軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第113話 どうしよう……

キョウカが俺の手の甲の上に自分の手を重ねてきた。

こうやって重ねてみると、キョウカの手は俺の手より細くて小さい。

「冷たいね」

「タツヤさんも冷たいですよ」

キョウカはそのまま手を握ってくる。

「……キョウカさ、間違ってたら笑ってくれればいいんだけど、もしかして、俺のこと好き?」

ついに聞いてしまった……

でも、この状況はどう考えてもそうだ。

「好きですよ。もし、そうじゃなかったら私はとんでもない遊び人かとんでもない悪女です」

キョウカはそんな感じではないもんな。

「そっかー」

「言っておきますけど、親愛の好きではありませんよ? もちろん、良くしてもらってますし、同じチームですからそういう想いもありますけど、私は明確にタツヤさんのことが男性として好きです」

そっかー……

「俺、35歳だよ?」

「それが何か?」

「離れすぎ」

「関係ないです」

はっきり言うなー……

「一過性のものだと思うよ。俺のどこがいいのさ」

男女問わず、年上に憧れるのはよくあることだろう。

「違いますね。私は強い人が好きです。それにタツヤさんは優しいし、素敵です」

本能に従う女に説得は無理だな。

「ハァ……どうしろと? 俺、君と付き合ったら捕まるんだけど」

「言わなきゃいいです。もしくは、結婚しましょう。まあ、あっちの世界では結婚してますけど」

してることになっているね。

しかも、娘持ち。

「結婚って……気が早すぎ」

あ、いや、この子達の家は早いんだった。

「嫌ですか? 私のことが嫌い?」

「そんなことはないよ。キョウカはかわいいし、いい子だよ。それに明るいから一緒にいて楽しい」

これは本当。

「じゃあ、いいじゃないですか。付き合いましょう。タツヤさんが望むのなら結婚でもいいです。私、自分で言うのも何ですけど、尽くす女ですよ?」

まあ、優しい子なのは確かだ。

たまに怖い顔が出るけど……

「周りの目が怖いよ」

「認識阻害や認識誘導の魔法があるじゃないですか」

まあね……

「ちょっと考えてもいい?」

保留だな。

とりあえずは保留。

うん……それしかない。

「もちろんそれは構いませんよ。でも、タツヤさんはもう少し自分を出すべきだと思います。慎重さや冷静さはとても大事ですが、本能に従うのも大事です」

「君が言うと、説得力があるね」

「うかうかしていると誰かに取られるかもしれませんよ? 私もそういう家の人間なのでそういう話がまったくないわけではないですから」

名家なんだなー。

「すごいね」

「はい。でも、私はその家を出ますけどね」

「そうなの?」

「山田キョウカになるって言ったじゃないですか」

ランクダウンする微妙な名前のやつね。

「寒いし、帰るよ」

俺はキョウカの手を握ったまま立ち上がる。

「はい」

一緒に立ち上がったキョウカが返事をしたので車に戻っていった。

車の中は暖かかったがエンジンをかけ、キョウカを送るために車を発進させる。

「明日もケーキを食べるの?」

「もちろんですよ。明日のために今日はチョコレートケーキを食べなかったんですからね」

ルリにチラシを見せて、どれが良いか聞いたら一切悩まずにチョコレートケーキを指差したのだ。

「ほどほどにね」

「大丈夫ですよ。絶望は月曜日ですから」

やっぱり戦死する気じゃん。

その後も明日の予定なんかを話しながら運転していると、キョウカのマンションの駐車場に到着した。

「じゃあ、すみませんけど、明日、お願いします」

「うん。こちらこそよろしくね」

「はい。では、また明日……」

キョウカがシートベルトを外し、ドアを開けると、車から降り、手を振ってくれる。

俺はキョウカに手を振り返すと、自宅に戻ることにした。

自宅に着き、駐車場に車を停めると、家に入る。

そして、リビングに入ると、いつものようにルリが夕食の準備をし、モニカがコタツに入っていた。

ミリアムの姿は見えないが、どうせコタツの中で丸まっているのだろう。

「ただいまー」

帰りの挨拶をすると、モニカがコタツから出てくる。

「おかえりなさいませ」

モニカは挨拶を返しながらも隣接する自室についてきた。

「ハァ……疲れた……」

部屋着に着替えるために服を脱ぐと、思わずため息が出る。

「そうなんですか?」

モニカが脱いだ服を受け取りながら聞いてきた。

「色々あってねー。それとケーキバイキングはすごいね」

あんなにケーキが並んでいるのを初めて見た気がする。

「そうですか。明日もありますけど、頑張ってください」

キョウカの心配より自分かもしれないな。

だんだんと肉が付きやすくなっているし。

「そうだねー……ハァ」

またしてもため息が出てしまった。

「……キョウカさんと何かありました?」

「あったねー……告白されちゃった」

どうしよう……

「そうですか……」

「モニカ、キョウカと何か話した?」

「まあ……色々と」

だろうなー。

そんな気はしている。

「モニカ、これあげる」

着替え終えると、モニカに赤い包装紙に包まれた小箱を渡す。

「クリスマスプレゼントですか?」

「うん。いつもお世話になってるしね」

「ありがとうございます」

モニカは包装紙を剥いでいき、中から髪留めを取り出した。

「バレッタですか。きれいですね」

「モニカに似合うかなって思って」

「すみません、着けてもらえますか?」

着ける?

えーっと……

俺はモニカの後ろに回ると長い金髪を束ねてみる。

そして、束ねた髪をバレッタで留めた。

「こんな感じかな……?」

わかんねー……

「ありがとうございます」

「うん。似合うよ」

そう言うと、モニカが振り返り、俺を見上げてくる。

すると、モニカが抱き着いてきた。

「タツヤ様、キョウカさんへの返事は?」

「保留にした。ちょっとねー……」

「キョウカさんがお嫌いですか?」

「そんなことないよ」

断じてない。

「女性として見れない?」

「それもないかな……」

若すぎるというのは感じているが、十分に女性として魅力的でもある。

俺にはもったいなさすぎる子だ。

「ならばお受けするように勧めます」

「なんで?」

「キョウカさんは出来た人ですし、問題ありません。それに付き合うと言っても様々な形があっていいと思いますよ」

まあ、それもそうかもしれない。

手を出すのがマズいわけだし。

「モニカが勧めるのは意外だよ」

「そうでもありませんよ。私としては本当に結婚しても良いのでは、とすら思っています。まあ、これは文化というか世界の違いでしょうね」

マリエル様もクラリス様もそんな感じだったな。

さすがに10歳くらいの子供がいるっていうのはドン引きしてたけど。

「そっかー……」

「タツヤ様、私はタツヤ様のそばでお仕えできれば満足です……」

モニカが抱きしめる力を強くする。

ただし、痛くはない。

「あ、うん……」

さっきからドアを少しだけ開けたルリと目が合ってるなー……

よく見ると、ドアの下の方には猫がいるし。

「あ、あの、ご飯……」

ルリがおずおずとそう言うと、モニカが俺から離れた。

「ご飯に致しましょう」

「そうだね……」

俺達はリビングに戻ると、ルリが準備してくれた夕食を食べ始めた。