作品タイトル不明
第164話 どっちにゃ?
ユウセイ君とキョウカの親からあっさりすぎるくらいに許可を得ることができた。
「じゃあ、一緒に行こうか」
「任せとけ」
「了解です」
ユウセイ君とキョウカが頷く。
「こっちで桐ヶ谷さんに電話をしておくよ。詳細がわかったらまたメッセージで送るから」
そう言うと、ルリがおでんを持ってきたので夕食にすることにした。
そして、いい時間になったので2人を送り届けると、家に戻り、桐ヶ谷さんに電話をすることにした。
『もしもし』
時間的に出ないかもと思ったけど、普通に出た。
「もしもしー? 夜分遅くにすみません。今大丈夫でしたか?」
『大丈夫ですよ。ここのところはずっと残業で仕事です』
バタバタしてるって言ってたもんなー。
「お疲れ様です。先ほど、一ノ瀬君と橘さんと話したんですけど、2人も参加するそうですし、親御さんも問題ないそうです」
『わかりました。まあ、そうでしょうね』
「あのー、一ノ瀬君のお父さんも橘さんのお母さんもあっさり頷いたんですけど、こんなものです? 前から気になってたんですけど」
特にキョウカのお母さんね。
『そんなものです。生まれた時からこういう世界にいるとそうなっちゃうんですよ。別に子供がかわいくないとかそういうのじゃないです。それが当たり前なんです。実際、ウチもそうですよ』
すごいなー。
「まあ、わかりました。どちらにせよ、私が大事なお子さんを預かっていることには変わりはないので守ります」
『山田さんは本当にできた人ですねー。将来、老いて働けなくなっても指導員とかになれますよ』
絶対に俺が普通の考えなんだと思うけどな……
まあ、職に困らないならそれでいいけど。
「どうも……それで作戦はまだですかね?」
『概ね決まっているんですが、人の配置がまだでしてね……でも、山田さんチームに作戦はありません。指定した場所に行って、例の悪魔を探して倒してください』
俺達はそんなもんか……
「どこです?」
『あとでメールを送りましょう。金曜の夜9時前にはそこで待機していてください。悪魔が出なかった場合は作戦終了まで待機です。何かあれば随時連絡します』
「わかりました」
『よろしくお願いします』
桐ヶ谷さんはそう言って電話を切った。
「よし……金曜までは待機だな」
仕事はできないだろうし、リンゴ村の方も今のところは用事がない。
やることないし、上級悪魔に備えて魔法の勉強でもするか……
◆◇◆
悪魔教団の逮捕作戦に加わることにした俺達は1週間を思い思いに過ごした。
といっても、キョウカとユウセイ君は学校があるし、夕方にはウチに来て夕食を食べるといういつもの日常だ。
その間、俺はルリやミリアムから主に戦闘用の魔法を教えてもらっていた。
ミリアム曰く、俺の長所は魔力の高さとコントロールであり、短所は圧倒的な経験のなさらしい。
だからこそ、手数を増やし、なるべく冷静に対処しないといけないらしい。
そして、ついに金曜日となり、学校を終えたキョウカとユウセイ君が家にやってきた。
「2人はやっぱり制服なんだね……」
アイデンティティか?
「実はちゃんとした戦闘服もあるんだが、真っ黒だし、暗殺者みたいだから好きじゃない」
暗殺者って……
「私はこの前の袴です。不評だったんでやめました」
不評じゃないよ。
良い意味でも悪い意味でも似合いすぎてたんだよ。
「まあいいけどさ……ご飯を食べたら行こうか」
「9時だもんな。持たんわ」
「食べてからですよねー」
俺達はルリが作ってくれたトンカツを食べると、少しゆっくりする。
そして、いい時間になったので準備をし、車に乗り込んだ。
もちろん、ルリとモニカは留守番である。
「山田さん、結局、悪魔教団の本部ってどこなんだ?」
車を走らせると、後部座席のユウセイ君が聞いてくる。
「なんか港の倉庫みたいだよ」
「港? 船で逃げそうだな」
「警察と連携しているからそっち方面も封鎖しているんだってさ」
「すげー。映画みたいだ」
俺もそんな気分。
まあ、この業界にいて、異世界で貴族になっている俺はその比ではないが……
俺は車を走らせ、現場に向かう。
すると、作戦決行の15分前には指定された場所に到着した。
「ここですか? 海は?」
キョウカが窓の外を覗きながら聞いてくる。
ここは数十台は止められそうな広さの駐車場しかなく、海は見えない。
「海はもっと先だね。桐ヶ谷さんが言うには教団の人間が逃げる場合はここに来るらしい」
「へー……確かに何台か車はありますね。しかも、高そう……」
キョウカが言うようにこの駐車場に明らかな高級車が何台も停まっていた。
「もし、教団の人間が逃げてきても俺達はスルーね。別のところで捕まえたり、泳がせて他の基地を見つけるらしい」
「あー、なるほど。ここだけとは限らないし、もし、逃げるならそこに逃げるからそこも摘発するわけだ」
ユウセイ君が感心したように頷く。
「そういう計画だってさ。ただ、悪魔がいたら車を出て、討伐する。特に上級悪魔ね」
「人間はスルーで悪魔は討伐ね。わかりやすくていいな」
「だね」
配慮してくれたんだろうな。
この子達は度胸あるし、実力もある。
実際、リンゴ村を襲った盗賊団の時も人間相手にも戦っていた。
でも、やはりまだ高校生だ。
「ミリアム、悪魔の気配は?」
キョウカの膝の上で丸まっているミリアムに確認する。
「ないにゃ。それどころか人の魔力も感じない」
「わかった。じゃあ、時間まで待機ね。それと悪いけど、エンジンは切るね」
エンジン音なんかで気付かれたくないし。
「わかった」
「ミリアムちゃんが暖かいから大丈夫です」
いいなー……