軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第162話 超高給取り山田

俺は600万円を手に入れ、さらに月収100万円の高給取りになることを桐ヶ谷さんに告げられたが、まだ話はあるらしい。

「山田さんが名古屋支部の男子更衣室で召喚の魔法陣を見つけたことである疑惑が浮かび上がりました」

「内通者がいるかもしれないってことですよね?」

そこまで簡単に忍び込めた人物がいるっていうことだ。

そして、敵にそこまで忍び込めるすべがあるなら召喚の魔法陣なんかを使う必要はない。

つまり協会の人間に裏切り者がいる。

「はい。このことを協会本部が調査をしました。具体的には生き残った職員に聴取することですね」

「どうだったんです?」

そう聞くと、桐ヶ谷さんが目を閉じ、首を横に振った。

「あれ? 空振りでしたか?」

「いえ……電話に出ないので自宅を訪ねたところ、遺体で発見されました」

死んだのか……

「自殺ですか?」

「他殺です。調べてみると、その職員はかなりの借金を抱えていたようですね」

金か……

「口封じですかね?」

「そう判断しました」

「別の生き残りの方は?」

「調べたところ、シロでしたね。ただ復帰は無理そうです。かなり心にきているみたいでしたから」

同僚が全滅したらそうなるか……

「それは仕方がないでしょうね。じゃあ、振り出しですか?」

「いえ、本部の上層部は内通者が名古屋支部だけにいるとは考えなかったようです。まあ、当然ですが……」

そこは俺もそう思う。

タイマー協会の中枢は東京本部だ。

「本部も調査ですか?」

「はい。バタバタして時間がかかったのはそのせいです。何しろ表立って動けませんし、信用できる者しか動かせませんからね。具体的には悪魔教団と関係ないとわかっている者達です」

「そんな保証がある人がいるんですか?」

「いますよ。例えばですが、私や一ノ瀬君、それに橘君のような名家と呼ばれる家の者です。ここはさすがに関係ありません。悪魔教団なんかと繋がるメリットがありませんし、家同士が繋がっており、そういう外部の組織が入り込む余地はありません。我々も無駄に歴史を積んでないですからね。むしろ、そういう新興組織は明確な敵です。古い家は新しいものを嫌うんですよ」

なるほど。

よくわからないけど、そういうものなのか。

「他に信用できる人はいるんです?」

「いますよ。山田さんのように確実に保証がされている退魔師さんや職員さんです。そういう者達を使って、探りました」

前から気になってだけど、俺、そんなに保証があるのかな?

爺さんは怪しい大魔導士でルリに至っては戸籍ないぞ。

もしかして、その辺も認識阻害の魔法の効力なんだろうか?

「まあ、私は関係ないですよ」

「わかってますよ。そもそも山田さんは私がヘッドハンティングしたんですから」

あ、それもそうか。

俺って志願して協会に入ったんじゃなくて、桐ヶ谷さんに誘われて入ったんだった。

「その節はありがとうございます。おかげで良い暮らしができるようになりましたよ」

「いえいえ」

「それで調査の結果はどうだったんです?」

気になるのはそこ。

「本部でのクロが4名。現在、調査中ですが、今のところ、全国の各支部で8名がクロでした」

多い……

想像以上だった。

「そんなにですか?」

「はい。そんなにです。やはり皆、借金などの問題を抱えていましたね」

マジかよ。

「あのー、大丈夫なんですか、それ?」

「大丈夫じゃないです。ですので、一度、再編を含めて職員を洗おうという計画が進んでいます。こういうことがあって、非常にバタバタしているのです」

そりゃ大変だわ。

俺の昇格を決めているのも職員さんだろうしな。

「大変ですね」

「ええ。大変です」

桐ヶ谷さんがしみじみと頷いた。

「あのー、つかぬことを伺ってもいいですかね?」

「どうぞ」

「職員に内通者というか裏切り者がいるのはわかりましたが、それって私の情報も漏れてませんかね?」

特に家の住所や家族構成。

「あー、それは大丈夫です。大事な退魔師さんの情報は一般職員は知ることができません。というか、ほぼ調べられませんね。まあ、単純に尾行とかありますから完璧とは言えませんけど」

尾行……いや、それはミリアムがいるし、大丈夫か。

「なら良かったです。ウチには小さい子がいますからね」

まあ、ルリは強いから問題ないとは思うし、この家には結界が張ってあるから大丈夫だとは思うけど。

「心配をおかけしてすみません。本来なら退魔師さんが安心して悪魔を退治できるように補佐するのが協会の役目なんですけど」

「いやまあ、桐ヶ谷さんもその退魔師さんでしょ」

「そうですけど、私は協会の運営にも携わっていますので」

この人、実はめちゃくちゃ偉い人じゃない?

よく言っている上の方って自分じゃ……

なんかそんな気がする。

「そうですか……あ、それで内通者から情報は?」

「はい。今回はバッチリ掴めました。そして、ここからが本題です」

本題……

「何でしょう?」

「結論を言いますと、悪魔教団の根城がわかりました」

マジかよ。

「東京です?」

「ん? わかるんですか?」

やっぱりか。

「話を聞く前にこちらも報告です。名古屋から帰る際に道中でロザリーに会いました」

さすがにキョウカと旅館に泊まった時とは言わない。

「例の上級悪魔ですか……それで?」

「その際にロザリーが悪魔教団と手を切ったことを聞いたんですが、理由が名古屋支部を襲った残虐の悪魔ディオンという上級悪魔が嫌いだからだそうです。さっさと東京に帰って討伐しろって言われましたね」

「ほう……つまり魅了が厄介そうなロザリーは出てこない?」

「おそらくは……」

まあ、出てこないだろうな。

そもそもそういうのに興味がなさそうだったし。

あるなら最初に会った時に戦闘になっている。

「なるほど……それで東京と」

「はい。違いました?」

「いえ、合ってます。そして、我々は敵が動く前に討伐することを決めました」

まあ、そうなるか。

しかし、討伐ね……

それって悪魔だけなんだろうか?

「頑張ってください」

「はい。それで指名依頼です」

だと思ったよ……

「何のです?」

「教団の人間は協会が警察と連携して捕まえます。問題は悪魔です。特に上級悪魔ですね。名古屋支部を壊滅させたその残虐の悪魔ディオンは確実にいるようですしね」

まあ、いるわな。

「依頼内容は残虐の悪魔ディオンの討伐ですか?」

「そうなります。受けますか?」

また上級悪魔かよ……

「私一人ですかね? 一ノ瀬君と橘さんは?」

「それは相談して決めてください。あと、本人達が良いと言っても向こうの家がどういうかはわかりませんのでその辺はちゃんと確認してくださいね」

あー、確かにな。

ユウセイ君の親とは面識はないけど、もし行くなら電話しておくか。

「わかりました。2人が夕方に来るので相談してみます」

「よろしくお願いします」

多分、行くって言うだろうなー。

「ところで、なんで私に指名が来たんです?」

「実績です。直近でネームドの上級悪魔を2人も倒しているのは山田さんだけですしね」

まあ、そうだけども……

というか、もう1人倒している。

もちろん、村を襲った強欲のバルトルトだ。

「あのー……」

「わかってます。報酬の話をしましょう」

この人、わかってるなー。

話が早くて好き。

「どんな感じです?」

「受けてくだされば300万円、成功報酬としては700万円をお支払いします」

まさかの1000万円!?

ミリオネア!

「そ、そんなにですか?」

「それほどの相手ということです。強さではなく、名古屋支部を壊滅させた絶対に討伐しないといけない悪魔です」

あ、それもそうか。

「わ、わかりました。具体的にはいつです?」

「今週の金曜です。時間は夜の9時。できたら今日中に返事をください。山田さんにお願いした理由の一つにすぐに会えて返事をもらえるからというのがあります。他の退魔師さんは連絡を取るのにも一苦労なんですよ」

今のところ、他の退魔師さんは例のあの人しか会ったことがないんだけど、皆、忙しいのかな?

「わかりました。いっせん、じゃない、この仕事を受けます!」

「今日中とは言いましたけど、今すぐじゃなくてもいいんですけど……」

桐ヶ谷さんが呆れる。

「やります。一ノ瀬君と橘さんはわかりませんが、私一人でもやりましょう」

ミリアムがいるから大丈夫だろ。

「そうですか……では、お願いします。また詳細な作戦や計画をお知らせしますのでまずは一ノ瀬君と橘君が参加するかどうかの確認をお願いします」

「わかりました」

「ありがとうございます。では、私はこれで」

桐ヶ谷さんはお茶を飲み干すと、立ち上がり、帰っていった。

「ふぅ……」

1000万円かー!