軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第015話 計画

昨日、仕事を辞めた俺は土曜日なのに早めに起きた。

ちょっとストゼロを飲んだから頭が痛いが、こういうのも回復魔法でどうにかなるので普通に朝食を食べ、食後のコーヒーを飲む。

「じゃあ、異世界の村をどう発展させるかを考えていこうか」

「はい」

「わかったにゃ」

今日、早く起きたのは午前中にそういう会議をしようということになっていたからだ。

「まずだけど、村長って何をすればいいと思う?」

「私は知らないにゃ。こういうのはルリに任せるにゃ」

まあ、猫というか悪魔だしね。

「ルリはどう思う?」

「あちらの世界の村長はこちらの世界の村長のように決まった仕事はないでしょう。悪い言い方をすれば独裁でも構いません。要はタツヤさんが好きになさればいいと思います」

えー……

「それ、いいの?」

「さすがに限度がありますけどね。そのためのモニカさんです。だから逆に言うと、モニカさんをどうにかすれば独裁も可能なんです。あそこは辺境で王都からも離れていますからね」

あくまでもそういうことも可能ってことね。

「そこまではしないかなー。リスクが大きいし、権力に興味もない。大都市じゃなくてもいいよ」

「そこです。まずはどういう村にしたいかを考えるべきでしょう」

なるほどねー。

「どういう村か……普通に暮らせる安全な村かな」

「ふむふむ……」

ルリがタブレットにメモしていく。

このタブレットは仕事用に買ったものだが、もう使わないのでルリにあげたやつだ。

「普通っていうのはどっちの普通にゃ? こっちの世界の普通は向こうの世界ではハードルが高いにゃ。魔法や魔道具はあるけど、電気も水道もないにゃ」

ミリアムが聞いてくる。

「そういえば、異世界の村をあそこしか知らないな……魔道具って何?」

「こっちの世界の水道や電灯みたいなことができるものにゃ。例の扉の先の家にあるにゃ」

そういえば、何かあったな……

よく考えたらあの家は異世界なんだから水道も電気も繋がっていない。

「そういうのを配置できないのかな?」

「できますけど、高いですよ? 大きな町にはありますけど、田舎の村にはありません」

ルリが答えた。

「なるほどねー。あっちでもお金か。お金を得るには農業かなー?」

「ですね。他にもあるかもしれませんが、まずはそこです」

「こっちの世界の物を売るのはどうにゃ? 砂糖とか胡椒とか売れないかにゃー?」

大航海時代には胡椒が金と同額で売れたとかなんとか……

「出所不明なものは危ないような……でも、こっちの世界の種を持ち込んで育てるのは良いかもしれません。生えてたから育てたと言い切ればいいわけですし」

環境的にいいんだろうか?

外来種もいいところだが……

「とりあえず、それも候補に加えておこう」

ある程度、実験がいるだろうな。

「わかりました」

ルリがメモをしていく。

「じゃあ、お金を作って向こうの世界の町くらいにする感じでいいにゃ?」

「だねー。まあ、そこまで発展しなくてもいいと思うけど、その辺りは村民の意向もあるからどこまでかは保留。少なくとも、今の状態はちょっとね……」

正直に言えば、きつい。

スローライフできない。

「そうなると、ある程度の発展を目指すにゃ」

そうなるね。

地道に一歩ずつだ。

「では、次に村を見て回って気付いた課題ですね」

「だね。ルリはどう思った?」

「すみません。全部です。労働力、生産力……正直に言いますが、いつ滅びてもおかしくないレベルです」

だよねー。

俺もそう思う。

「一番の課題は畑の少なさだと思う。30人を賄えているのかね?」

「いえ、国から援助ですね。最初はどうしても何も生産できませんし、援助がなければ飢えてしまいます」

開拓事業だし、補助金か。

あの感じだとそれも多くないんだろうな。

「援助っていつまで?」

「3年と聞いています。あの村ができて、もう2年ですのでそろそろ打ち切りかと」

一応、3年ほど様子を見て、ダメだったら打ち切って解散か。

「このままだとマズい?」

「多分……見込みがあれば延長とかもあるんでしょうけど、そんな感じには見えませんしね。ただ、援助が打ち切られたとしてもタツヤさんが資金を出し、続けるのは可能です。単純に食べるものがあればいいので小麦でも米でも援助すれば問題ありません」

そのくらいの収入はタイマー協会で得られると思うが……

「勝手にやっていいもんなの?」

「もちろん、正式に村となれば税金を払う必要が出てきますが、申請すれば領主として認められるでしょう」

村ができて、税収が増えれば儲けもんって感じかな?

「なるほどねー。まあ、いくら俺が援助するって言っても、限度があるだろうね。やはり自立してもらわないと厳しいよ。俺が悪魔に殺されたり、病気や事故で死ぬこともある。そうなったら皆が路頭に迷うわけだし……」

「タツヤさんがそうなることは絶対にないでしょうが、万が一のことを考えておかないといけないですからね。自立は促すべきでしょう。力は貸しても自立をしないと家畜と同じです」

ぐさっ。

ルリの無邪気な会心の一撃が俺の胸に刺さる。

まあ、もう社畜じゃないけど。

「じゃあ、具体的にはどうしようか?」

「まずは生産力の向上からですね」

「生産力かー……」

なんかゲームみたいだな。

ただ、実際に30人の命を預かっているわけだからゲームとは言えないけど。

「木を切って領地を広げる作業なんかは魔法でやるにゃ。風魔法で切って、土魔法で根をほじくりかえすにゃ。すぐにゃ」

「できるの?」

「ルリに教えてもらうといいにゃ」

俺がやるのか……

いや、これも魔法の鍛錬だな。

「そうするか……あと、気付いたんだけど、あっちの世界って鉄が少ないの? 斧は金属だったけど、クワとかは木材だったよね?」

あれでよく作業ができるなと思った。

「別に少ないわけではないですよ。ただ辺境にまで来ないということです。多分、あれらは自前で作った物だと思います」

伐採、伐根はもちろん、畑を耕したり、家を作るのも大変なんだろうな。

「ホームセンターに行って、その辺を用意するか……」

ちょっと費用がかかるかもだけど、ずっと使えるものだから良いだろう。

そこまで高いものじゃないし。

「そうですね。貯金は大丈夫ですか? 退魔師の収入は来月以降ですけど」

「さすがにそのくらいはあるよ」

彼女もいないし、趣味も釣り程度の一人暮らしだったから余裕はある。

しかも、最近は釣りにも行けてない。

「では、ホームセンターに行ってみましょうか」

「そうだね」

「私も行くにゃ」

予定を決めた俺達は準備をすると、家を出た。