?」

そこにはにやーっと笑う超絶美人がいた。

「ロザリー……」

なんでいるんだよ……はっ!

「例のあの人は?」

キョウカの天敵。

「オリエですか? 残念ながら彼女は厄年のようです。先日、盲腸で入院しました」

インフルの次は盲腸……

踏んだり蹴ったりだな、あの人……

まあ、まったく可哀想とは思えないけど。

「あ、あの、なんでいるの?」

「別にいいじゃないですか。私も甘いものが好きなんです」

ロザリーがぺろりと唇を舐めた。

すげーエロい。

というか、めっちゃ良い匂いがする。

「ちょっと離れてもらえません? 魅了がきついです」

「山田さん、魅了は使ってませんよ?」

嘘だー……

「ふふっ、奥様が睨んでますよ」

ロザリーにそう言われて、前を向くと、キョウカがテーブルの向こうに立っており、無表情でこちらを見ていた。

「あ、キョウカ……」

「浮気現場を目撃されちゃいましたね、辺境伯」

「あの、ごめん。マジで離れてくれない?」

キョウカがこんな人の多いところで刀を取り出しちゃうじゃん。

「はいはい……」

ロザリーは離れると、キョウカが座っていた席に回り、腰かける。

キョウカも入れ替わるように俺の方に来て、隣に座ると、腕を取った。

「ふふっ、可愛い……どうぞ、奥様。食べてください」

「殺すぞ……」

もう完全に本当の戦地になってます。

「まあまあ。ちょっとお話をと思ったんですよ。山田さんは私に会いたかったでしょうしね」

「あん?」

「キョウカ、ちょっと黙っててくれる?」

「ふんだ……」

キョウカはケーキを食べ始める。

「よく俺があなたに会いたいと思っていたことがわかりましたね?」

「少し考えればわかるでしょう? ねえ、山田辺境伯?」

俺が辺境伯なことを知っている。

いや、もっと言えば、俺が辺境伯に陞爵する前から知っていた。

「ロザリー、君は何をどこまで知っているんだ?」

「ふふふ……さあね。前にも言いましたが、私が見えるのは愛のことだけなんですよ。だから見えたわけです。それでいいのではないのですか?」

こう言うってことは違うわけだ。

「ロザリー、君はこの世界の悪魔じゃないね?」

「そうですねー……まあ、教団から召喚の魔法陣で呼ばれたわけですからそうですね」

「異世界を知っている?」

「くくっ……笑えます」

ロザリーが手で口を押える。

「何が?」

「35歳にもなって異世界ですか? 夢見てますねー」

まあ、そうかもな。

「事実でしょ?」

「ふふっ、まあ、そうですね……そうだなー……一つ約束してくれるなら教えてあげましょうかね」

「約束?」

「御自分の仕える主を大事にしなさい」

は?

「いや、俺は誰にも仕えて……いや、陛下か」

「そうです、そうです。ちゃんと国のために尽くし、領民を守るのですよ? それが貴族の務め……」

「まあ……」

「くくっ、あー、ウケる、ウケる。山田さんは本当に楽しいですね?」

こいつ、どうした?

「え? おかしくなった?」

「それは最初からでーす」

まあ、そうだけども。

「タツヤさん……この人……」

キョウカが手を止め、ポツリとつぶやく。

「え?」

あれ? ロザリーが?

いつのまに黒髪から金髪に変わっている?

いや、急に別人になったのだ。

「素晴らしい贈り物をありがとうございます。そして、悪魔から救ってくれて感謝します、山田辺境伯、それにキョウカ夫人」

そこにいたのは…………存在感が薄いことで有名な王妃様だった。