軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第190話 黒塗りの高級車に黒スーツ……

俺とミリアムは表に回って正面玄関の前で桐ヶ谷さん達が来るのを待っていたが、寒いので車の中にいる。

「ロザリーのことを何て言おう?」

「そのまんまを言うしかないんじゃないか?」

「使い魔って?」

通じる?

「あー……使い魔の説明がいるな」

「こっちの世界で悪魔を使役した人っているのかな?」

「どうだろ? あっちの世界でもだが、悪魔は基本的に敵だし、キョウカやユウセイの家の歴史を見るからにいなさそうにゃ。ただでさえ、使い魔になろうなんていう変わり者の悪魔は少ないし」

変わり者の悪魔が首を横に振った。

「ミリアムは使い魔でいいの?」

「猫は人間のそばにいた方が幸せになれるにゃ。ちょっと寄っただけで美味しいものをくれるし、外猫より家猫の方が暖かいにゃ」

悪魔以前に猫だからか。

「ミリアムはウチの子だからねー」

助手席にいるミリアムを抱く。

「はいはい。山田、私のことを桐ヶ谷に言ってもいいぞ」

ん?

「いいの?」

「ああ。桐ヶ谷はお前を買っている。悪いようにはしないにゃ。適当に爺さんから受け継いだって言うにゃ。死人だし、どうとでもなるにゃ」

まあ、実際にそうだしな。

「うーん、じゃあ、ミリアムは低級悪魔ということで」

「それでいいにゃ。見た目は弱そうな猫だし。実際は爪を振るえば山が削れるにゃ」

冗談か?

冗談に聞こえないんだが……

「桐ヶ谷さんが俺達を捨てたら?」

「それでもどうとでもなるにゃ。この殲滅……じゃない、怠惰の悪魔ミリアムに任せるにゃ」

おー!

頼りがいがあるぞー!

さすがは怠惰さんだ!

怠惰、すごーい!

怠惰、怠惰。

「あ、来た」

ミリアムを撫でていると、車が2台やってきた。

全部、黒塗りの高級車であり、協会の人達だということがわかる。

「山田もいっそ外車でも買ったらどうだ? 金はあるだろ?」

「うーん、今の車でいいや。それよりも磯釣り用の釣竿を買おうと思っているんだよね」

「買えよ。私は忠猫と自負しているからいくらでも付き合ってやるにゃ」

食べる気満々だなーっと思いながらも車から降りる。

すると、2台の車も停車し、中からスーツを着た桐ヶ谷さんを始めとする5名の協会の人達が降りてきた。

その中には須藤君もいる。

「こんちはーっす」

須藤君が挨拶をしてくる。

「こんにちは……」

すまぬ……

「どうしたんですか、山田さん? 元気ないですね。というか、その猫は何ですか?」

どうやらミリアムは透明になる魔法を解いたらしい。

「ウチの子です。可愛いでしょ」

「可愛いっすね。ウチは犬を飼ってますけど」

なんかミリアムがイラッとした気がした。

「山田さん、猫はまあいいとして案内をお願いします」

桐ヶ谷さんが苦笑いを浮かべた。

「あ、こっちです」

俺は先導して、中に入る。

「本当に豪華な家っすよね。どれだけ悪事を働いたんだか」

「須藤さん、それを見ることになりますよ……」

本当にすまん。

「嫌な言い方っすね」

「須藤さんは例の取り締まりには?」

「俺ら調査員は参加してませんよ。仕事はその後です。その日は飯が喉を通りませんでしたけどね」

そんなにひどかったのか。

「私を恨まないでくださいね。私はちゃんと調査員の方を選ぶように言いましたから」

「……すげー嫌な予感がするんですけど」

須藤君が顔をしかめる。

「須藤君、君なら大丈夫だよ」

桐ヶ谷さんがいつもの胡散臭さ100パーセントの笑顔を浮かべた。

「あ、はい」

圧が……

俺達は廊下を歩いていき、寝室までやってくる。

「ここが寝室ですね」

そう言いながら扉を開け、穴があるベッドの方に向かった。

「穴っすね。映画とかで見たことがある抜け道って感じです」

「確かにそうですね」

須藤君を始めとする調査員の人達と桐ヶ谷さんが穴を覗き込んでいる。

「中は狭いですが、深さは数メートルってところです。それから横道があり、また梯子があります。そこを登れば裏の家の書斎です」

「なるほど……しかし、山田さんはよく見つけましたね。俺らも調査しましたが、魔力をまったく感じなかったし、全然わかりませんでしたよ。何かそういう特殊な魔法でもあるんっすか?」

須藤君が聞いてくる。

「いや、以前に橘さんが相手の気持ちになって考えると良いと言ってたんですよ。名古屋支部の調査もそれで見つけました」

まあ、名古屋支部の調査はキョウカが見つけたんだけど。

「相手の気持ちねー……さすがは彼女さんっすね。あんなことをする悪魔の気持ちにはなれませんよ」

普通はね。

でも、キョウカは性格的にハンターだから……

あと、彼女って言うな。

「まあ、そこまで深く考えないでもどういう行動を取るのが正解かを考えればいいんですよ」

「それでこの穴を見つけたんっすか?」

「ええ。逃げるなら寝室かと思いましてね。この部屋って窓がないでしょ」

そう言うと、調査員の人達が部屋を見渡す。

「ないっすね。確かに違和感ですわ。俺は起きたらまずカーテンを開けるんで」

俺も日の光を浴びたい。

「それでここを重点的に調べていたら見つけたんです」

「なるほど。今後の参考になりますわ。あざっす」

須藤君が軽く頭を下げた。

「では、皆さんはここを通って調べながらその書斎に向かってください。大人数は通れそうにないので山田さんと私は表から回りましょう」

桐ヶ谷さんが穴の中に入りたくないというのはわかった。

「了解っす。じゃあ、一番若い俺から行ってみます」

「須藤さんは度胸がありますね」

躊躇がない。

「いや、山田さんや加賀美さんが通った後でしょ? 余裕っすよ。あ、ネズミとかゴキブリとかいました?」

「いないんで安心してください。でも、暗いんで気を付けてくださいね」

「大丈夫っすよ」

須藤君はペンライトを取り出し、足元を確認しながらゆっくりと降りていく。

「では、山田さん、参りましょうか」

「ええ」

俺と桐ヶ谷さんは調査員の人達にこの場を任せ、裏に回ることにした。