軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第180話 偽令嬢キョウカさん ★

交渉に行っていたフェリクスが馬車に乗り込んできた。

「ご苦労。どうだった?」

「お待たせして申し訳ありません、クロード様。交渉自体は上手くいきました」

私はリンゴ村が気になったので直接見にきたのだ。

とはいえ、さすがに私が直接交渉するのははばかられるのでフェリクスに任せた。

「そうか……村の様子はどうだ? ここから見る限り、普通の村にしか見えん」

開いた門から見えるのは休墾中の畑や木で作られた家くらいである。

「中も同じですよ。普通の農村です。まあ、家はかなり丈夫に作られているように見えますね」

確かにな。

「この村からリンゴだけでなく、木材やその加工品も仕入れているんだったか?」

「ええ。この大森林の木は質が良いですからね。それに開拓村の者なら木材の扱いも上手いのでしょう」

あの家を見るとそう見える。

「それだけではないだろうが、まあ、大魔導士か」

「おそらくは……」

今さら驚くことでもないか。

「交渉には誰が出てきた?」

「最初は前村長のダリル殿です。その後に山田男爵が娘さんとモニカ殿を連れてやってきましたので話をしました」

そういえば、娘がいるんだったな。

「夫人は?」

「いませんでしたね。まあ、モニカ殿がいましたし……」

「やはり愛人か?」

「見たことがない良質な服を着ていました。贈り物でしょう」

服は意中の女性にしか贈らんからな。

しかし、そうなると愛人と一緒に娘もいたのか?

それはいいのか?

「どんな感じだった?」

「やはり村や領地の実権を握っているのはモニカ殿ですね。山田男爵も関わっているようですが、モニカ殿に頼りきりです」

あれだけ優秀ならな。

部下に欲しいが、あれは金銭でどうにかはならんだろう。

「愛人が家を乗っ取りでもするか?」

そういうのも歴史的にないこともない。

ましてや夫人が女子しか生んでいないのなら将来的に不安が残る家だ。

「どうでしょうかね? 上級悪魔を瞬殺した夫人がいるんでしょう?」

物騒な嫁だな。

「まあ、他所の家のことを心配しても仕方がないか」

野暮ってもんだ。

「その通りかと。とにかく、道の整備は了承をもらえました、向こうも争う気はなさそうですね」

「それは良かった。さすがにラヴェル侯爵とは争えん」

あそこの家は王家とも繋がりが深い大貴族だ。

「山田殿は争いを望んでいる感じではありませんね」

「そういう人間なんだろ。祖父も人と関わらない感じだったし、魔法使いは特殊な人間が多いからな」

「かもしれません。それはそうと、モニカ殿がお土産を持たせてくれました」

フェリクスがそう言って、カゴを渡してくる。

中身は2つのリンゴだ。

「2つか。お前とお前の嫁の分か?」

「私とクロード様の分でしょう」

私が来ていることに気付いたか……

「見られたか?」

「いえ、私のような老体が来ていることから予想がついたのでは? この寒さは骨身にしみます」

そういうことか。

フェリクスがいれば私もいると思ったわけだ。

しかし、フェリクス、ちょっと嫌味臭いぞ。

「まあいい。帰るぞ。このリンゴはお前にやる。奥さんと食べろ」

「ありがとうございます」

ハァ……まあ、隣にできた新しい領地の領主はまともそうだし、上手くいきそうならそれでいいか。

◆◇◆

俺は家に帰ると、ネットでのこぎりを始めとする工具と娯楽になりそうなトランプなんか注文した。

そして、部屋で休んでいると、学校終わりのキョウカがやってくる。

「こんにちはー」

「いらっしゃい。学校終わりなのに悪いね」

キョウカはこれからマリエル様のところでレッスンだ。

「全然、いいですよー。これも妻の務めです」

こうやって考えると、貴族って奥さんも大変なんだなって思うわ。

田舎のウチですらこれなんだもん。

「キョウカさん、マリエル様が待っているでしょうし、早速参りましょう」

「はいはーい。着替えてきます」

キョウカは軽い感じで返事をすると、俺の部屋に入った。

「モニカ、ミリアム、お願いね」

「お任せを」

「了解にゃ」

しっかり者の2人がいれば大丈夫だろう。

と、ようやく思えるようになった。

「お待たせしましたー。山田キョウカでーす。趣味は花を愛でることと斬ることでーす」

思えなくなってきた……

「頑張って……」

「あれ? ウケない?」

ほぼいつもの君じゃん。

「マリエル様に失礼がないようにね」

「大丈夫ですって。こう言ったらなんですけど、クラリス様の方が100倍失礼です。あの人、平気でマリエル様のお皿にあるお菓子を取りますよ?」

もしかしたらマリエル様はそういう子の方が好きなのかもしれない。

「本当におてんばな人だね」

「良い人なんですけどねー」

それはそう。

「まあ、レッスンは大変だろうけど、頑張ってきてよ。陛下の前だからね」

「任せてください。私には暗示があるのです」

キョウカが刀を取り出し、抜いた。

そして、刃をじーっと見る。

「人斬りキョウカちゃんはマズいでしょ」

「物静か……私は上品で物静かな令嬢……」

おー! そういう暗示もできるんだ!

すごい!

「ふぅ……モニカさん、マリエル様を待たせてはいけませんし、そろそろ参りましょう」

キョウカが涼しげに笑う。

「おー!」

あのバカ……じゃないキョウカが知的な雰囲気に!

もうずっとそれでいなよ。

「そうですね……あの、大丈夫です? 無理してません?」

「してませんよ。これもまた私です。最近は夫の私を見る目が非常によろしくない気がするので汚名挽回です」

あ、暗示でも頭が良くなるわけではないんだ。

そりゃそうか。

「さようですか……ミリアムさん、申し訳ありませんが、よろしくお願いします」

「わかったにゃ」

ミリアムはモニカの腕の中に飛び上がると、尻尾を上げて、転移した。

この場には俺とルリだけが残される。

「さっきのお姉ちゃんの方が良いよね?」

「そう思うんですが、無理無理感が強いです。あと、暗示をかけて物静かになっても自己主張が強い気がしました」

それは本人の資質だから仕方がないよ。