軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第210話 招かざる客

貴族からの挨拶も終え、ちょっと飲みすぎた気もするのでキョウカと共にバルコニーに出る。

「ちょっと寒いですけど、風が気持ちいいですね」

キョウカが言うように気持ちいい。

特に俺はここに来る前からラヴェル侯爵と飲んでいるから身体が火照っており、冷たい風が心地よく感じる。

「キョウカ、夫人の方々に囲まれていたけど、大丈夫?」

俺の方にも問い合わせがあったが、それよりもキョウカが囲まれていた。

「大丈夫ですよ。ちょっと話をしただけです」

「ならいいけど」

何時だろうと思い、スマホを取り出すと、時刻は9時を回っていた。

「こんな時間か。明日も学校なのにね」

「大丈夫ですって。こう言ったらなんですけど、慣れっこです。昔から学校終わりに修行や悪魔退治はしていましたし、中学の時なんか徹夜して、そのまま学校に行くこともありましたよ。まあ、授業中に寝てましたけどね」

本当に生きてきた世界が違うな。

「大変だね」

「そうかもしれませんね。でもまあ、それもあと1年です。大学には行きませんし、協会に入ったら私もユウセイ君も暇になりますよ。なので、タツヤさんのお手伝いでもします」

ありがたいね。

特にキョウカは貴族夫人という重荷を負わせている。

「ちなみにだけど、服装はどうするの? 制服はないよね?」

さすがに卒業したら制服は着れないだろう。

「街中が主ですし、胴着とユウセイ君の怪しい黒装束はきついなー……それも考えておかないといけませんね」

そんな格好をした男女と街中を歩きたくはないな。

「いっそリクルートスタイルにでもする? 俺、スーツだし」

「良いかもですねー。ものすごく動きにくいですけど」

そういう用途の服ではないからな。

「まあ、じっくり考えなよ」

「そうですねー……あ、タツヤさん、せっかくなんで写真撮ってもらえます? ユウセイ君に見せるんで」

あー、ユウセイ君がそう言ってたな。

「じゃあ、撮るよ」

カメラを起動し、スマホをキョウカに向ける。

「ちょっと待っててくださいねー……」

キョウカはバルコニーの柵に肘を置き、微笑みながら夜景を見だした。

すごく絵になるが、なんかかっこつけてる感があって笑えてくる。

「テーマは?」

「12時前のシンデレラです」

「何言ってんのさ」

俺は笑いながら写真を撮った。

そして、撮った写真をキョウカに見せる。

「おー! 良い感じですね! 待ち受けにしてもいいですよ?」

嫌だよ。

絶対に他の人に見せられないスマホになってしまう。

特に協会の人達に見られたら死ぬ。

「さすがにやめておく。帰ったら送るよ」

「お願いしまーす。さて、戻りましょう」

キョウカが偽令嬢キョウカさんに戻ったので会場に戻った。

会場の人達は変わらずに談笑していたのでラヴェル侯爵達がいるところに歩いていく。

「タツヤさん」

キョウカが声をかけてきたと同時に魔力を感じた。

そして、会場がざわつきだす。

「何だ? 魔力?」

「タツヤさん、あそこ」

キョウカが会場の中央を指差した。

そこはわずかだが、光っていた。

「あそこから魔力を感じる」

「というか、見覚えのある魔法陣だね」

確かに魔法陣が見える。

あれは……

「キョウカ、刀は持ってる?」

「もちろんだよ」

「陛下と王妃様のもとに行って」

「わかった」

人斬りキョウカちゃんが2人のもとに向かったので魔法陣に近づく。

「やはり召喚の魔法陣……なんでこんなところに」

ミリアムを連れてくれば良かったと思っていると、魔法陣の光が強くなった。

そして、魔法陣から二本足で立つ狼が2匹現れる。

「ウェアウルフ?」

以前もロザリーがいた教会に現れた悪魔だ。

だが、あの時よりも一回りも大きく、2メートルはゆうに越している。

さらには手に剣を持っていた。

「ウェ、ウェアウルフ!?」

「あ、悪魔だ!」

「衛兵っ! 衛兵っ!」

会場はパニックになり始めた。

すると、1匹のウェアウルフが陛下と王妃様のもとに駆けていく。

「陛下っ!」

「お逃げください!」

周りの貴族が陛下に声をかけるが、陛下や王妃様が逃げるよりウェアウルフの方が速い。

というか、王妃様は気を失っているようでぐったりとしていた。

陛下も逃げられないと判断したようで腰の剣を抜く。

しかし、ウェアウルフが陛下に到達することはなかった。

「こらこら。私を素通りするんじゃない」

キョウカが駆けるウェアウルフに向かって踏み込み、横から払うように刀を振る。

ウェアウルフはジャンプして躱したのだが、剣を持っていない左腕が落ちていた。

明確に陛下を狙っていたウェアウルフだったが、腕を落とされたことでキョウカを睨み、剣を構える。

すると、もう1匹のウェアウルフが陛下の方を見た。

「炎よ」

高そうな会場を燃やさないように威力を落として火魔法を使う。

すると、俺から視線を逸らしていたウェアウルフの足元から火柱が上がったが、避けられてしまった。

しかし、ウェアウルフは攻撃していた俺のことを見ており、ヘイトは買えたようだ。

「来るか……」

対峙しているウェアウルフが剣を構え、前のめりになる。

「冷静に……冷静に……」

相手は悪魔だし、見た目は怖い狼だ。

だが、バルトルトやディオンより弱いのはわかっている。

それに俺には……

心を落ちつかせているとウェアウルフが突っ込んできた

そして、剣を振り上げ、振り降ろしてくる。

しかし、次の瞬間、俺の視界は剣を振るウェアウルフではなく、無防備な後ろ姿を晒しているウェアウルフに切り替わった。

「食らえ! 炎よ!」

ウェアウルフは慌ててこちらを振り向いた。

しかし、それよりも早く炎が現れ、ウェアウルフを覆っていく。

そして、ウェアウルフはすぐに動かなくなり、灰に変わった。

これぞ必殺、転移で後ろに飛んで攻撃する不意打ちアタックだ!