軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第184話 例のあの人

翌日、この日は月曜のため、キョウカは学校だ。

俺達は朝からルリ、ミリアムと例の電気や電波を繋ぐ魔法を相談している。

すると、スマホの着信音が鳴った。

「山田、桐ヶ谷にゃ」

「んー? あ、ホントだ」

スマホには桐ヶ谷さんと表示されている。

「出るにゃ。きっとお前が大好きな金の話にゃ」

「よーし」

スマホを手に取ると、通話ボタンを押し、耳に当てる。

「もしもし?」

『あ、山田さん? おはようございます』

当然だが、桐ヶ谷さんだ。

「おはようございます」

『今、お忙しいです?』

「いえいえ、全然です」

『あ、そうですか……最近は仕事をしてないようですから忙しいのかなと……一応、言っておきますけど、もう仕事を再開しても結構ですよ?』

あー……

「ちょっと休みにしているんですよ。一ノ瀬君がバイト強化週間に入っているんです」

『なるほど……夜間の外出を控えてもらってましたからね。一ノ瀬君が一番損害があったわけですか』

「みたいですね。あ、桐ヶ谷さん、ちょっと相談なんですけど、一ノ瀬君や橘さんは今、給料をもらってないわけじゃないですか?」

前に話してたやつをお願いしておこう。

『そうなりますね。以前にも話しましたが、一ノ瀬家と橘家とそういう話をつけています』

「まあ、それは協会や2人の家のことですし、教育方針等もあると思いますので私がどうこう言うことじゃないです。でも、2人が高校を卒業して協会に正式に就職したらこれまでの実績を加味してもらえませんかね? 10級スタートではなく、9級とか8級スタートにするとか……」

『ふーむ……2人はウチの退魔師になるわけですか?』

「一応、卒業後も3人で頑張ろうという話にはなってますね。まあ、まだ先の話なので確定ではないですけど」

何があるかわからんからな。

『なるほど……確かにそうなると、考えた方がいいかもしれませんね。今回のことに関しても山田さんチームとして動いてきたわけですし』

「そうなんですよ。それでいて、私だけ依頼料をもらうわけでしょ? 2人は歳の割にはできた人間なんで不満は言ってこないですが、私だけ階級が上がってお金をわんさかもらってるのがどうも気になってしまうんですよ。実際、私が高校の時なら割に合わねーって思います」

俺、小さいから。

『まあ、私も思いますね。うーん……橘君はともかく、一ノ瀬君はどうでしょうかねー? 最近の若い子は淡白というか自分を見せてくれませんのでわかりません』

それはそう。

でも、あの子は食うことばっかり。

「あれ? 橘さんは?」

ともかくって?

『おや? 聞きたい?』

あっ……

「い、いや、なんでもないです」

夫人でしたね。

『何も言いませんけど、気を付けてくださいね。チームというのは色んなことで瓦解しますから』

「はい……」

色んなことね。

『まあ、頑張ってください。それと実績を加味するということは上と協議してみます。ウチとしても能力のある者はより上に行って、活躍してほしいですからね』

「ありがとうございます」

『いえいえ……では、こちらの用件に入りますね。山田さんが2人を気にしつつも大好きなお金の話です 』

待ってましたー!

「ど、どうですかね?」

『まず、残虐の悪魔ディオン討伐依頼の成功報酬ですが、橘君の刀にも残滓がありましたし、討伐に成功したと判断しました。これにより、山田さんに700万円をお支払いします』

おー!

「ありがとうございます!」

『それはこちらのセリフですね。悪魔教団の人間をすべて捕らえるのは難しいかもしれませんが、ディオンだけは討伐しなければならない悪魔でしたからね。その名の通りの危険性と仲間の仇討ちです』

キョウカ、ナイス!

「頑張りました!」

『はい、ありがとうございます。次にですが、山田さんはディオンの討伐に名古屋支部での調査、さらにはこれまでの実績を加味し、6級に昇格します』

ろ、ろ、ろ、6級!

「200万ですか!?」

『はい、200万です』

軽なら毎月、車が買えるじゃん!

「ありがとうございます!」

『喜んでもらえてなにより。報酬に関しては今週中に振込みますし、今月から給料日に200万円が振り込まれますのでご確認ください』

「はい!」

男爵になった時より100倍嬉しい!

『さて、山田さん、もう少し稼いでみませんか?』

ん?

「何です? 仕事ですかね?」

『ええ。ちょっと山田さんに依頼をお願いしたいんですよ』

この月収200万の山田男爵に?

うーん……やっぱり農家みたいだ。

当たらずとも遠からずだけど。

「何です? さっきも言いましたけど、一ノ瀬君がいませんからチームでは動けませんよ?」

『あ、いや、これは山田さん個人への依頼です。2人は不参加でお願いします』

不参加……

「また内緒です? 正直、厳しいんですけど」

『わかってますよ。山田さんは優しい方ですから彼女さんに詰められたらしゃべってしまうんでしょう』

良いように言うな。

抜き身の刀を持ったJKに馬乗りにされるんだよ。

「そういうわけではないんですけどね。単純に命をかけて戦う仲間に隠し事が嫌なだけです」

これも俺の気持ちであり、嘘は言っていない。

『まあ、そういうこともありますね。ただ、今回は内緒ではないですし、2人にしゃべっても構いません。ただ、参加は許可できません』

ふーん……なんでだろ?

「どういう依頼ですか?」

『悪魔教団の幹部の家を掴んで搜索したんですが、不自然に何も出てこなくてですね。山田さんに調査してほしいんですよ』

調査の依頼か……

「調査だったら橘さんも連れていっていいですか? あの子、勘とかすごいんで」

一ノ瀬君は無理でもキョウカは大丈夫だろう。

レッスンも終わったし、今日もどうせアイスを食べにくる。

『いやー、先程も言いましたが、橘君の参加も認められません』

「なんでです? あの子達の家に知られたくないことでもあるんですか?」

『いえいえ……もったいぶっても意味ないのではっきり言いますが、今回の仕事は単独ではなく、別の退魔師さんと協力してもらうんですよ』

へー……

「誰です?」

『加賀美オリエさんです』

例のあの人じゃねーか!

「それは橘さんは無理ですねー」

というか、本人が絶対に拒否だろう。

キョウカの天敵だもん。

『でしょー。彼女はちょっと未成年の学生さんには刺激が強すぎます』

ちょっとかな?

「なんでその人なんです?」

『加賀美さんも調査のプロフェッショナルなんですよ。この前の名古屋支部の調査も山田さんに断られたら加賀美さんにお願いする予定でした』

あー、そういえば退魔忍だったな。

「すみませんが、今回はなかったことに……」

『ですか……一応ですけど、依頼料を聞きます?』

「一応、聞いておきましょう」

念の為ね。

そう、念のため。

『依頼料は100万です。成功報酬は成果によりますが、300万はお約束できます。あ、もちろん、個別にですよ。山田さんと加賀美さん双方に支払われます』

「やりましょう」

『もう何も言いませんよ……』

電話越しにでも桐ヶ谷さんが呆れているのがわかる。

「ウチには育ち盛りの娘とお腹を空かせた猫がいるんですよ」

あと甘いもの好きと大食いとお酒を水だと思ってる子。

『はいはい……じゃあ、お願いしますね』

「仕事はいつからです?」

『いつでもいいですよ。早い方がいいですけど』

まあ、こっちも陛下のことがあるし、早めに終わらせておきたい。

「じゃあ、今日はどうでしょう?」

午後からかな?

『大丈夫ですよ。じゃあ、地図を送りますので確認をお願いします』

「あれ? 加賀美さんは?」

『協力と言いましたが、足並みを揃えなくて結構です。都合もあるでしょうし、何より、できたら会いたくないでしょ』

うん。

「わかりました。午後から調べてみます」

『お願いします。では、これで……』

桐ヶ谷さんがそう言うと、電話が切れた。