作品タイトル不明
第119話 受け入れ
準備を終え、研究室を出ると、一気に寒さが襲ってきた。
「寒いなー」
でも、くっついてるキョウカが温かいわ。
「山田さんさ、前から気になってたけど、こっちの世界と俺らの世界って四季が被ってんの?」
ユウセイ君が聞いてくる。
「あー、俺も気になっていたけど、聞いてなかった。ルリ、どうなの?」
「ほぼ被っていると思って大丈夫です。ただ夏はそこまで暑くはないですね。森ですから」
なるほど。
日本はコンクリートとアスファルトでめちゃくちゃ暑いからな。
自然に溢れているここはそこまで暑くないのだろう。
「避暑地にはいいね」
「だと思います」
夏までにもう少し整備をして過ごしやすくするかな。
「バーベキューしようぜ」
「君、本当に食べることばっかりだね……」
俺達はそんな会話をしながら道を歩き、執務室となっている家に入る。
すると、家の中でダリルさんが待っていた。
「おー、タツヤ殿。よくきてくださった」
「モニカに聞いたんですけど、外に移住者希望の人が集まっているんですって?」
「そうなんです。おそらくこの村のリンゴ事業を聞きつけたのでしょう。断ったんですが……」
諦めきれなかったか、直談判すれば何とかなると思ったのか……
「どちらにせよ、何とかしないといけないでしょうね。一応、モニカをハリアーの町に送って、クロード様に助力を願おうとは思っていますが……」
「それは厳しいかもしれませんよ」
「どうしてです?」
「外にいる者は開拓民です。これの管理は国なんですよ。もちろん、クロード様も協力してくださっていますが、何かをするには国の許可が要ります」
お役所仕事なわけか。
それに加えて、俺達もクロード様の傘下ではなく、独立している。
「モニカは何も言わなかったな」
「何か考えがあるのかもしれません」
そうかも。
あの子は頭が良いし。
「一度、話を聞いてみるよ。食糧を持たせることくらいはしてもいい」
「おやめになった方がよろしいかと。ここまでしてくる者達ですし、増長する可能性が高いです」
そうかもしれない。
「村の皆は?」
「男達が門の近くで待機しています。女子供は家の中です」
「それで良いでしょう。結界があるので大丈夫ですが、門は普通ですからね。とにかく、行ってみます」
「お願いします」
俺達はダリルさんをこの場に残し、門の方に行く。
すると、ダリルさんが言っていた通り、村の男性陣が門の近くに集まっていた。
「あ、山田さん」
コーディーさんが俺に気付き、声を出すと、男性陣が一斉に俺を見てくる。
「どうも。どんな感じです?」
「一度、俺が話したんだが、村長と話がしたいの一点張りで話にならない」
「一応、聞きますけど、受け入れをどう考えますか?」
「無理。こんなことをしてくる連中と上手くやれるとは思えない。対話でなく、こういう行動をしてくる連中はこれからも同じことをする」
俺もそう思う。
「わかりました。まあ、説得してみます。門を開けてください」
「それはいいけど、嫁さんも連れて行くのか?」
コーディーさんがくっついているキョウカを見る。
「キョウカ、ここで待っていようか」
「いや……私も行った方が良さそうだ」
キョウカが扉をじーっと見ながら答えた。
「何かあるの?」
「結界が邪魔でわかりにくい……ちょっと確認したいから一緒に行こう。いざとなったら転移でも使って逃げればいい」
うーん、キョウカの勘を信じるか。
「じゃあ、行こうか。コーディーさん、俺達が外に出たら門を閉じてください。俺達は魔法でどうにかできるので」
「わかった。頼む」
俺とキョウカは門の前に行くと、村の人達が門を開けてくれる。
すると、門の先に10人以上の男達が見えたので門を抜け、外に出た。
男達は痩せている者もいるが中には筋肉が発達した男もおり、その男は帯剣している。
共通しているのは男ということと小汚い身なりなことだ。
男達は俺とキョウカを見ると、一斉に近づいてくる。
「止まれ」
キョウカが鞘に入ったままの刀を向けてそう言うと、男達が止まった。
「何だ、女?」
帯剣している男がキョウカを睨む。
とてもではないが、受け入れを頼む者の態度ではない。
「話をするのは一人でいいだろう? 代表者が前に出ろ」
キョウカがそう言うと、男達が顔を見合わせた。
そして、一人の痩せた男が前に出てくる。
「俺が話そう」
男がそう言うと、キョウカが刀を降ろした。
「わかりました。私がこの村の村長をしている山田です。まずですが、どういったご用件でしょう?」
「そちらの村に移住したい」
簡潔だな。
しかし、名乗りもしないのか。
「もしかして、以前、そういう要望を出された方ですか?」
「そうだ。国を通じて、要望を出した」
「それに関しては断ったはずです」
「何故、断る?」
何故って……
本来ならその説明すらする必要性はない。
「この村は小さい村です。人を受け入れるほどの広さもありませんし、余裕もありません。いっぱいいっぱいなんですよ」
「それは嘘だ。リンゴとかいう果物で儲けているだろう」
本当に受け入れを頼んでいるのだろうか?
とてもそうは思えんぞ?