軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第132話 わかってます。ええ、わかってます

叙爵式の日取りが決まった翌日もユウセイ君とキョウカはウチに来て、ゴロゴロしていた。

その翌日であり、叙爵式がある今日はユウセイ君はおらず、キョウカだけが家に来ていた。

「じゃあ、着替えてきますね」

朝からいたキョウカは昼食を食べ終えると、俺の部屋に入っていった。

「今日はこっちで着替えるの?」

キョウカと同じく、朝から家にいるモニカに聞く。

「あのローブを気に入ったらしく、持って帰られました。キョウカさんは空間魔法を使えますし」

なるほどね。

最初からキョウカが持っていたわけだ。

「モニカはどうするの?」

「ラヴェル侯爵のお屋敷までは付き添います。それ以降はクラリスの家で待機ですね。私もクラリスの家に泊まります」

仲が良いし、クラリス様が誘ったんだろうな。

そのまま待っていると、着替え終えたキョウカが部屋から出てきた。

「コスプレでーす」

以前、ユウセイ君が言っていたことを自虐的に言う。

「そんなことないって。すごく似合っててかわいいよ」

いやー……

相変わらず、似合っているとかわいいしか言えない俺。

でも、それ以外に何て言えばいいかわからない。

「そうですかー? えへへ」

まあ、満足しているっぽいから良しとしよう。

「キョウカ、悪いんだけど、親御さんに電話してくれる?」

「わかりました」

キョウカはスマホを取り出し、操作する。

そして、自分の耳に当てた。

「……あ、お母さん? 私、私……え? あ、そうだね。それでさー、今日、タツヤさんのウチに泊まるね」

いきなり本題……

ドキドキ。

「うん、そう。いやね、タツヤさんの家に親戚の女の子がいるんだけど、その子が今日、一緒にいたいって言うもんだから」

厳しいかな?

「そう、ルリちゃん。うん、すごく懐かれちゃった」

ルリ、微妙そうな顔をするな。

「え? 着替え? 持ってるよ?」

あー……ダメだこりゃ。

なんでだよって思うわ。

「うん、頑張る……あ、タツヤさんに代わるね……はい」

キョウカがスマホを渡してきたので受け取ると、耳に当てる。

「もしもし? お母さんですか?」

『はい、そうですぅ。娘がいつもお世話になっております』

俺、この人と1歳しか違わないんだよな……

お父さんっていくつだろう?

「先ほど、キョウカさんが説明したと思うんですけど、ウチの子がキョウカさんと一緒にいたいと言い出しましてね」

『はい、はい。わかってます。わかってますよー。どうぞ、どうぞ。もういっそ、そちらに住んで頂いても結構ですよ』

絶対にわかっていない。

いやまあ、確かにルリを使っているのは事実なんだけどさ。

「いや、あの、そういうことではなくてですね」

『そういう?』

うーん、ダメだこりゃ。

どう言い繕っても無理だわ。

誰だって、年頃の娘を外泊させるってなったら『あっ……』て思うもん。

しかも、最初から着替えを用意している。

多分、今の俺、ものすごくかっこわるいと思う。

「えーっと、大事にしたいなと思います……」

『そうですか。よろしくお願いします。娘に代わってもらえます?』

「はい」

キョウカにスマホを返した。

「あ、お母さん? そういうことだから晩御飯はいらない……うん、あと、明日もこっちで過ごすから明日の夕方に帰る」

明日はすぐに帰れると思うが、まあ、入り浸っているわな。

明日はユウセイ君も来るって言ってたし。

「……大丈夫、大丈夫。ちゃんとしてるから」

何の会話だろう?

「え? 刀? まあ……」

マジで何の会話だろう?

「大丈夫だって! じゃあ、切るから」

キョウカはそう言うと、電話を切った。

「やっぱり無理な言い訳だったね」

「まあ、別にいいじゃないですか。建前ですよ、建前。ウチの両親はいいって言ってるんですから問題ありません」

まあねー……

もう考えるのをやめた方が良いかもしれない。

「じゃあ、行こうか。ルリ、ミリアム、留守番よろしくね」

「はい。叙爵式頑張ってください」

「緊張してこけるにゃよ」

不思議と緊張はしてないんだよなー。

キョウカのお母さんとの電話の方が緊張するくらいだ。

「多分、明日の昼までに帰ってくると思うよ」

「わかりました」

「じゃあ、行ってくる」

俺は転移を使い、キョウカとモニカと共に王都にある借家に飛んだ。

そして、借家を出ると、ラヴェル侯爵の屋敷に向かう。

「あっちでは正月ムードですけど、こっちは普通の日常ですね」

キョウカが言うように王都は以前と同じように賑わっており、ただの日常だ。

「正月っていうのがないらしいよ。夏に建国記念日があるんだっけ?」

モニカに聞いてみる。

「そうですね。それがあちらの世界の正月に当たると思います。お祝いということで数日くらいはお祭りをします」

「なんか俺がやることある?」

領主になるわけだし。

「特にはないですね。準備などは私とダリルさんがします。タツヤ様はお祭りの際に顔を見せて、皆に声をかける程度で結構ですよ」

そんなもんでいいのか。

「王都に呼び出しとかないの?」

「近くの領主は挨拶に伺うでしょうが、さすがに距離のある貴族は行きません。実際、クロード様も行ってないですしね。手紙を出す程度で良いでしょう」

辺境って不便かもしれないが、楽で良いな。

俺が目指すスローライフ的にはそっちが良い。

俺はこれなら貴族でも問題ないなと思いながらラヴェル侯爵のお屋敷を目指した。