軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第237話 ひえっ

「だと思ったわ……」

ユウセイ君が呆れる。

「いや、あなたもでしょう?」

「なんで好き好んでタダ働きをするんだよ」

まあ……

「俺はちゃんと考えてる」

あ、そうなんだ。

「嘘おっしゃい」

「すぐバレるような嘘をつくなよな」

そういやキョウカもだけど、ユウセイ君が出向した理由は知らないな。

「俺は一ノ瀬の家を継げない。兄貴がいるからな。そうなると、将来のことを考えないといけない。兄貴の手伝いでもいいが、俺は俺の人生を歩みたい。そう考えた時に協会で気楽にやるのもいいかもなって思ったんだ。それで本就職する前に体験できるだろうと思って協会に出向した。職業体験だな」

おー……

なんてしっかりした高校生なんだ。

「すみません……」

「ちゃんと考えてたし……」

何も考えていなかったらしい2人がへこんだ。

「お前らはどうせイケメンの金持ちと結婚すればいいやーって思ってるだろ」

「いや、いやいや!」

「お宅の姉妹と一緒にしないで」

2人が首を振って、否定した。

「違うのか……」

「お気の毒に……ユウセイさんは婚期が遅くなりそうですね」

「キョウカは? どうせ刀を振れるからだろ?」

多分、そう。

「今を生きる人達の平和のために刀を振るうんだ。悪いか?」

さすが人斬りキョウカちゃん!

かっこいい!

「偉そうなことを言ってますけど、早々に男に走ったそうじゃないですか」

「このおっさんな。まあ、見るからに魔力が高そうだし、上級悪魔を立て続けに倒したタダシさんの孫だろ?」

褒めてくれるのは嬉しいが、おっさんは響くなー……

「取ったら殺す。取ろうとしても殺す」

「キョウカさんは戦国時代か幕末に生まれた方が良かったのでは?」

「退魔師のセリフじゃねーし」

うん!

「自己紹介は済んだかな?」

八神さんがそう言うと、場の空気が一気に冷えた。

「ええ……」

「あ、どうぞ……」

九条さんと天海さんは引きつった笑みを浮かべて八神さんに場を譲った。

気持ちはすごくわかる。

絶対にインテリヤクザだ。

「あのー、この2人が出向していると聞きましたが?」

俺が話すしかないな……

「ええ。悪魔教団の事件のせいで退魔師が減ったそうでしてね。それで名家連中の家から人員を募集したそうです。学徒動員だそうですね」

あ、俺が桐ヶ谷さんに勧めたやつだ。

ごめんよ、2人共……

「そうですか。それで八神さんとチームを?」

女子高生とインテリヤクザの組み合わせははマズいのでは?

すんごいブラックな匂いがするんですけど……

「ええ。ちょっとの間でいいから面倒を見てくれと言われましてね。私もここ半年は海外で休暇をしていた手前、断りづらかったんですよ」

多分、この場にいる全員が海外という言葉を聞いて、『高飛び』が浮かんだと思う。

「半年もですか?」

やっぱり退魔師って儲かるんだな。

そして、あまり働かなくなるわけだ。

「ええ。香港は良いところでしたよ」

なんでいちいち嫌な連想をすることを言うんだろう?

いや、事実を言ってるだけなんだろうけど。

「新人教育みたいなものです?」

ウチもそんな感じで新人3人が組んでいる。

「ですね。ルーキーの単独行動を控えさせている方針だそうです。それで私に白羽の矢が立ちましたね。最初は若い子達で大丈夫かと思いましたが、可愛らしい学生で安心しましたよ」

その学生2人は安心してないですよー。

可愛らしいという言葉を聞いて、ビクッてしてました。

だって、褒めているんだろうけど、怖いもん。

どっかに売られそー……

「八神さんは長いんですか?」

「歴だけはね。ただ遊んでばかりですから」

もうやめてあげて。

天海さんが腕に注射を打つジェスチャーをして、九条さんがそれを見て、うんうんと頷いてます。

「そ、そうですか。それで今日は何しにここに?」

小学校には似つかわしくないぞ。

こればっかりは人のことを言えないけども。

「もちろん、仕事ですよ。山田さん達は?」

仕事……

あ、いや、退魔師ね、退魔師。

「私達もです。もしかして、バッティングしましたかね? 先程、体育館でてけてけを倒したところです」

「おや? そうなんですか……てけてけとは何だ?」

八神さんが九条さんと天海さんに聞く。

「そう呼ばれている悪魔ですわ。首無しライダーや口裂け女とかと同じような怪談で出てきますでしょう?」

「宙に浮く下半身が欠損したやつな」

「あー、懐かしいな。ふむ……ということは山田さん達がもう倒しましたか?」

八神さんが聞いてくる。

「ええ。ウチのキョウカが仕留めました」

「俺のキョウカ」

ちょっと黙ってて。

相手はヤクザさんだよ?

「そうですか……いや、それなら良かった。実はここは私の母校でしてね。それで何とかしようと思ったんですが、解決したのなら良かった」

八神さんがにっこりと笑う。

はい、怖いです。

「いやー、せっかくご足労いただいたのにすみません」

「構いません。こういうこともあります。指名依頼ではない限り、争奪戦ですからね。幸い、現在は仕事が増えていますし、そちらの方に回ります。おい、乗れ」

八神さんが顎をくいっとさせ、九条さんと天海さんに車に乗るように指示をした。

「は、はい……」

「ドナドナ、ドーナー……」

借金の形に売られた女子高生達が青い顔をして、黒塗りの車の後部座席に乗り込む。

「ああいう冗談が好きな年頃なんですかね?」

怖いんだって。

ただでさえ、怖い顔なんだからファッションと車を考えた方が良いと思う。

同僚としては心強い気もするけど。

「いやー、どうでしょう? 私もおじさんなもんで」

「お互いに苦労しますね」

いやー……

「まあ、わからないことも多いですが、良い子達ですよ」

「それもそうですね。では、これで。またどこかで会うこともあるでしょう」

八神さんは運転席に乗り込むと、後部座席にいる2人とスマホを見せ合いながら相談を始めた。

「山田さん、俺達も帰ろうぜ」

「そうだね」

俺達も車に乗り込み、すぐに発進させると、小学校から出た。