軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第182話 夢は叶う! そう魔法があればね!

翌日の日曜日はユウセイ君がバイトで来なかったが、キョウカは朝から来ており、ルリとスマホでゲームをしていた。

「そこはね、こうするんだよ」

「こうですかね?」

「そうそう。ルリちゃん、上手ー。すごーい」

「…………はい」

ルリの頬がちょっと緩んでいる。

そんなルリを微笑ましく見ていると、扉が開き、モニカがやってきた。

「タツヤ様、おやすみのところ申し訳ありませんが、ハリアーの町から職人が来ております」

モニカが俺の横に正座で座り、用件を言う。

「職人?」

「はい。温泉の排水施設の件と例の道の舗装の件です」

「え? 一緒に来たの?」

「職人には職人の組合があります。そこの組合長さんが今回の舗装の件の説明に来られたんですが、排水施設ならすぐにできるということで若い職人さんを数名連れてこられました」

おー、そういうことか。

「じゃあ、話を聞きに行こう。ルリ、キョウカ、一緒に行く? ……ゲームしてる?」

留守番かな?

「行きます」

「温泉って何です?」

あ、キョウカには説明してなかった。

「そういうのを作ろうと思ってね」

「へー……私もついていってもいいですか? ちょっと気になります」

「うん、おいでよ」

ルリとキョウカがコタツから出ると、ミリアムも出てきて、俺の肩に乗る。

毛並みが気持ちいいどころか温かくて最高だ。

「私も行くにゃ」

「じゃあ、皆で行こう」

俺達はリビングを出ると、研究室をくぐり、外に出た。

「あれ?」

キョウカが数歩歩き、左横の伐採した平地を見る。

「ここに温泉というかセカンドハウスを作ろうと思ってね」

「セカンドハウス?」

聞き覚えのない言葉のようでキョウカが首を傾げた。

「まあ、別荘みたいなものかな? 前にこの村でスローライフを送りたいって言ったでしょ? そのために第2の家って感じ」

「へー……第2の家ってことはここに移住するわけじゃないんです?」

「こういう生活に憧れはするんだけど、実際、東京って便利でしょ」

何でも揃っている。

「あー、確かにそうですね。それにこっちの世界にも魔道具がありますけど、生活の便利さは日本の方が上ですよね」

トイレ、お風呂などの水回りはもちろんのこと、エアコンやコタツなんかもそうだ。

「そういうこと。まあ、少しでも便利にしようと思って、電気や電波を転移させる魔法を研究中だけどね」

「何ですか、それ?」

「俺の魔法使いとしての研究。こっちの世界にテレビやスマホなんかを持ってきても何も映んないし、ネットにも繋がらないでしょ。それを繋ぐ魔法」

爺さんの魔法や研究を受け継いだ俺だが、自分でも魔法を作ってみようと思ったのだ。

そう思った時、欲しい魔法は何だろうと思い、これが思いついた。

「すごいことを言ってますね」

「大魔導士なんだよ」

「おー! すごいです! かっこいいです!」

いやー!

この子は本当に上手だなー。

「まあ、そういうわけでここに第2の家を作ろうと思っているんだよ。それでまず思いついたのが温泉というか露天風呂」

「あー、この前の温泉は良かったですもんねー」

そう言うと、ルリとモニカもうんうんと頷いた。

「だね。それで今からそのための魔道具を設置してくれる業者さんが来るんだよ」

「なるほどー……あの穴ですか?」

キョウカが平地の端の方に空いている穴を指差す。

「そうそう。とりあえず、穴だけは魔法で空けた。あとは石とセメントで何とかしようと思っている」

ネットで調べたが、そこまで難しそうではなかったし、普通にセメントってネットで売ってる。

「タツヤさん、楽しそうですね。子供みたいです」

キョウカが笑った。

「そりゃ楽しいよ。夢だからね」

どう考えても会社勤めだった時には叶わない夢だが、今ならできる。

時間も人も金も魔法もあるのだ。

「ふーん……そういうの良いですね」

「キョウカもないの?」

「女の子の夢は昔から相場は決まってますよ」

あ、はい……

「昨今は自立と個性を大事にするとかなんとか……」

「私は己の本能と勘に従うんです。それが間違ったことはありませんね」

あ、はい……

「そっかー……キョウカはもし、セカンドハウスを作ろうと思ったらどうする? ちょっと参考にしたい」

他意はない。

「うーん……ここに家を作るならいっそ研究室と繋いでしまったらどうです?」

ほう……!

「繋ぐか……この研究室に穴を空け、られる……か?」

いける?

「いや、そこまでしなくても屋根と簡単な柵というか壁を付けたら離れみたいになりませんかね? 実家はそういう感じで増築してましたよ。二世帯住宅ってやつです」

さすがは名家。

「なるほど。しかも、森しかないから拡げ放題だ」

「この森は全部、タツヤさんの土地ですしね。その気になれば大豪邸も建てられますし、ゴルフ場も作れます」

さすがに大豪邸を建てる気もゴルフ場を作る気もないが、家をいくらでも増築できるのはすごい。

「良いアイディアかもしれない」

まさかキョウカからナイスアイディアが出るとは……

やはり発想というのはどこから出てくるかわからない。

あ、バカにしているわけはなく、若い子からっていう意味。

「タツヤ様、とりあえず、セカンドハウスの構想についてはその辺りにしておきましょう。お客様がお待ちです」

モニカが笑いながら諫めてくる。

「あ、そうだったね。行こうか」

俺達はこの場をあとにし、村に向かった。