軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第219話 将来はまあ……

翌日の水曜日は午前中に魔道具の本を読み、昼前には早めの昼食を食べた。

そして、準備をし、ミリアムとモニカと共に王都の借家に飛ぶと、借家を出て、あるいてラヴェル侯爵のお屋敷に向かう。

「いつもと変わりませんね」

モニカが言うように街中は賑わっており、いつもとまったく同じだ。

「悪魔の件は公表してないんだろうね」

「公表できないだろ。街中にディオンが現れ、次は城の中にも悪魔が現れたとなると、パニックになるにゃ」

俺なら引越しを考えるな。

俺達は街中を歩いていき、ラヴェル侯爵のお屋敷を目指していると、門の前にはいつもの侯爵家の馬車が止まっていた。

「こんにちは、辺境伯。中でラヴェル侯爵がお待ちです」

これまたいつもの門番が馬車に乗るように勧めてきたので馬車に乗り込む。

馬車の中ではラヴェル侯爵が腕を組んで座っていたのでモニカと並んで対面に座った。

すると、すぐに馬車が動き出す。

「こんにちは。お待たせしてすみません」

「たいして待っておらんからよい。それよりもキョウカ夫人はどうした?」

まあ、聞いてくるか。

「ちょっと別件がありましてね。今回は私とモニカだけです」

「ふむ……悪魔退治が生業だったな。そっちか……」

いやー、学生さんなんですよー。

「そんなところです」

「そうか。マリエルがキョウカ夫人と会いたがっていたぞ。新しいドレスを仕立てたいそうだ」

マリエル様は本当にキョウカを気に入っているな。

「ありがとうございます。来週いっぱいは難しいですが、それ以降に相談しながら訪ねようかと思っています。マリエル様にも心配をかけましたし、キョウカもマリエル様に会いたがっていますので」

実際、キョウカもお茶会が好きらしい。

「わかった。妻にはそう伝えておこう」

「お願いします。それとクラリス様はどうでしょうか? あれから会っていないので気になっているんですが」

「うん? どうとは?」

「ケガがないのは聞いておりますが、まあ、ショッキングなものをお見せしたのかなと思いまして」

ああいう人とはいえ、貴族令嬢だ。

「あー、そういうことか。気にせんでいいぞ。あの子は強い。それにキョウカ夫人が街中に出た上級悪魔を倒した時もその場にいたんだろう?」

あ、そういえばそうだった。

「いや、大丈夫ならいいです。私は燃やしましたし、キョウカは斬ったのでトラウマにでもなってないかと心配しただけですので」

「そんなものでトラウマになるような心の持ち主では貴族にはなれんし、王族主催のパーティーには出席できん。あの場には子供もいたが、皆、気にしていないだろう」

貴族ってすげーな。

以前の俺なら夢に出るレベルだが……

「そうですか。なら良かったです」

「うむ。しかし、キョウカ夫人はすごかったな。魔法使いと聞いていたが、あれほど剣を振れるのは素晴らしい。マリエルからキョウカ夫人に剣を贈ると聞いた時は首を傾げたものだが、あれほどの使い手なら納得だ。私の部下に欲しいくらいだな」

キョウカ、べた褒めだな。

以前、生まれてくる時代と世界を間違えたと思ったが、こっちの世界の方が出世しそうだ。

まあ、今でも辺境伯夫人なんだけど。

「ありがとうございます。小さい頃からやっていたようですね」

詳しくは知らないが、キョウカの剣術がすごいのは確かだ。

「あれは王族を始め、多くの上級貴族が侍女に欲しがるぞ」

「侍女ですか?」

「上流階級の夫人や令嬢の護衛だ。時と場合によっては男が護衛をするわけにはいかんだろ?」

あー、それもそうだな。

風呂にトイレ、さらには寝所。

男性はマズい。

「いや、ウチの妻なんですけど……」

侍女なんてとんでもない。

「わかっておる。未婚だったらの場合だ。さすがにどこも辺境伯の夫人を勧誘はせん。下手をすると誤解され、戦争ものだぞ」

上の立場の貴族から自分の奥さんを寄こせって言われたらそういう意味ではないとしても誰だってキレるわな。

「なら良かったです」

「ちなみに聞くが、娘はどうだ? ルリ嬢だったか?」

「あの子はキョウカのように剣は振りませんよ。魔法使いですね」

しかも、すごい。

魔力は俺の方が上だが、腕は絶対にルリの方が上。

「そうか。そういえば、キョウカ夫人とは血が繋がっていないんだったな」

「まあ、そうですね」

「余計なお世話だと思うが、キョウカ夫人との間には子供はおらんのか?」

そういう関係ですらないです……

「まあ……」

「そうか……」

え? 何この空気?

「ラヴェル侯爵、奥様は悪魔退治の仕事がありますし、タツヤ様も村の目途が立ったばかりで生活が落ち着いていないのです。跡取りはまだ早いと考えております」

モニカが説明する。

「なるほど……そういうことか。てっきりキョウカ夫人に問題があるのかと思った」

問題?

あー、子供のことか。

「そういうわけではないですよ。ただ、そんなに焦ることでもないと思っているだけです」

そう、焦りは禁物。

年齢的なことはあるけどね。

「うむ。そういう方針なら問題ないだろう。貴殿は領民が30名程度だし、小さいと思っているかもしれないが、一応、領地の広さはとんでもなく大きいし、辺境伯という立場もある。今はまだ小さいが、将来はわからん。だからどうしても跡取りのことをどう考えているのか気になっただけだ。貴殿は大きくする気はないかもしれんが、貴殿の次はわからんからな」

それは俺の子供が考えることだから考えなくてもいいや。

しかし、子供かー……

「御忠告感謝します」

「うむ。まあ、貴殿は貴殿の考えでやるといい。複雑そうだしな……」

ラヴェル侯爵はチラッとモニカを見た後に窓の外を見た。