軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第207話 お着替え

翌日、この日の昼間は家でゆっくりと過ごした。

そして、夕方になると、キョウカがやってくる。

「こんにちはー。すぐに着替えますね」

キョウカはすぐに俺の部屋に入り、あっちの世界の服に着替えて出てきた。

「キョウカさん、髪を整えますので座ってください」

「あ、忘れてた」

キョウカがコタツに入ると、モニカとルリがキョウカの髪を整える。

今日はマリエル様とどうせいるであろうクラリス様が相手だからポニテでも良いのだが、明日のパーティーに着ていくドレスを選ぶので合わせるために髪を整えるのだ。

「どう? どう?」

「キョウカさん、動かないでください」

「お姉ちゃん、偽令嬢お姉ちゃんになって」

「はい」

テンション高めのキョウカが落ち着いた雰囲気を出す。

そして、2人が手際よく髪を整えた。

「できました」

「完成です」

「2人共、ありがとう」

キョウカは偽令嬢キョウカさんのまま立ち上がった。

「じゃあ、行こうか」

「ええ。参りましょう」

キョウカが頷き、俺の腕を取る。

「ルリ、ミリアム、留守番をお願いね」

「わかりました。晩御飯を作って待ってます」

「先に食べるかもしれないけど待ってるにゃ」

『こいつ、絶対に食べるな……』と思いながらキョウカとモニカと共に王都の借家に転移する。

そして、借家を出て、ラヴェル侯爵の屋敷に向かうと、すでに門の前には馬車が止まっていた。

「あ、山田辺境伯、奥様がお待ちですのでどうぞ」

門番が馬車に乗るように促してくる。

「失礼します」

馬車に乗り込むとマリエル様とクラリス様が座っていたので俺、キョウカ、モニカの順番で対面に座った。

すると、すぐに馬車が動き出す。

「こんな時間になってすみません」

「構いません。あなた達にはあなた達の都合があるでしょう」

マリエル様は良い人だな。

「何から何までありがとうございます」

「新興貴族を助けるのも派閥の役目です。それにあなた達はよくやっています。それを考えればこの程度は当然のことです。それよりも娘は不参加でいいのですか? 夜会というのは子供の将来にも関係しますよ?」

ルリの嫁ぎ先かな?

やらんぞ?

「ウチの子はあまり表に出たがらないんですよ」

そう答えると、何故かマリエル様とクラリス様が顔を見合わせ、さっと俯いた。

「どうしました?」

「いえ……」

「別に……」

なんでだろう?

この人達、ルリのことになると、たまに冷たくなる。

「マリエル様、それよりも、明日のパーティーってどんなのです? 踊るんですか?」

げっ! 俺は踊れんぞ!

「明日はそういうパーティーではありません。普通の立食形式の歓談会です」

良かったー。

「なーんだ。ドレスって聞いたからそういうのを想像しました」

「そういう夜会もありますよ? あなたの旦那さんは絶対に参加しないって顔に書いてありますけど」

え? ホント?

「いや、ダンスは苦手でして……」

というか、したことないわ。

「まあ、見るからにそんな感じがします。キョウカさん、不慣れな男性とダンスをするものではありませんよ? 私も若い頃、あのバカ力に振り回され、ひどい目に遭わされました」

ラヴェル侯爵、金貨1500枚を軽々持ってたもんな……

「わかりましたー」

「よろしい。笑ってるあなたは明日、ダンスをする相手を見つけなさい」

マリエル様がニヤニヤしているクラリス様に忠告したが、そっぽを向かれた。

「ハァ……」

マリエル様がため息をつき、外を眺める。

「マリエル様、明日はどうすれば?」

「夕方の適当な時間にウチに来なさい。馬車を出します。その後は私達についていればいいです」

心強い。

まさしく金魚の糞だ。

「これだけは守れというものはあります?」

「特にないと思いますね。まあ、しいて言うなら王妃様におめでとうございますの一声をかけることです。主役ですから」

誕生パーティーだもんな。

「王妃様から要望があったネックレスをお持ちしたんですけど、いつ渡せばいいですかね?」

「出しなさい。明日、渡しておきましょう」

「では、お願いします」

ネックレスが入った木箱を取り出し、マリエル様に渡した。

すると、マリエル様が木箱を開け、中身を見る。

「ふーむ……クラリス」

マリエル様がクラリス様に木箱の中身を見せる。

「良いと思いますよ。王妃様が好きそうですし、似合いそうです」

「よろしい」

マリエル様は頷き、木箱を閉じて空間魔法に収納した。

「マリエル様、それは誕生日の贈り物ということで料金は不要とお伝えください」

「結構。たかが金貨数千枚より信頼を取るのが正解です」

マリエル様が深く頷くと、馬車が止まったので馬車から降り、店の中に入る。

店の中は広く、吹き抜けの2階建てとなっている。

棚に色んな色の布が収められており、奥には紳士服が飾られていた。

店員は5人いるが、4人が女性だ。

なお、他の客はいない。

「これはマリエル様、ようこそいらっしゃいました」

男性の店員が近づいてきて、姿勢よく一礼する。

「言っていた通り、辺境伯夫人を連れてきました」

マリエル様が俺達を紹介すると、店員が俺達に向かって一礼した。

「ようこそいらっしゃいました、山田辺境伯、キョウカ夫人。話はマリエル様より聞いております。本来ならキョウカ様に合わせて仕立てるところですが、時間がないということ……ですので、既製品を選んでいただき、それをキョウカ様に合わさせていただきます。もちろん、明日の夜会までには必ず、間に合わせます」

あ、既製品を買って終わりじゃないんだ。

「よろしくお願いします」

「では、キョウカ様、2階へどうぞ」

店員がそう言うと、女性の店員がキョウカを連れていき、クラリス様とモニカもそれを追っていった。

「では、辺境伯、我々はこっちです」

残っている男性店員と共に奥に行き、飾られている紳士服を見る。

「何か要望はありますか?」

「ないので任せます」

「かしこまりました。では、採寸いたしますので少々、失礼を」

店員は巻き尺みたいなものを取り出し、採寸していく。

そして、採寸が終わると、店員が飾られているいくつかの服を手に取り、俺にあてがっていった。

「こちらがよろしいかと思いますが、いかがでしょう?」

店員が勧めてきたのは黒の燕尾服だ。

「それで」

明日しか着ないし、何でもいいや。

「かしこまりました。では、裾直し等を済ませ、キョウカ様のドレスと共にラヴェル侯爵のお屋敷に届けておきます」

「お願いします」

自分の分が早々に終わったので入口付近に戻る。

すると、マリエル様が待っていた。

「マリエル様は見ないんですか?」

そう聞きながら2階を見上げる。

当然だが、ここからは見えない。

「何のためにクラリスを連れてきたと思っているんですか」

「あのー、つかぬことを伺いますが、いつもクラリス様です?」

ネックレスを選ぶ時もクラリス様を頼っていた。

やっぱりこの人……

「そうですね。あの子はセンスが良いのです。私は…………」

黙っちゃった……

ちょっと気まずい思いをしながらキョウカを待つ。

だが、どれだけ待っても奥から出てこない。

「時間がかかりますね」

「その言葉であなたがどれだけキョウカさんに寄り添ってないかがわかります。1時間でも2時間でも待ちなさい。本当なら1日コースですよ」

マジか……

「ラヴェル侯爵は?」

「付き合ってくれますが、待っている間に剣を磨きだすので連れてくるのをやめました」

怖っ。

服屋で何してんだよ、あの人……

「そうですか……」

「あなたも気を付けなさい」

そのままさらに1時間以上待つと、女性の店員が2階から手招きしてきたのでマリエル様と階段を昇っていく。

すると、奥にはモニカとクラリス様と共に白いドレスを着たキョウカがいた。

ドレスと言ってもウェディングドレスのような体積の大きいものではなく、フォーマルなドレスだ。

「おー、キョウカ、似合ってるね」

「そうですかー? えへへ」

照れているキョウカがかわいい。

「キョウカさん、ちゃんとしてみてください」

マリエル様がそう言うと、キョウカの表情が変わり、偽令嬢キョウカさんになる。

「おー、品がある」

「その言葉のチョイスもおかしいですよ…………キョウカさん、もういいですよ」

「どうでしたー?」

キョウカが普通のキョウカに戻った。

「問題ないと思います。あとは微調整をしてもらい、明日の夕方にウチに来て、着替えてください。化粧等もウチの者にやらせます」

「お願いします。あ、着替えてきます」

キョウカが店員と共に奥に行ったので俺達は1階に降りる。

そして、いつものローブに着替えたキョウカが戻ってくると、馬車に乗り、ラヴェル侯爵のお屋敷まで戻ってきた。

「遅い時間になりましたが、泊まっていきますか? ウチは構いません」

辺りはすでに真っ暗だ。

「いえ、大丈夫です。こちらも準備がありますので」

家でルリとミリアムが待っているのだ。

あと、キョウカは明日も学校。

「そうですか。では、明日の夕方、ウチに来なさい」

「わかりました。本日はありがとうございました」

「ありがとうございましたー」

俺達は頭を下げると、馬車から降り、借家に向けて歩いていく。

「タツヤさん、周りに人はいませんよ?」

キョウカが周りを見ながら教えてくれた。

「じゃあ、転移するよ」

俺達は転移をし、家に帰った。

「おかえりなさい。ご飯にしますか?」

リビングに戻ると、ルリがコタツから出て、立ち上がる。

「うん。キョウカはどうする?」

「せっかくなんでいただきます」

「じゃあ、皆で食べよう」

俺達はちょっと遅めの夕食を食べることにした。

もちろん、ミリアムはすでに食べ終わった後だった。