軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

「お前を愛することはない」と言われたのに、旦那様が過保護なのだが!?①

***

次の日も、その次の日も、旦那様は私に何もさせてくれなかった。

外で拾い食いしたらいけないと、許されているのは屋敷の中の行動のみ。 お庭(食料調達) にも行けやしない。

暇なので、屋敷の中をぶらぶらと歩く。

そんな私を見て、気まずそうに視線をそらす者、敵意のある視線を向けてくる者、不安げに見てくる者など使用人の反応は相変わらず様々だ。

結婚二日目と違うのは──。

「奥様、おはようございます。旦那様か執事長をお呼びしますか?」

といった感じに話しかけてくる人がいることかな。

「大丈夫ですよ。体力づくりにお屋敷内を散歩しているだけなので」

「承知いたしました。何かございましたら、お声がけくださいませ」

お礼を言って、侍女のアンネから離れれば、私を睨んでいた使用人は、標的をアンネに変えたらしい。

遠目で見ても、突っかかっているのが分かる。

「そろそろ、お片付けしなきゃね」

横目でその様子を見ながら、今日こそ仕事をもらうために、旦那様の執務室へと向かった。

***

「旦那様、どういうことですか?」

「どうも何も、コレッティーナは病人なんだから、休む必要がある」

「まだウィンナーも分厚いお肉も食べてませんが、やわらかい鶏肉食べました! ラビソン家(実家) にいた時より元気です」

「駄目なものは駄目だ」

仕事をしたいという私の要望を旦那様はバッサリ切り捨てると、執務机の引き出しを開ける。

「アメをやるから、おとなしくそこでなめとけ」

そう言いつつ、引き出しから白とピンクのぐるぐるキャンディーを取り出した。

「あ、できたら黄色がいいです。ピンクは旦那様の方が似合うから、旦那様がなめてください」

引き出しにたくさん入っていたお菓子をしっかりと網膜に焼き付ける。

うーん。チョコレートがやっぱり食べたいランキング不動の一位かな。

でもなぁ、腹持ちを考えるとクッキーとかビスネットの方がいいかも……。

なんて、旦那様のお菓子をもらう気満々でいれば、旦那様の眉間のシワがどんどん深くなっていく。

「……コレッティーナは、俺を何だと思ってるんだ?」

「食べ物をくれる人です」

「…………そうじゃなくて、何で俺の方がピンクが似合うんだよ。コレッティーナの方がピッタリだろ」

ため息をつきつつ、旦那様は呆れた視線を私に向ける。

何で私、呆れられてるの?

「そんなことありませんよ。旦那様はイケメンヒーローと見せかけた、中身ヒロインちゃんですし」

「はぁ?」

ものすごく怪訝な顔をされる。

けど実際、旦那様はヒロインポジションにピッタリなんだよね。

すぐに人の話を信じる純粋さに、弱ってる 人(私) を放っておけない母性、何よりたくさんの仕事を抱えて睡眠時間を削ってでもこなそうとするマジメな頑張り屋さんなのだ。

庇護欲(ひごよく) をそそるとは、まさに旦那様のこもだろう。

「ヒーローとか、ヒロインって何だ?」

「あ、そこからですか。とりあえず褒めてるのでご安心くだふぁい」

ペロペロキャンディーをもごもごとなめ始めたので、話しにくい。しかも、大きいからか、手がベタベタになってきた。

「絶対に褒めてないだろ。まぁ、いい。なめ終わったら、部屋に帰れよ」

すっかり子ども扱いが常になってしまった。

おかしい。前世を合わせれば、私の方が旦那様の倍くらい生きてるんだぞ。

どうも体が若くなったからか、精神が身体に引きづられるんだよなぁ。

本当の私はもっとエレガントでクールなのに……。

「旦那様は、いつになったら私に仕事をさせてくれるんですか? このままだと負債が増える一方です!」

「だから、コレッティーナの仕事は休むことだと何度も言ってるだろ」

ため息混じりに言われるけれど、納得がいかない。

ならば、最初にもらった権利を使うことにしよう。

「デザー、明日のお昼前に使用人全員を集めてください」

旦那様と共に仕事をしているデザーに声をかける。

「何をされるのですか?」

「屋敷内の大掃除です」

にっこり笑って言えば、デザーは一つ頷く。

「なるほど。お手を煩わせて申し訳ございません」

「いえ。デザーがやると言ってくれたのを止めたのは私ですから」

大したお 咎(とが) めなしの状態で一週間ちょっと経っている。

私に食事を運ばなかった使用人たちも、そろそろ油断しているはず。

デザーに頼んで、彼女らには罰として、トイレや馬小屋といった掃除をするのに不人気そうな場所を徹底的にきれいにさせたけど、それだけで済ますつもりはない。

明日は解雇と再教育 Day(デイ) だ。

「……何を企んでいる?」

「いただいた権利を使うだけですよ」

ほんの少しの悪感情だとしても、放っておけば仲間を増やし、大きくなっていくかもしれない。

悪感情は他者に伝染し、気付いた時には、どうにもならなくなるものだから。

早い段階でその芽を潰す。

ということを建前に、食事の恨みを晴らす。

そのために屋敷内を歩き回ったのだ。

敵意を向けてきた人たちは、まず解雇かな。