軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第108話 実は扉の向こうで聞き耳を立てているにゃ

「あー、怖かった」

俺達はマリエル様と別れると、クラリス様のお屋敷に戻り、一息つく。

「お疲れ様です」

「保湿クリームは大丈夫だった?」

モニカに確認する。

「ええ。それも想定内です。ですが、若さで押し通せるかとも思いましたが、マリエル様は相当、美への執着心がありましたね」

美への執着心か……

男にはわからんな。

マリエル様は俺と同じくらいの年だと思うが、普通に若々しく、綺麗だった。

正直、それ以上綺麗になってどうするんだろうと思う。

「保湿クリームも献上でいいね」

「そうですね。すでに見繕ってはいますので後で残りのリンゴと共に渡してきましょう」

「お願い」

とりあえずはこれで庇護を得たな。

貴族の方をどうにかしてくれるって言ってたし、これで一安心だろう。

「ねえねえ、そんなことより、あんたってマジで子供がいるの? いくつの時のキョウカさんを孕ましたの?」

クラリス様がドン引きしながら聞いてくる。

「いや、本当にキョウカの子でも私の子でもないんですよ」

「えー……本当に?」

「本当ですよ」

というか、そもそもキョウカとは結婚していない。

「まあいいわ。それでこれからどうするの?」

クラリス様がモニカを見る。

「何もしません。我々はマリエル様の要望に応えるだけです。あの人は王妃様の親友ですから勝手にしてくれます」

「へー……まあいいわ。私にも流しなさいよ」

「構いませんが、マリエル様にもらったって言ってくださいよ」

「わかってるわよ。私はマリエル様の腰ぎんちゃくだからそれで問題ないわ」

貴族って大変だなー。

「保湿クリームだけでいいの? 化粧水とか色々ありますけど……」

キョウカが首を傾げる。

「奥様、そういうのを小出しにしていこうと思っております」

「なるほどー」

化粧水か。

それは俺も髭を剃った後に使っている。

メンズ用だけど。

「タツヤ様、今後もキョウカさんをお借りしてもよろしいでしょうか? マリエル様はキョウカさんを気に入ったようです」

「そうなの?」

「はい。素直な方ですので」

バ……素直か。

「キョウカ、いい?」

「いいですよー」

キョウカは明るいなー。

「では、お願いします。クラリス、明日も付き合ってもらえませんか?」

「いいわよ。おこぼれにあずかるから」

クラリス様が頷いたところで帰ることにし、借家まで戻ると、転移で自宅に戻る。

すると、コタツに入っているルリと共にうどんを食べているユウセイ君がいた。

「あれ? 来てたの?」

「ちわっす。暇だったし、王都がどうだったのか気になったから来た」

なるほど。

「なんでうどん?」

時計を見ると、11時であり、朝食にしては遅いし、昼食にしては早い。

というか、ルリは食べていない。

「昼御飯にパスタを作ってくれるらしいけど、待てなかったら作ってくれた。美味いな」

そりゃうどんは美味いでしょ。

「昼も食べるの?」

「当たり前だろ」

食うなー……

「将来、太らないようにね」

「大丈夫だってー……それでどうだったの?」

「上手くいったよ」

「それは良かった。キョウカもコスプレをした甲斐があったな」

さすがはユウセイ君。

はっきり言う。

「コスプレじゃないから」

キョウカがムッとする。

「いやー、日本人は似合わないわ」

ユウセイ君が笑いながらそう言うと、キョウカが俺を見てきた。

「いや、似合ってるし、かわいいよ。でも、着替えてきなよ」

「えへへ。あ、お風呂を借りてもいいですか?」

「いいよ」

許可を出すと、キョウカはリビングを出て、風呂場に行ったので俺とモニカもコタツに入る。

「あー、今日は本当にキョウカと結婚した気持ちになったよ」

「いいんじゃね? そのまま結婚しちゃえよ」

なんでだよ。

「キョウカ、16歳だよ?」

そもそも付き合ってすらいない。

「俺の母親は19歳で結婚してるぞ。キョウカのところも似たようなもんだ」

早いなー。

「そんなに早いの?」

「俺らの家みたいのは早いな。例えば、俺に彼女がいたとしよう。すると、親戚や一族の者に会うたびに金は出してやるからさっさと結婚しろと急かされる」

マジか……

すごいな。

「庶民にはわからないなー」

「まあ、山田さんは山田さんの考えで良いと思うぞ。ちょっと慎重すぎというか、気にしすぎだけど」

俺がおかしいんだろうか?

「あの、タツヤ様、そのことについて話があるのですが、よろしいでしょうか?」

モニカがおずおずと聞いてくる。

「何?」

モニカも思うところがあるんだろうか?

「タツヤ様はサラリーマンを経験し、役職についていただけあって、非常に交渉がお上手だと思います。ですが、キョウカさんのこととなると、あからさまに動揺なさるのが気になります」

「いや、だって、付き合ってもない子を奥さんにしたら誰でも動揺するよ。ましてや、女子高生だよ? 捕まるって」

しかも、16歳の子がルリを産んだと思われてしまった。

あり得んだろ。

「そこはもっと堂々としてほしいです。気になるかもしれませんが、異世界です。あっちの世界ではタツヤ様とキョウカさんの年齢差でも特に問題ではありません」

「まあ、そうかもしれないけど、やっぱり気になるよ。というか、妻役ってモニカで良かったんじゃない?」

この場にキョウカがいないので聞いてみる。

「私は交渉などで一人で色々なところに行く必要があります。それがマズいのです。奥さんを一人であちこちに行かせる夫はあっちの世界では相当、ひどい夫になるんですよ」

そうなのか……

「そうなると、妻役はキョウカ?」

「他におりませんし」

ルリはダメだしなー。

ガチでヤバい男になっちゃう。

「キョウカかー……未成年の子を預かっている身としては親御さんに悪いなーって思っちゃうし、キョウカも今後、誰かと付き合うだろうからやっぱり悪いと思っちゃうよ」

今は彼氏がいないそうだが、キョウカはかわいくて美人だし、性格も明るいから作ろうと思えばすぐにできるだろう。

「山田さん、その点は大丈夫だよ。キョウカもキョウカの親も……」

なんでって聞きたいような、聞きたくないような……

「ミリアムー、アドバイスをちょうだい」

コタツの中からミリアムを引っ張り出す。

「何も考えるな。本能に従え」

「それ、誰に言われたの?」

「キョウカにゃ」

でしょうねー……

人斬りキョウカちゃんがよく言ってるやつだもん。